映画レビュー0343 『レ・ミゼラブル』
元旦にBSで「ドライビング Miss デイジー」やってましたね。すごく欲しいけどDVDですら鬼高い映画なので、歓喜とともに録画しました。そんな中、今年一発目は予告通り、この映画です。
早速今年一番の驚きとして、(去年からだったのかもしれませんが)「NO MORE 映画泥棒」のCMが変わってました。変なお姉ちゃんいなくなって。EXILEみたいな動きも見せつつという。驚きだね!(薄い感想)
さて、レ・ミゼラブル。
事前情報としては、タイトルしか知らない程度の予備知識、そしてご存知の通りミュージカル自体はあまり好きではないんですが、ちょっと気になったので観て来ました。
レ・ミゼラブル
おそらくミュージカルとしては完璧。あとは好き嫌いの問題かと。
まず今回は最初に大前提としてお断りしておきますが、僕自身はくどいようですがミュージカルは好きではないし、詳しくもありません。加えてこの話自体、初めて知るものなので、お好きな人からすれば「何言ってんのコイツ」的な面は多々出てくると思いますが、そういう「ミュージカル&レ・ミゼラブル ド素人の感想」として読んでいただければと思います。
軸となる人物は主に4人。
一人目は、主人公ジャン・バルジャン。19年の服役生活を終え、出会った司教の人柄に心を入れ替え、善人として生きていくと決意した男です。富士山で「ジャパンサイコー」と叫んでいたとか叫んでいないとか、とにかく富士山が好きらしいヒュー・ジャックマンが演じます。
二人目は、そのジャン・バルジャンをずっと追い続ける警官・ジュベール。いかにもふてぶてしい、強さのあるオッサン、ラッセル・クロウが演じます。ピッタリ。
三人目は、貧しい生活を送りながらも懸命に一人娘を育てようと、預けているクソ夫婦に送金するために売春婦に身をやつす薄幸の女性、ファンティーヌ。アン・ハサウェイが鼻水垂らしながらの熱演です。
そして最後が、そのアン・ハサウェイの娘である、コゼット。成長後はアマンダ・サイフリッドが綺麗なソプラノボイスを披露してくれます。
その4人を中心に、学生たちの革命なんかも取り入れながら、主人公ジャン・バルジャンがその生涯を閉じるまでを情緒豊かに描きますよ、と。そういう映画です。
さて、ご存知の方は多いでしょうが、この映画の最大のポイントは「すべて生歌である」という点でしょう。ミュージカルに詳しくない僕でも当然知っていますが、通常、この手の劇中歌というのは後から録音してかぶせるのが当たり前で、演技をしながら全部歌うよ、っていうのは初めて聞きました。観て思いましたが、これはもうとてつもない説得力があって、ただただすげーな、と驚くばかり。
「手紙を読みながら控え目に歌う」みたいなシーンでも、それなりにきっちり拳をきかせつつ「ミュージカルしてる」のはスゴイの一言。当然ながら、歌ってる役者さんたちはみんなうまいし、この生歌の迫力というものには圧倒されましたね。スバラシイです。こんなことをやられたら、もうヘタなミュージカル映画なんてできないんじゃないかと。
一つ、僕の予想と違ったのは、ミュージカル映画と言っても「雨に唄えば」みたいなものを想像していたので、基本は普通のセリフ、たまに歌のシーンって感じなのかと思ってたんですが、この映画はもうほぼ全編歌です。極稀に普通のセリフも出てきますが、ほぼ98%ぐらいは歌になっていて、ちょっとしたセリフも歌に乗せて流れます。これは本当に好き嫌いがわかれるところで、正直に言うと僕はやっぱりちょっとダメでした。話が全然入ってこないんですよね。歌として聞いちゃって、筋として入ってこないというか。
すごくうまいし心地よかったりもするので、変な話、中盤かなり眠くなってしまい、劇場なのにほんの数分寝たりしました。そんなこともあり、やっぱり合わないのかな、と。
ストーリーに関しても、だいぶ途中を間引いて物語が展開する印象で、特に前半は次々と先に進んでいっちゃうような感覚がありました。(この辺は上に書いたように、自分があまりきっちり消化しきれずに進んだせいもあるかもしれません)
もう一つ気になったのは、ベースとなる話がだいぶ宗教色の強いものなので、やや日本には合いにくい物語じゃないかな、という気がしました。
神、神、神。
神様ありきの物語なので、理解はしますが共感はできないかな、と。その辺りは時代性の部分でも感じたんですが。
ですが、まああえて今の時代に気合を入れて作ろうとしただけあり、セットのデキも圧巻で、ミュージカルとしての完成度はこの上ないものではないかと思います。おそらく「レ・ミゼラブルファン」にはとてつもなくたまらない映画になっているのではないでしょうか。
生歌の迫力とうまさ、セットの完成度、そしてもちろん演技の良さと、文句の付けようがないだろうと思います。
舞台には舞台の良さがあるだろうとは思いますが、単純に「レ・ミゼラブル」として比較する時、舞台だとどうしても制限される部分がありますが、映画になるとセットにかかるお金も文字通り桁違いだし、これだけ舞台装置をリアルに作り上げられて、時間的制約(衣装替えの時間等)もなく全力で物語を再現できる、という意味で、これより優れた「レ・ミゼラブル」は無いんじゃないか、と思えるような説得力は本当にすごかったです。
結果的に僕のミュージカル嫌いは克服できませんでしたが、それでもエンディングの高まりは感動的だったし、落涙まではいかないまでも泣きそうになっていたので、好きな人はもう号泣してもおかしくない映画だと思います。
そんなわけで、個々人のミュージカル or レ・ミゼラブルへの思いでだいぶ評価の変わる映画だとは思いますが、それでも「こんな映画ダメだ」なんて酷評は絶対にできない、恐ろしく気合いの入った力作なのは間違いありません。
興味があるなら、ぜひ劇場で。こういう映画こそ、劇場で観るべきでしょう。
このシーンがイイ!
これはもうやっぱり、アン・ハサウェイが涙をたたえながら熱唱するシーンでしょう。まさに圧倒されました。
ココが○
上にも書いた通り、当たり前なんですが、みんなうまいのがスバラシイ。それとやっぱり、全部生歌という点。
この2点だけでもうミュージカル映画として完成していると思います。
ココが×
ミュージカルの好み云々を除いたとしても、やっぱりややストーリーが前時代的なものなので、古典を楽しめる感性がないと少し辛いのは否めません。
個人的な感想としては、非常に綺麗にまとまったストーリーだと思いますが、やっぱり馴染みがないせいで宗教色の強さに入り込めない部分があるな、と。信仰心はいいと思うんですが、自分に重ねられるかと言うとそれはまた別なので、やっぱりどこか客観視して、冷静に観ていた自分がいました。
MVA
本当にどの人もすばらしかったですね。
ヒュー・ジャックマンがこんなに見事に歌うのも想像してなかったし、ラッセル・クロウも意外と綺麗な高音が聞けたりしてすごく良かったし、アマンダ・サイフリッドも役柄にあったハリのある歌声が良かった。でもやっぱり、この人だと思うんです。
アン・ハサウェイ(フォンティーヌ役)
登場時間は少なめですが、やっぱりあの絶望的な歌の見事さは強烈で、そこだけでもうこの人だな、という感じ。
ついでにサシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム=カーターの小物夫婦も(元々持っている印象含めて)強烈な存在感で良かったんですが、やっぱりミュージカルとしてはアン・ハサウェイの魂が伝わる歌には勝てませんでしたね。お見事でした。
ただこの二人、抱えられながら歌うっていうのも考えてみるとスゴイ。