なんプロアワード 2012
みなさま、あけましておめでとうございます。今年も無病息災、無事に暮らすことが第一だよね、と言いつつ早速喉が痛い俺だぜ?(聞くな)
今年も細々とではありますが続けていきますので、数少ない来訪者のみなさま、良かったら今年もお付き合いください。そして今年も去年同様、ここに願掛けしたいと思います。
自分と、このブログを見てくれている人たちだけに幸せがくればいい、と。他の連中は知ったこっちゃないぞ、と。
さて、記念すべき2013年一発目のブログは、毎年恒例、「隠し芸大会に変わって年始の風物詩になった」と一度も言われたことがないという、「なんプロアワード」をお届けです。
[ルール]
- エントリー基準は「その年初めて観た映画」
- その中から勝手にベスト10を選定
- そのため古い映画も入って来るという謎のベスト10
- さらに生死関係なく、その年に観た映画に出ていた最もナイスな役者さんに主演男優 or 女優賞進呈
えー、そんな中、去年の総鑑賞本数は141本(うち再鑑賞3本)、劇場鑑賞は11本でした。おそらく。正直「目指せシネフィル」を合言葉にしている割にはまだまだ少ないと思いますが、それでも総鑑賞本数も劇場鑑賞本数も自己記録更新で、「映画好きです」と言っても後ろめたくない感じにはなってきたかな、と。
総鑑賞本数に関しては、序盤と終盤は少なめ、中盤に山ほど観たという感じだったんですが、正直に言うとおそらく今年はもうこれほど観ないと思います。というのも、その中盤の(自分では)かなりのペースで観ていた時期に、どうも「たくさん観てブログの記事を増やす」ことが目的化してしまい、集中力を欠くことが多かったと反省したので、昨年後半からはしっかり観て映画に向き合える本数にしたいと殊勝なことを思うに至りまして。結局は多分毎週3本程度がいいところかな、と。。
劇場鑑賞本数に関してはまだまだ少なすぎると思うのでこっちはもうちょっと増やしていきたいと思っています。ただ、去年はかなり新作で観たい映画が多かったんですが、今年も同じように興味を惹かれる映画が出てくるのか、というのはちょっと不安。
という毎年恒例「お前の個人的な話なんてどうでもいいんじゃボケ」というツッコミを頂きつつお送りいたします「なんプロアワード」。
今年は「そもそも個人のブログなんだからそんなツッコミいらねーんじゃボケ」と下劣なツッコミに下劣なお返しをお見舞いしつつ、当然のように長いので、暇すぎて何も出ないけどトイレに行っちゃうようなアンニュイな気分のときにでも読んでください。
[総評]
それなりに読んで頂いている方は気付いていると思いますが、普段は1年に1本程度の10点満点が昨年は5本も登場(うち1本はその後9.0に修正)ということからもわかる通り、個人的にかなり豊作の印象でした。8.0以上もかなり多く、割と目が肥えてきて厳しくなってきたと思いながらも高評価な映画が多かったので、とにかく今回は悩みましたね。(談)
ちなみに評価点に関しては、一応他との比較も考慮したりはしますが、基本的にはその映画単体に対する評価であって、「単純に楽しめた8.0」と「深く心に残った8.0」では後々こうしてピックアップするときは印象がまったく違うものがあります。すごく良かったけど気になるポイントが多くて低くなる場合もあるし、あくまで感覚的な参考と思っておいていただければ、と。
なので、7.0でもいいものは選ぶかもしれないし、逆に9.0でも瞬間火力が強かっただけ、みたいな映画だったりすると選ばないことも多々あります。その辺の整合性も考えだすとめんどくさすぎてこんなブログは書けなくなるので、まあ細かいことは気にしないで読めよ、とざっくばらんな感じでお送りしております。
話を戻しますが。
今回は本当に、選から漏れた映画の中にも名作はたくさんあったし、「去年でなければ確実に10位以内に入ってたな」という映画もありました。選出する時期、気分でも順位が変わるんじゃないかと思うぐらい、かなり密度の高いランキングになったと思います。総じて去年はちょっと「いい映画をチョイスし過ぎた」と思えるぐらい、かなり幸せな映画イヤーだった気がします。
が、。
そんな個人的に濃密だった今回の「なんプロアワード」、今年で4回目ですが、今までで最も「どの作品も自信を持ってオススメできる」ものになったと思います。
未鑑賞の作品がある方は「ぜひ観ていただき たいー!」と電波少年のタイトルコールっぽく右手を突き上げながら叫びつつ、相変わらずネタが古すぎるよね、ということで発表です。
ちなみに「最もクソだったワースト映画」は言うまでもなく「ディナーラッシュ」です。
なんプロアワードベスト10・2012年版
『テキサスの五人の仲間』
西部開拓時代、毎年恒例の金持ちポーカー対決の場にやって来た一人の男が、「一世一代の勝負手」を手にするも資金が尽き、それでもなんとか勝負を続けようとアレコレ手を尽くすお話。今は亡き横山やすし師匠が一番好きな映画と言っていたとか。
BSでやっていてなんとなく録画して観たんですが、その期待感の薄さで逆に評価が跳ね上がったような記憶があります。本レビューにも書きましたが、Wikipediaにも項目がなく、DVDも日本では発売されていないようなある種マニアックで古い映画なんですが、それが不思議でしょうがないほど痛快でハッピーな映画です。「名作」というよりは「傑作」と言うイメージ。
大半がポーカー対決のシーンなんですが、内容としてはポーカーそのものではなくて「いかにこの勝負手を実らせるか」のやりとりが中心になっていて、シナリオの秀逸さが光ります。
ラストは本当に痛快で、ニヤリとしながら唸っちゃうような後味が最高。今の時代では見られないような人情味漂う雰囲気にも、ある種の郷愁感というか、しみじみと「いいねぇ」とホッコリするような味わいがあって、この時期コタツでぬくぬくしながら観るのもいいんじゃないかと。
「映画が最大の娯楽だった頃の“熱”」のようなものが感じられる、素晴らしい映画だと思います。
『シザーハンズ』
見た目が怖いけど心は優しい人造人間と、街の人々のアレコレ。今もお馴染みのティム・バートン×ジョニー・デップコンビ最初の映画。
もはや説明不要で、むしろ「何今さら推してんのwwwwwww」と言われそうですが、うるせーよ俺は去年初めて観たんじゃボケ、ということで9位。BSでやっていたのを録画鑑賞しました。
個人的にこういうファンタジー映画はあんまり高く評価しないんですが、この映画の“ファンタジーに染めきりました”感というか、迷わずファンタジーしているところにおとぎ話のような世界を感じられて、まさに「2時間(弱)夢を見る」体験をさせてくれた映画だと思います。
今も街の色彩が印象的だったことを覚えていますが、当たり前ですがそういう美術的な部分でもしっかりファンタジーに寄せてたので、よりエンディングの後味が生きていたような気がします。
そう、この映画は何よりもオープニングとエンディングのまとまり方がすごく好きで、絵本をパタンと閉じて終了するかのような後味がたまらなかったですねぇ…。いい話だなぁと思いつつ、でもちょっとしんみりするような感覚で、一人ホロホロ泣きました。
こんな映画を気になる女性と一緒に観たらなんか良い感じになれそうな気がしますが、メジャーすぎてその戦法は使えないという罠。うまくできています。(何が)
第一、そんなシチュエーションまでこぎつけたら大抵もう大丈夫だろ、と腐ってる自分がいるのも事実ですが、年始からちょっといつもの悲しいネタに突入しそうなのでこの話はここで終了にしましょう。
『キンキーブーツ』
父の経営する紳士靴メーカーを継いだ跡取り息子が、会社を立て直すために「女装男子向けブーツ」を作って奔走する、コメディタッチのヒューマンドラマ。
<ブルーレイ買いました>
去年気付いたことの一つに、「かぁー! 俺ぁこういう“普通の人たちが頑張って生きてる”映画好きだなぁ〜オイー!」っていうのがあるんですが、そのきっかけを与えてくれた映画です。
その価値観はこの後観る「フル・モンティ」「ウェールズの山」とかでも固められていくんですが、その中でも最も好きだったのがコレ。(ただ、この2作も入れようか悩んだぐらい好きです)
イギリス映画そのものに対する信頼感、期待感を育ててくれたのもこの映画でした。
いかにもイギリスらしい、寂れた工場町が舞台になっていて、そこで生きる、お世辞にも上流とは言えない人たちが、それでも一生懸命自分の人生を生きていくために、考えて、衝突して、理解し合いながら進んでいくお話。
ただ、この映画の特異かつ最大の特徴は、主人公が「ドラッグクイーン」である、ということ。どうしても特異な目で見られがちな存在の彼(彼女)が、それでも強く、優しく、たくましく生きる姿を見せることで周りを変えていく物語を、素晴らしいステージパフォーマンスとコメディタッチの軽やかな展開で誰にでも受け入れやすく作りあげています。
今回の「なんプロアワード」にあって、最も万人にオススメできる映画かもしれません。変に評論家ぶってケチつけようとする人でなければ、誰でも絶対楽しめると思います。
何より特筆すべきはキウェテル・イジョフォー扮するドラッグクイーン・ローラのステージ。うまいし力強いしカッコイイしで文句なし。ちょうど1年ぐらい前に観た映画ですが、歌のシーンはどれも鮮明に覚えてるし、口ずさめるんですよね。歌と音楽の力ってすごいなと改めて感じた映画です。
『(500)日のサマー』
「この映画は恋愛映画ではない」というナレーションから始まる、超モテ女・サマーと、彼女に一目惚れした優男・トムの物語。
<サントラ買いました>
ファンタジー映画以上に僕が評価しない恋愛映画ですが、この映画はとにかくすごくよく出来ていたし、何よりトムのキャラクターに共感ポイントが多すぎてまあ切ないこと切ないこと。恋愛映画と言えば女子(一部オバサン含む)向けというのが相場ですが、この映画は珍しく男子向け…というか男子目線中心の映画になっているので、「わかる! わかるよトム!! オヨヨヨヨヨ(嗚咽)」ってなポイントがたくさん。もちろん女子でも楽しめるだろうし、今っぽい演出・見せ方のうまさも手伝って「ただの恋愛映画」ではない完成度の高さが印象的でした。
僕は自分に似ている(と大多数の人が感じられるように作ってるんでしょう)トムに完全に感情移入して観てしまいましたが、サマー目線でもかなり楽しめるという評価もあり、このシナリオの完成度の高さは「恋愛映画好きじゃないし」と拒否するのがもったいないレベル。女子目線のレビューを読んで勉強になったりもして、改めて「映画を観る」ことで価値観を作り上げる自分がいることに気付いた面もありました。
また、主演の二人がとにかく素晴らしく、この映画はこの二人あってこそ、だと思います。いつかブルーレイ買ってやるぞ、と。観るとまたなんか自分の傷口を開きそうな気もするんですが。そういう「感情との距離の近さ」もこの映画の良さだと思います。
良いこと言うわ。自分。
『ゴーストライター』
元英国首相の伝記を頼まれたゴーストライターが、前任者の死と彼の資料を調べていくうちに膨らんでいく疑念を抑えきれず、一歩一歩、真実へと近付いていくが…というユアン・マクレガー主演の「フツーの人が巻き込まれていく」サスペンス。
ひじょーーーーーーに地味な映画なんですが、自称サスペンス好きとしてはヨダレが出るほどの名作でした。
なんといってもユアン・マクレガー。「その辺にいそうな普通の兄ちゃん」が巻き込まれていく様がたまりません。ただ、書いておいてなんですが“巻き込まれていく”というほど仰々しくもなく、仕事をしつつ、ノーマルな好奇心で行動してたらやがて…という話になっていて、その「ノーマルさ」がこの映画の最大の良さだと思うんですよね。
本レビューにも書いたように、自分が同じくゴーストライターの立場だったら、きっと同じ顛末を辿っていただろう、と。その怖さ、リアリティが素晴らしい。
序盤、デスプラのなんか妙にファンタジーな劇伴に違和感を感じたんですが、最後まで観てるとその不思議な音楽が妙にこの映画に生々しさを与えていたような気がして、そこがまた印象的。
銃も死体も出てこない、安い煽りも無ければ主人公の妙な冴えもない、でもリアルで怖い、僕が最も観たいと思う映画のタイプの一つかもしれません。これまたブルーレイ欲しい。でもヨーロッパ映画のブルーレイってなんか大抵高いんですよね…。
『裏切りのサーカス』
MI6内にスパイがいる疑いが濃厚になり、政府上層部は引退したエージェントに捜査を依頼する…という、ゲイリー・オールドマン主演のサスペンス。
これもサスペンスで、「ゴーストライター」同様、いやもしかしたらそれ以上に地味な映画でしたが、完成度の高さはかなりのもので、始まってすぐに「あ、これはかなりデキのいい映画だな」と肌で感じるような、部屋の空気がピシっと張り詰めるような雰囲気のある映画というか。実力派役者陣が重厚な演技でプロの仕事をしていく、お子様お断りの大人の映画という感じ。
華やかさは完全にゼロで、色で言うと“鈍色”ってやつですね。にびいろ。なんか言いたくなるじゃないですか。「にびいろ」って。響きだけで渋すぎるぜ、みたいな。そういうイメージ。
やたら緊張感のある将棋を観るような、地味だけどわかる人には確実にたまらない世界がある、そんな映画です。
MI6というと、イコール007っていうイメージの人も多いかと思いますが、こっちは舞台が冷戦下ということもあり、ハイテクアイテム的なものは皆無、よりリアルにスパイの地味な仕事ぶりを描いた映画です。
これまた安っぽい煽りもなく、超人的な強さもなく、真っ当なストーリーとキャラクターで実力勝負する潔さがウリですが、その地味な頭脳戦の中に、ほんのりと友情のエッセンスも込められてたりして、とにかく完成度の高い映画、という印象。
作っている人たちが本気の真剣勝負なのはビシビシ伝わるので、同じく観る側も真剣勝負でかなり集中力を要する映画だと思いますが、その重さを求めたい気分の時に観れば、おそらく僕の言っていることは伝わると思います。
久々に「モノが違う」と感じた映画で、「ディナーラッシュ」とかほんと同じ“映画”って言うなよ、と思ったよね。ブルーレイ欲しいけど、これまた高い。「ディナーラッシュ」じゃないですよ。あんなのいりません。(くどい)
『ダークナイト ライジング』
ゴッサム・シティを恐怖で支配する男・ベインに為す術もなく敗れたバットマンは、それでも立ち上がろうと這い上がる…という物語。クリストファー・ノーランが手がけるバットマンシリーズ3作目にして最終作。
<ブルーレイBOX買いました>
まあ例年で行けばこの映画が1位でしょうね。幸か不幸か、もっと上がいたよってことで4位です。
「バットマンシリーズ」というと、まあジャンルで言えばヒーロー映画、もしくはアクション映画ってところでしょうが、この映画はそういう一つのジャンルにくくれないスケールがあって、そこがまずすごかったな、と。でもそれ以上にすごかったのが、その煩雑になりがちな要素をキチッとまとめ上げた完成度の高さ。
まさにクリストファー・ノーラン恐るべし。天才です。床にばら撒かれた溢れんばかりのコードを綺麗に収納、「すげー」と思わせるあの感覚。いや、違うか。でもそんな感じ。(どっち)
主要人物と言われる人たちも割と多いし、それに見合った豪華キャストでありつつもどの人にも見せ場があり、かつ散漫になっていないという奇跡的なまとまり感。
ストーリーは重厚でサスペンスフル、さらに友情・情愛のエッセンスも取り入れながら、あっという間に見せきる監督の力量、スタミナにはただただ感服。間違いなく、今これだけの要素をこれだけの重厚さでまとめ上げられる監督は、クリストファー・ノーラン以外にいないでしょう。
続編モノなので、純粋に単体として100点満点とは言えない部分がありますが、逆に「続編モノでありつつこの完成度」というのは他の三部作映画なんかでは見られないような気もするし、きっちり1~3までテンションを切らさないセンスには脱帽を通り越して脱毛です。ハゲます。こっちが。それぐらい、すごい。
本当に我々映画ファンは、弟の脚本家ジョナサン・ノーラン含めてノーラン兄弟と同じ時代に生きていることに鼻血を流して喜ぶべきだな、と。劇場で観終わった後に思いました。もちろん、鼻血を流しながら。
『ブルース・ブラザーズ』
かつて世話になった孤児院が立ち退きの危機にあることを知ったジェイクとエルウッドの兄弟は、かつての仲間とバンドを再結成、お金を稼いで孤児院を守ろうとする、というコメディ映画。主演のジョン・ベルーシとダン・エイクロイドは同名のバンド活動でも有名。
<ブルーレイとサントラ買いました>
映画の完成度という意味では、4位の「ダークナイト ライジング」にも5位の「裏切りのサーカス」にも及ばない、ある意味では雑な映画なんですが、映画に対する、音楽に対する「愛」を感じさせるという面では最強と言っていい映画ではないかと。
結構序盤はダラダラ観ていた記憶があります。クールにショッピングモールを破壊する二人に違和感があったりもして、そんなに好きじゃないかも、と思って観ていたんですが、終盤はもう完全に虜になってましたね。
今となっては伝説と言えるミュージシャンたちとの音楽と、その名声に相反するかのようなマンガ的コメディのミスマッチ感がたまらなく、いちご大福が世に出た印象ってこんな感じだったんじゃないか、とか。違いますね。ハイ。知ってます。
やっぱり「キンキーブーツ」もそうでしたが、音楽って強いんですよね。すごく記憶に残るし、レベルが高ければ尚更印象も強くて。神の啓示を受けて「バンドだ!」なんてストーリーは安っぽすぎて笑えるし、そういう映画は軒並み酷評だった自分にとって、「そんなの面白ければどうでもいいんじゃ!」と強烈な勢いでお見舞いされた感覚がたまりません。
終盤のナチスとの追走劇はもう声を出して笑いましたね。何の映画なんだよコレ、と。バカバカしさも本気で突き抜ければ最高、というお手本のような映画。その上音楽も良いわけで、そりゃー細かいこと言わずに「最高!」としか言えませんよ。デキの悪い子ほどかわいい、みたいな感覚に近いかもしれません。
もちろん僕は子供はおろか、奥さんもいませんけどね。同僚が奥さんとのツーショット写真で年賀状送ってきて頭来ましたけどね。独身だった去年は年賀状なんか送って来なかったくせに、と。
※別の話なので終了
『ガタカ』
遺伝子で人の優劣がすべて判明する時代、“不適正者”の主人公が“適正者”の遺伝子を買い取って、なんとか宇宙飛行士の夢を叶えようとしたところでトラブルが発生し…という物語の、低予算ながら今でも根強い人気を誇るSF映画。
<ブルーレイ買いました>
本当に、この2位と1位は悩みに悩みました。ハゲ上がりました。新年早々。一時期は逆、また逆になってまた逆に、そして今また逆になって書いてる、というようなシーソーゲームの1位・2位で、正直もう両方1位でもいいんですが、順番付けます。観る年が違えば確実にどっちも1位だったな、と思えるほど、どちらもかなり自分の心に刺さった映画でした。
さて、そんな片割れのこの映画。ジャンルとしては完璧にSF映画ですが、印象としては人間ドラマです。サスペンスもちょっと混じっていて、まさに僕の大好物のジャンル。
「本来そこにいてはいけない人」が夢のためになんとか取り繕っている中、一つの事件をきっかけに歯車が回りだし、追われる彼とそれを追う人、守る人、それぞれのポジションと感情の戦いを、エモーショナルに描き上げた名作中の名作と言っていいと思います。
観終わった瞬間、「あー、こりゃもう今年のナンバーワンは決定だわ」と思いました。まさに10年に1本あるかないかというレベルの映画ではないでしょうか。このストーリーの底辺にある儚さ、脆さ、そしてその美しさというのは、とても僕のようなスケベなだけのド腐れ外道には表現できません。
ちょうど去年、このガタカを彷彿とさせる遺伝子のニュースが流れましたが、そのリアリティのある設定は「遠い未来」を感じさせない怖さがあって、現実離れしたSFではない分、より人間ドラマの部分がリアルに感じられたような気がします。
優劣に負けじとがんばる主人公と、それを支援する適正者・ジェロームの関係性、さらにアイリーンの恋愛感情という人間ドラマを包括するSF的世界観というのは、他の映画には無い、独特の情緒的な雰囲気を感じさせてくれて、もう本当に好きな人にはたまらない映画だと思うんですよね。
そこにさらに弟の存在も大きな要素だし、何より劇伴も素晴らしくて、全身を“ガタカに満たされる”感覚がありました。短めの上映時間のくせにこの深く染みこんでくる重量感も得難いものがあり、何から何まで素晴らしい。
この映画が好きだ、っていう人とはこの映画の話だけで一日飲めますね。
文句なし、僕が観た中で最高の映画のうちの一本です。自分史に残る映画となりました。
そしてもう一本、自分史に残る映画が1位です。
『ファンダンゴ』
大学を卒業してバラバラになる男たち5人が、「最後に“DOM”に会いに行こうぜ!」と一台の車で旅に出る、無名時代のケビン・コスナー主演の青春ロードムービー。
<DVD買いました>
方向性もまったく違う2本なので、「ガタカ」との差は何なんだと言われると難しいんですが、おそらくは自分の感情への距離感だと思います。より自分に近いかどうか、感情移入のレベルという意味で。
もう二度と戻れない若い時代、こんなことしたかったなぁという思いと、でも完全に自分の中で失われたわけではない“男子的な感情”を揺り動かすような、なんとも言えない爽やかさと寂しさが感じられる感覚というか。
ほぼコメディとして展開する映画なんですが、やっぱり「もうバラバラになる仲間たちと最後の旅」という大前提があるので、どこか悲しさと寂しさがあるんですよね。
すーごい好きな時間、例えばダラダラしてる日曜日でもいいし、それこそものすごく好きな映画を観ている時でもいいですが、「楽しいんだけど、終わりが来るのが怖い」あの感覚。それがこの映画の男たちの中にも見えるんですよ。もちろん、ただの日曜日とは段違いの大きな大きな存在が。
「お前らは好きだけど、もうこれでお別れなんだよな」という思いが、「でもそんなこと言いたくないし、考えたくもない」からバカ騒ぎしてる、その感情が痛いほどよくわかるんですが、それが見事に映画の進行とシンクロしていて、序盤はただのバカ騒ぎで大笑いするだけの映画だったのが、段々と終盤になるにつれてしんみりとしてきて、やがて終わっていくあの感覚が、おそらく他に無いほど完璧に描かれていると思うんです。
しかもその最後のまとめとなる舞台が素晴らしすぎて、今思い出しても感傷的になって涙が出ちゃうような。
これぞ映画、ですよ。
この映画もまた短めで、1時間半程度で終わる映画なんですが、たった1時間半で一から情報を吸収していって、最終的にこんな複雑に感情を揺さぶられるものって絶対にないと思うんです。映画以外に。
この映画を観て、「映画をたくさん観るようになってよかったな」と心底思いました。
この映画もまた、完成度という面では他に譲る部分もあるんですが、感情に訴える力がものすごく強いと思います。特に男性には。
去年の「ミッドナイト・ラン」同様、この映画が好きじゃないっていう男とは仲良くなれません。好きになるまで説教してやります。つまんねー人生だな、と。僕に言われるぐらいなので、相当つまらない人生ですよ。ほんと。スケベなくせにスケベなことができない人生だからね。うるさいよ。
話が逸れたおかげでかなり安っぽくなりましたが、いやでもホント、この映画は最高です。
ただ、なぜかかなりマニアックなんですよね。ソフトも古臭いDVDしか売ってなかったし。だからこそ、「映画好きです」って人にこの映画の話を振って、「おおっ!」って盛り上がったりしたらもうそれだけで泣いちゃう気がする。その人がこの映画を知ってる上に好きだったら、もうそれが嬉しすぎて。その人に頼まれたらお金も貸せそう。そんな感じ。(どんな)
マニアックなおかげで借りるのも大変だったりすると思いますが、気になる人はぜひなんとしても観て欲しいです。コメディパートの面白さ、ラストのしんみりまとまる感じ。どっちも他にないほど、素晴らしい映画です。
勝手に選出・AOY(Actor or Actress Of the Year)
長々とお付き合いいただいて申し訳ないですが、最後に最優秀俳優or女優賞の発表です。
今年はあんまりコレという感じがなくて、いい映画はたくさんあったんですが、この選出はすごく難しかったですね。と言いつつまあこの人かなと割と早い段階から決めてました。
ジュード・ロウ
- 「ガタカ」ジェローム・ユージーン・モロー役
- 「コンテイジョン」アラン・クラムウィード役
- 「ヒューゴの不思議な発明」父役
- 「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」ジョン・ワトソン役
今年観た映画の中では上記4本に出演。
まあ、やっぱり「ガタカ」のジェローム役がすべてというか、これで決めました。当時おそらく25歳ぐらいだったと思いますが、“適正者”らしいかっこ良さの中に弱さを感じさせる演技は素晴らしかったです。同じ「ガタカ」のイーサン・ホークも良くてちょっと考えたんですが、他の映画で言えば「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」でもやっぱりすごく良かったし、改めていい役者さんだな、と。
僕がこの人を初めて観て感動した映画「スターリングラード」も今年辺りもう一回観たいですね。
ということで超ロングバージョンでお送りいたしましたなんプロアワード。毎年「次回はもっとコンパクトに」なんて書いてますが、今回は書きません。諦めです。
あ、でも今年は間違いなく去年ほど刺さる映画も無いと思うので、きっとここまで長くはならないと思います。というどうでもいい予告で終了、と。
長々とお付き合い、ありがとうございました。