映画レビュー1271 『傷だらけのふたり』

JAIHOがタイミング的にファン・ジョンミンの作品を一気に追加→一気に終了の流れだったらしく、じゃあこれを観てみるか…とチョイスした一本。

※また表示がバグってますが原因がまったくわからないので放置です。よろしくどうぞ。

傷だらけのふたり

Man In Love
監督

ハン・ドンウク

脚本

ハン・ドンウク
ユ・ガビョル

出演
音楽

ファン・サンジュン

公開

2014年1月22日 韓国

上映時間

120分

製作国

韓国

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

傷だらけのふたり

後半急展開、王道ながらグッと来る。

8.0
人情ヤクザ、立場を利用して美人にお近付き
  • どこか憎めないヤクザが知り合った美人に一目惚れ
  • 借金返済軽減を利用して毎日会うように仕向け、やがていい感じに
  • 後半は急展開、一気にシリアスなドラマに
  • 全体的にはベタではあるものの見せ方が上手く、結局泣かされる

あらすじ

ところどころ不満はありつつも、やっぱりなんだかんだ作りが上手いなと感心しつつ気付いたら泣いちゃった。ちいかわってコト…!?

高利貸のお仕事…ではありますがまあ端的に言ってヤクザのハン・テイル(ファン・ジョンミン)。彼は友人であり社長でもあるドゥチョル(チョン・マンシク)の下、部長として敏腕ぶりを発揮しておりますが、しかし一方で“情”を感じさせる取り立てっぷりでどこか憎めない男です。

ある日テイルが入院中の債務者の元へ取り立てへ行くと彼は昏睡状態で、お見舞いに来ていた娘のホンジョン(ハン・ヘジン)の静止も聞かず強引に病室から運び出そうとしたところ、父の病状を案じ事を収めたいホンジョンは「代わりに払う」と月利49%というとんでもない暴利の覚書に捺印してしまいます。

ホンジョンが美人だったためか気にかけたテイルは後日彼女の経済状況をストーキングしたところ相当困窮していることを知り、「一日一時間自分と会う」ことを条件として暴利の覚書を破棄する契約を彼女に持ちかけます。

下心丸出しのテイルを最初は無下に扱っていたホンジョンも次第に情が湧いて来たのか、やがていい感じになっていく二人ですが…突如として物語は2年後へ。

その2年で何があったのか、二人はどうなったのか…あとはご覧くださいませ。

前半後半で話が変わる

ジャンルとしては間違いなく恋愛映画になるんですが、ただ「無理矢理暴利の契約を結ばせたヤクザに付きまとわれいい感じになる」前半のくだりは少々強引かなという気もして、いくら強引に毎日会うように“契約”させられたとして、いくら憎めないタイプの男だったとして、そしていくらファン・ジョンミンだったとしても…果たしてあんな出会いを経て惚れるんかいなとちょっと乗り切れずにいました。まあラブコメだしそんなこと言うのも野暮なのかな…と思っていたら後半話がまったく変わります。

前半垣間見せていたコメディ感はまるで無くなり、次第に深刻さを増していく物語。ラブコメかと思っていたら純愛でした、みたいな。

皆さんはラブコメも純愛映画も大して変わらんがな、と思うかもしれませんが僕の中ではかなり違います。関東のうどんと関西のうどんぐらい違う。ジャンルは一緒だけど全然違うでしょ!?(なお本場の関西うどんを食べたことがない人間が言っております)

前半こそ「いいね〜ファン・ジョンミンっぽいね〜」とニヤニヤしながら観ていましたが、後半はまったく笑う余地もないシリアスな展開。

それはそれで良いんですが、その分いかにも王道な恋愛映画に寄っていっている感はあり、そこが好き嫌いの分かれ目になってしまうような気もします。

ただじゃあ最初からこの路線で行ったらどうだったのかと考えるときっとあんまりノレなかった気もするし、終盤の「なんだかんだ泣いちゃう」感じも無かったような気もするしで気がしてばっかりですよ。こっちは。フワッとした感想ですよ。

まあそれだけいい感じに作り手に乗せられちゃう上手さがあるのかなという気がします。また気がしてるわけだけど。

ちなみに監督は長編デビュー作らしいんですが、ファン・ジョンミンその他のオファーで監督を務めることとなり、それに際してあの「新しき世界」のスタッフたちが再結集して作り上げた、というなんとも胸熱なエピソードもあります。

映画としてはまったく違う二作ではありますが、とは言え初監督作品とは思えないぐらいにしっかりまとまった映画になっているし、前半後半の様変わりっぷりからちょっとインド映画っぽさを感じたとかなんとかいう噂も出てくるぐらいには少々珍しさを感じる恋愛映画ではありました。「ラーンジャナー」みたいなね。あれともだいぶ違うんですが、あんな感じでびっくりさせられるものではありました。

ファン・ジョンミン好きなら

そこそこ韓国映画に触れてきた自分としても「なかなか良いチョイスじゃない」と偉そうに上から目線で言いたくなる脇役陣も見どころ。

ファン・ジョンミンの兄貴がクァク・ドウォンなのが良い。ちなみに実年齢はファン・ジョンミンの方が上だそうです。

その兄との家族らしい絡みも然り、言葉遣いの良くない思春期女子の姪っ子ちゃんとの絡みも然り、「家族」の描き方もとても良かったのが印象的。ただの恋愛映画ではない奥行きを感じます。

あまり内容に触れるとネタバレ的に一気に面白くなくなっちゃう気もするのでこれ以上特に書くこともないんですが、とりあえずファン・ジョンミン好きなら観て損はないかと思います。こういう憎めない不器用な人間をやらせたら本当に上手いなぁと。

そしてファン・ジョンミンを観ると「新しき世界」が観たくなる不思議。

JAIHOで配信中だったのでこのあと続けてまた観ました。言うまでもなくやっぱり良かったです。

ネタバレだらけのふたり

やっぱりなんと言ってもオナラの使い方ね…。あれには唸りました。

初回は「そんなやついるかよ」と醒めて観ていたんですが、二回目の微妙な空気感のときに彼女が無邪気にかましてくるシチュエーションの上手さにやるな〜と思っていたらまさかの三度目に泣かされる、という…。オナラで泣くとは…。二回目が上手かっただけにまったく予想もしてなくて、そのせいで余計に上手いなと。

それとこれは完全に個人的な印象でしかないんですが、韓国映画は「人の死」の使い方が上手いような気がしますね。

比較対象として合っているのかはわかりませんが、同じく純愛映画の「ただ、君を愛してる」の宮﨑あおい演じるヒロインの死は(当時こき下ろしていたように)すごく冷めたんですが、韓国映画のそれはアレみたいなあざとさ、わざとらしさがない気がして。

やっぱりそれなりに段取りを踏んで前フリもあっての死なので納得感があるし、でも不可逆的な事象なのでいろいろ考えさせられる部分も出てくるしで使い方が上手いのかな、と。「八月のクリスマス」もそうだったなぁと思い出して。

一方でこれは受け手のレベルにも関わってくる話なので、文化成熟度の違いもありそうですが単純にその作品の対象年齢の違いとかもあるかもしれないし、一概に「日本がダメで韓国が優れている」という話でもないんだろうとは思います。

ただ国として映画その他の文化振興に対する熱の入れ方の違いは確実にあるし、日本ももう少し環境を整えてくれればだいぶ違うだろうに…というもどかしさも感じます。

単純な話として、韓国は人口的に国内だけではペイできない=海外にも評価されるものを作る必要性に迫られているのに対して、日本は国内マーケットでそれなりにやっていけちゃう不幸、みたいなのもあるんでしょう。

とは言え縮小傾向の国内マーケットに頼らずに今後は海外でもウケるように考えて作りなさい、って言われてもできる人は一握りっぽいのがなんとも悲しいところですが…そここそが底上げというか、映画産業全体で考えていかなければいけない問題なんでしょうね。

アニメとかはまた話が違ってくると思うんですが、いずれにせよこの映画とはまったく関係のない脇道話が長くなりすぎてしまうのでこの辺で。

まあそうやって作品外についてもいろいろ考えさせられたな、というお話です。

このシーンがイイ!

ポイントとして泣かされたところはあるんですがそこはやっぱりネタバレ気味になってしまうので、差し支えないところで挙げれば序盤の「強制デート」のときに無理矢理モーテルに寄せていくファン・ジョンミンのシーンが笑っちゃって好きでした。あからさまだね、っていう。

あとお父さんにマッサージするシーンも良かったな…。なんかグッと来ちゃって。

ココが○

ネタバレにならないようにここでは明言しませんが、とある要素の使い方が抜群にうまいですね。伏線として。あれは本当にズルいなと思いました。

ココが×

好みとしては微妙にズレているというか、良かったんだけどそっちが観たかったんじゃないんだよな〜というのはありました。本当に単純な好みの問題です。

あとはどうでもいいところですが、髪型気にして切った割にしょっちゅう元に戻ってた気がしたのは気のせいなのかなんなのか…。撮影時期の問題か、とかちょっと気になりました。

MVA

主演どちらも良かったんですが…なんとなくその二人にしてもなぁという天の邪鬼っぷりを発揮してこの人にしたいと思います。

クァク・ドウォン(ヨンイル役)

テイルの兄。

あまり仲は良くなさそう…だけど兄弟らしい絆も見える感じが最高でしたね。

普通の脇役ではあるんですが、最後の方で彼に泣かされてしまったこともあり。今まで観た彼の役はどれも違っていい役者さんだなぁと改めて感じたのもあって、おまけ選出です。

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