映画レビュー0705 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』

公開当時に読んだ記事で気になっていたところ、最近見たBSプレミアムの映画宣伝番組で紹介されていて、「これは観なければ…!」と思っていたら以前放送していたのを録画していたよ、というおなじみのウッカリ展開です。ということでBSプレミアムより。

なお、ちょっとレビューが溜まってきたため、これから少し平日アップを増やしていく予定です。

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

Nebraska
監督
脚本
ボブ・ネルソン
音楽
マーク・オートン
公開
2013年11月15日 アメリカ
上映時間
115分
製作国
アメリカ

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

“よくある詐欺広告”の「100万ドル当選しました!」を信じ込んで賞金を受け取りに行く、と一人老体に鞭打ってリンカーンまで向かう父・ウディ。母からその知らせを受け、何度も説得を試みるが聞く耳を持たない父を見た息子・デヴィッドは、「現実を見せて諦めさせるしか無い」と父を連れてリンカーンへ行くことにする。

金が絡むといろいろ面倒。

7.0

2013年の映画ですが、「ロードムービーはやっぱモノクロっしょ!」と思ったのかどうかわかりませんがモノクロ映画です。

主演はつい最近観た「サイレント・ランニング」が印象的なブルース・ダーン。でも当然すっかりお歳を召されてしまい、マジで死にかけじゃねーのか的な老人役を熱演。そんな彼が、一昔前は日本でもよく見た気がする「100万ドル当選しました!」という広告を真に受けてしまい、「これ詐欺だから!!」という周りの声にまったく耳を貸さずに一人ヨボヨボリンカーンへ向かうところから物語はスタート。

ちなみにこのブルース・ダーン演じるウディが暮らすのはモンタナ州、リンカーンのあるネブラスカ州まではGoogleMapで(適当なポイントを使って)調べたところ車で約16時間程度ということで、まあ車で何泊かして行くならアリかな、という感じでしょうか。歩いて行くのは無謀以外の何物でもありません。誰が止めても一人歩いて行こうとする父をさすがに見かねてか、息子・デヴィッドが車に乗せてともに旅をするというロードムービーです。

ただ、ロードムービーではあるんですが、実際は途中にあるウディの出身地の妹家族宅での滞在が結構長く、そこでタイミング良く(?)親戚一同集まっての会合に当選話が絡んでーのいろいろありつつ。さらに田舎町らしい狭いコミュニティ故のウワサの広まりも相まって、いろいろと気苦労の絶えない息子と、イマイチ何を考えているのかわからない父親との旅を情感たっぷりに描きます。

親子が旅をするロードムービーなだけに、やはり過去との対峙が主体になってきます。今ならいかにもトランプを支持していそうな白人労働層のウディ親族であったり、かつてともに工場を経営していた友人だったり、そもそも昔から引っかかる部分のあった親子そのものであったり、また親戚一同の会合に途中から合流する母と兄であったり、家族を中心としたいろいろな関わりが、真偽関係なく「100万ドル当選」という一つの事件をきっかけに過去とともにあぶり出されていくというリアルなお話でした。

やっぱりね、お金が絡むといろいろあるよね、っていうのは言われなくてもわかってはいるんですが、ウディ出身地でのいろいろは…本当にありそうだよなぁと良い意味で居心地の悪さみたいなものがあって、なんとも大人の映画だなーという感じ。

事実は別として「100万ドルが当選した」という引力のせいで、本人たちも気付かないまま過去に向き合わされる家族というのはなかなかうまい脚本だなぁと思います。

その家族がまたかなり平均年齢が高い、っていうのが良いですね。一番若いデヴィッドですら中年ですから。いい歳なのに父親の戯言、言わば無駄足に付き合わされるという時点でたまったもんじゃないですが、さらにその父が割と制御不能な困ったちゃんということで、仕事ほっぽり出して付き合っているのに報われない感じ、なんとも言えないほろ苦さがあります。かと言って完全に父親がダメなのかというとそうでもなく、面倒でも放っておけない感じがまた生々しい。

タイトルからすると完全に父と息子の旅という感じですが、確かに主軸はこの二人ではあるものの、実際は最初だけの登場かと思われた母親も兄貴も結構大きな役割で絡んでくるし、実質家族の物語と言っていいでしょう。

あまり大きな事件もなく淡々と流れる物語ですが、その二人以外の家族の性格もきっちり描いているおかげで、エンドロール後にまたどういう絡みが行われるのか、ちょっとだけ劇後の家族に思いを馳せたくなるような人物描写の巧みさが印象的でした。

特に母親がね。強烈で。こんなマザーお断りだぜと思いますが、かと言って嫌な部分だけではない彼女の良さもちゃんと見せているのが良いですね。

とは言え、やっぱり全体的にはあまり抑揚もなく、特にこの映画の肝となる部分の展開にはちょっと気に入らない部分もあったりして、期待が大きかった分少しガッカリした部分はありました。「ストレイト・ストーリー」とまでは言いませんが、それに近いぐらいにグッと来るようなロードムービーを期待していたんですが結局泣くようなこともなく、「いい話だけど…そこまで盛り上がらなかったな〜」という感じで。あえてのモノクロに期待しすぎたような気もします。モノクロだから良いな、っていうのも実際あったんですけどね。

あと僕としてはこの映画の物語そのものよりも、この時代にこういうリアルな人間像を描いたロードムービーをモノクロで作ってそれが評価される、っていう時代背景の方に興味があって、やっぱり前からちょこちょこ書いていますが、アメリカがちょっとすり減ってきているのかなぁというのが興味深いし気になりました。

一昔前、2000年代ぐらいまではこういう話ってウケなかったような気がするんですよね。何の根拠もないテキトー発言なんですが。

アメリカもちょっと斜陽に向かってきているのか、少しこういう叙情的な話の方に寄ってきているのかな、という気がして。すごく偉そうな表現ですが、「大人になった」≒夢見がちな物語以外を好むようになったのかな、というか。昔はもっと希望に満ちた映画が多かった気がする。

とは言っても昔から「ハリーとトント」みたいな映画もあったので、単なる印象論だと思うんですが。でも割合とか評価という面でこっちの方に寄ってきているのかな、というのはちょっと気になるところです。それが良いとか悪いとかではなくて。

結論としては…「モノクロロードムービー」という若干期待を煽るような入口の割にそこまでの映画ではなかったかなぁというところですが、ただいろいろ社会的な周辺事情を考えると思うところがあるな、という感じでしょうか。あまりにもリアルな一般人的物語なので、余計に現実と結びつけていろいろ考えちゃう面があるような。

イギリス映画ならきっともっと人間愛を感じさせてくれるような気がするんですが、良くも悪くも良い面悪い面をしっかり見せてくれる辺りがアメリカっぽい感じなんでしょうね。という適当なまとめ。

ネタバレカ

結局最後にトラックとコンプレッサーを買ってあげるっていうのは、確かにいろいろと象徴的ではあったんですが、ただ中古とは言えトラック(+コンプレッサー)って結構な額じゃないですか。あそこはもっと貧しい家族の方が良かったんじゃないの、って気がしたんですよね。

(スバルを下取りに出してたし)無理して買った面はあったにしても、あんまりお金に困ってない感じが出ちゃってなんだかな、と。話の帰結として綺麗なのはすごくよくわかるんですが…。自分だったらあれはできないなぁ、と自分に投影しちゃったせいもあるのかもしれません。

なにせ道中も“お金が手に入る”ことが軸なだけに、もっとお金についてリアルな描き方のほうがグッと来たと思うんですが、価格も特に触れられずさっくり買っちゃう、っていうのはちょっと前フリ的な意味での道中を殺しちゃってるような気がしました。

それにしても親族の「キツイときにいろいろやってやっただろ」とか、あの辺の生々しさは本当にいろいろ思わされましたね。「宝くじに当選すると知らない親戚が増える」とかよく言いますが、ああいうの見たらやっぱり当選したとかウッカリ言えないよな、と思います…。

このシーンがイイ!

序盤ですが、やっぱり入れ歯のシーンでしょうか。親子だな、っていう。

あとはネタバレになるのでボカしますが、スカッとするあのシーンは良かった。

ココが○

リアルな人物像の裏側に、やっぱりうっすらと現代(アメリカ)社会の縮図が透けて見えるのが良いのかなと思います。無職のいとこ二人なんてもうそれっぽすぎてね…。可笑しいやら痛々しいやら…。

あとはやっぱり上に書いた通り、ある程度みんな歳を取っている家族っていうのが良いと思います。若いとまた違った感じになっちゃうので。

前提としてお父さんはもう先が長くないだろうし、息子もいい歳なのに恋人に出て行かれて結構先行き不安な感じが出てくる、っていうところに味があるのが良いというか生々しいというか他人事ではないというか…。

こっちは出ていく恋人もいませんけども。

ココが×

もう一息グッと来るものは欲しかったですよねぇ。「良い映画なんだけど…うーん」という煮え切らない感じが惜しい。

MVA

両親どっちも素晴らしくクセのある老人っぷりが良かったんですが、一番良かったのはこの人。

ウィル・フォーテ(デヴィッド・グラント役)

息子役。

なんとも言えない気の毒感がお見事。優しい中年息子、って感じがもうね…他人事じゃなくてね…。地味ながらものすごく良い演技だったと思います。リアルなんだよなぁ。

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