映画レビュー0453 『グランド・イリュージョン』
「LOOPER/ルーパー」を借りる時に一緒に借りた、“賭け”の一本。
最寄りのTSUTAYAでは結構な推しっぷりで、借りられたのも運良く残ってた最後の一本、しかもDVDしかなかったので人気的には結構なものっぽいんですが、ジャケットから漂う「やっちゃいそう感」がハンパじゃなかったんですよね…。
でもモーガン・フリーマンも出てるし、残酷ではないサスペンスということで、文字通り半信半疑で借りてみました。
グランド・イリュージョン
映画自体もマジック。
まず懸念していた「すげー寒い映画なんじゃないのか(震)」というようなことはなく、不満はありつつも結構楽しめました。一般的に見ればなかなか意欲的な力作だと思います。ただ、手放しで褒められるほどの作品ではなかったかな、というのが正直なところ。
オープニングとなるラスベガスでのショーを始め、マジックの見せ方や演出はさすが最近の映画らしくなかなか凝っていて、観ているだけで楽しい。“一応(詳しくは後述)”種明かしもストーリー上で触れられるので、ただ単に作り物としてすげーというマジックではなく、それなりにエンタメとして作られているので、本物のマジックショーを観ているかのように楽しめるのは◎。
ですがあくまで本編はマジックそのものではなく、彼ら4人のマジシャンの狙いとその黒幕、そしてFBI&インターポールとの駆け引き、さらにそこに加わる敵か味方かカウボーイ(古)的な怪しい男、モーガン・フリーマン演じるサディアスの存在がメインなので、ジャンルとしてはサスペンス色強めの犯罪映画と言う感じ。
ただ、どうしても(ビジュアル的な)メインがマジックということもあり、逆算して組み立てたご都合主義的な展開も気になるところではあるし、何より一番気になったのは「映画自体もマジックである」点、言ってみれば大きいものに注目させて、細かい矛盾は気にさせないように作っている点でしょう。
僕もたまに「24」を例に書きますが、それが許せるほど突き抜けて面白ければいいんです。別に。ただ、ことマジックとなってしまうと逆に細かい点が気になるし、「それはわかったけどアレは?」みたいな部分が結構ありました。野球に例えるなら「バント失敗したけど結果的にタイムリー打ったからいいじゃん」的な、勢いでごまかして立派な箱に詰めて「すごい映画です」と見せるような感じが気に入らなかったですね。
それとところどころでチープに見えるCGも気になったんですが、一番気に入らなかったのは取ってつけたような恋愛要素で「いい感じ」にまとめました、っていうテクニック。これホントに余計だと思う。
加えて劇伴も(マジックというテーマ故、あえてなんでしょうが)妙に大仰でやや自己主張が激しく、それが安っぽさにつながっていた印象。
その辺も含めて全体的にライトな映画ファン向け、対象年齢層もやや低めに感じられました。
それなりに難解な展開を盛り込みつつも「大人向け娯楽」になりきれていない感じが非常に惜しく、監督が違えば相当違う印象の映画になっていたと思います。
個人的にはダンカン・ジョーンズが作っていたらむちゃくちゃ面白くなってたんじゃないかと思います。単純に彼が好きだから、ノーランの「プレステージ」とマジック映画対決をして欲しかった、という願望があるのは否めませんが。
メインの「フォー・ホースメン」は、「ソーシャル・ネットワーク」を彷彿とさせるいかにもなキャラで見せてくれたジェシー・アイゼンバーグこそ良かったものの、失礼ながら他の3者はやや小粒な印象。ただ、この映画のメインは実はこの4人ではなく、FBIのマーク・ラファロであり、その相棒で謎めいた女性メラニー・ロランであり、怪しい種明かし爺さんのモーガン・フリーマンなんでしょう。噛ませ犬的な使われ方で終わったマイケル・ケイン(「プレステージ」も出てるのに!)がもったいない。
僕としては、この辺の主要キャストのおかげで「超B級激震え映画なんじゃないか」という懸念を乗り越えて観ることができたので、やはり良い役者さんの存在というのは一定程度のクオリティを担保する意味合いでも重要だなと再確認しました。これが知らない人ばっかりでジェシー・アイゼンバーグだけメジャー、とかだったら多分もっと借りるのを躊躇していた気がします。余談ですが。
まとめ。「サスペンス」を期待してしまうと逆にアラが目立つので、あくまでエンタメとして、特に考えずにボケーッと観ていれば、なかなか楽しめる映画だと思います。
監督さえ違えば劇的に良くなった気がするので、そこは非常に惜しまれるところです。
このシーンがイイ!
飛行機でマジックを試した時のメラニー・ロランの笑顔。無邪気な感じが最高。
ココが○
話の組み立て方は悪く無いと思うんですよね。最後まで各人の狙いがわからない感じも好きです。
ココが×
上につらつら書きましたが、まあやっぱり一番は恋愛要素ですかね。あれほんとにいらないと思う。最後を綺麗にまとめるために用意しました、みたいな感じが非常にクソです。
ただでさえ安っぽくなりがちなマジック映画をより安っぽくしてくれる、劇的にセンスが無いところを露呈した部分と言えるでしょう。
MVA
なかなかいい脇役陣を配した映画ですが、今回はこの人で決定。
メラニー・ロラン(アルマ・ドレイ役)
インターポールから派遣された女性捜査官。
この人好きなんですよね。もう単純に。劇的に美人! ってわけじゃないんですが、やっぱりアメリカ人とはちょっと違う、フランス人っぽい綺麗さがたまりまへん。
かわいいんだよな~~。今回は今まで観た役とはちょっと違ってやや男勝りな部分も垣間見える役でしたが、それがまた似合っていて良かった。