映画レビュー1058 『エスター』
長年観たかったものの怖そうで敬遠していたこちらの映画、ついにネトフリ終了がやってまいりました。
「長年」って言っといてなんですが、これ2009年の映画なんですね。もっと古い映画だと思ってた…。
エスター
アレックス・メイス
ヴェラ・ファーミガ
ピーター・サースガード
イザベル・ファーマン
ジミー・ベネット
アリアーナ・エンジニア
CCH・パウンダー
2009年7月24日 アメリカ
123分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

つくづく煽りすぎがもったいない。
- 死産がトラウマの主人公、一人の孤児を迎え入れる
- 最初はみんなハッピーに過ごしていたかと思いきや…
- 怖さのレベルがリアルで○、でもいろいろ煽りすぎ
- 子役が子役に見えない役者っぷりもお見事
あらすじ
この映画も結構オススメしてくれる人が多く、それなりに期待して観まして、確かに評判通りよくできてはいるものの、僕が一番嫌う「わざとらしい演出」が結構ひどかったので少し評価が下がったかなという感じ。
ある意味僕の地雷を踏んだ系なので、普通に観れば結構誰でも満足の行くホラーではないかなと思います。
以前に流産した経験を引きずっているケイト(ヴェラ・ファーミガ)は、旦那のジョン(ピーター・サースガード)と相談の上、一人の孤児を引き取ることに。
訪問した孤児院で楽しそうに遊ぶ孤児たちの中で、それには混ざらずに一人こもって絵を描く少女・エスター(イザベル・ファーマン)に惹かれたケイトとジョンは、面接を経て彼女を孤児として受け入れます。
二人の娘で難聴のマックスとも実の姉妹のように仲良くなったエスターですが、次第に本来の姿を現し始め、一家の周りでは不穏な事件が顔を出し始めますが…あとはご覧ください…!
今回もサースガードニキは使えない
ということで最初に書いたように、僕はもう勝手に1990年代ぐらいの「定番」ホラー映画なのかと思っていたんですが(それぐらいよく目にしたということでしょう)、ところがまだまだ全然新しく2009年の映画で、主演は「怒られたい女優No.1(当社比)」のヴェラ・ファーミガ、そしてその旦那が「役に立たない役率No.1(当社比)」のピーター・サースガードという布陣で俄然興味を持ち始めましたというお話です。そして今回もサースガードニキはやっぱり使えなかったというオチ。役名すら平凡な名前の「ジョン」だし最高。
まあその辺の周辺事情は置いときまして、少しだけあらすじの補足。
主人公のケイト&ジョン夫婦には元々長男のダニエルと長女のマックスという二人の子どもがいて、3人目を妊娠していたものの死産の憂き目にあったためにトラウマを抱えるような状態になったケイトが、その傷を癒やすために(もちろんそれだけでもないと思いますが)孤児を引き取ることにしたらそのチョイスが大外れでひどいことになった、というお話です。
この「元々2人子どもがいる上でさらに孤児を引き取る」というのは向こうではあんまり珍しくないんですかね? 僕はてっきり「子どもができないから」孤児を、という話なのかと思っていたのでそこがまず少し意外だったんですが、ただこの「すでに2人子どもがいる」というのがなかなか効いてくるお話になっているのがまずお上手でした。
相手が子どもだから軽く見ているのかはわかりませんが、まずエスターは子どもの前で本性を現すんですよね。親には隠してる。でもそのうちそれも気にせずどんどん表出してくるんですが、その段階の踏み方も徐々に本丸に迫っていくかのような怖さがあってなかなか良かったです。
いくら子ども相手でもそこまでやったらバレる(チクられる)でしょ、と思えるぐらいに大胆なサイコパスっぷりを発揮するエスターですが、でもやっぱり子どもだといろいろ怖くて親に言えなかったりするんでしょうね…。なにせ直接的に脅されたりもするだけに、言えないのもまたむべなるかな、と。
設定もいいのに無駄に煽るもったいなさ
んで、話のキモとしてはエスターがなぜこんな少女に育ってしまったのか、つまり彼女の過去が重要になってくるわけですが、その“捜査”は中盤以降エスターに不信感を抱いたケイトによって徐々に進められるも、かつてアル中になって信用を失ったケイト vs ジョンの前では完璧な“イイコ”を演じるエスターの巧みさによって誰も信じてくれないというおなじみのもどかしさが話を盛り上げます。こっち(観客)は全部知ってるのに旦那は何も信じてくれねぇ…! マジで使えねぇなサースガード…!(期待通り)
話的に「いくらサイコパスでもさすがにこんなに狂ってる子どもはいないでしょ」という嘘くささを感じる面はあったんですが、ただそれにも納得の行く理由付けがなされていたのでその辺りもお上手でした。
ただ、最初に書いた通り…この映画は結構“煽り”がひどいんですよ。
まあ終盤は良いんですよ。それなりに話も固まってきて、ちゃんと怖いところは怖いよ、って見せる必要もあると思うし。
ただこの映画は序盤からかなり音楽も演出も煽り過剰で、それでもう早々にうんざりしちゃった面があったんですよね。
例えばケイトが歯磨きをするシーン。鏡に映るケイトを後ろからカメラが迫る演出…というよくあるパターンで「何かあるぞ」と身構えさせた直後にサースガードが「やぁ」みたいな。絶対そうだと思ったわ、っていう。
もうね、終始こんな感じでどーでもいいシーンを緊張感溢れる劇伴に乗せて「来るぞ来るぞ、怖いぞ怖いぞ」ってやってくれるんですよね。
僕はこの手の演出は「自信のなさの裏返し」もしくは単純に観客をバカにした安易な演出だと思っているので、とにかくその作りが不愉快だったし監督マジクソだなと思いました。「フライト・ゲーム」の監督と知ってなんだか納得はしましたが。
話と設定、役者の演技はどれも素晴らしいだけに、これは監督が違えばもっとものすごい傑作になったんじゃないかなと思うんですよ。それだけにすごくもったいないしなんなら頭にきました。安っぽい映画にしてんじゃねぇ! って。
ただこの辺は個人差あると思うので、気にならない人は全然気にならないだろうしそのまま傑作だと思ってもおかしくないと思います。僕は気になりました。すごく。しかもそれが序盤だからのっけから醒めさせられて余計に腹がたった。
もう少し、脚本の良さと観客を信じて丁寧に作って欲しかったなと思います。いかにもな煽りを序盤から繰り返すほどB級の話じゃないんでね…。
ホラー好きは一度は観るべき?
ということで評価としては今ひとつな感じになってしまいましたが、それはすべて僕と監督(演出)の相性の問題なので、細かいこと気にしないぜ、って人はきっと存分に楽しめる良作だと思います。
ホラーではあるもののグロくもなく(痛そうな場面はあるので完全に安心でもないですが)、観やすい部類なのも良いところでしょう。
ホラー好きであれば一度は通るべき映画の一本、なのかもしれません。僕はホラー好きではないのでいい加減な予想ですけども。
でもホラー好きだとなおさら安い煽りが気になるような気もするんだよな…。ただ世間的な評価はかなり高いので、あんまりそう思う人もいないんでしょうね。
このシーンがイイ!
サプライズプレゼントのシーンかなー。完全に宣戦布告じゃねーか、狂ってんなこいつ、って感じが良かった。
他にも狂ってるポイントはいろいろあったのでお楽しみに!
ココが○
エスターのサイコパスっぷりと、その彼女が抱える秘密の部分はとても良いですね。「そういう話なんで」っていい加減にまとめてないのが良い。
ココが×
もうこれは完全に、上で散々書いた「序盤から煽りすぎ」な点。すごく安っぽかった。
MVA
期待通りのサースガードニキ、相変わらず見事なヴェラ・ファーミガも良かったんですが、やっぱりこの人でしょうか。
イザベル・ファーマン(エスター役)
決してかわいいとは言えない見た目に役が超絶マッチ。演技も子役とは思えないほどの狂気感でお見事。文句なしです。
ちなみに現在この映画の前日譚が作られているらしく、彼女も続投しているとか。これもまた気になりますね。
あと妹ちゃんのマックスを演じたアリアーナ・エンジニア、彼女は実際に難聴の子らしいんですが、とても愛らしくて素晴らしかったですね。彼女のヒロインっぷりもまたこの映画にとって非常に大事だったことは間違いないです。

