映画レビュー1370 『スピリテッド』

最初は特に意識してなかったんですが、ここ何年か割とちゃんとクリスマス映画を観ていたので今年も何か観ようかな、ということでいろいろ調べたんですがAppleTV+のコレにしました。

ぶっちゃけウィル・フェレルの映画はそんなに好きじゃないので大丈夫かなと思いつつ…。

なお今年の更新はこれで終了です。あとは年末に何か好きな映画を1本観て映画納めしつつ、次はなんプロアワードでお会いしましょう。みなさん良いお年を。

スピリテッド

Spirited
監督
脚本

ショーン・アンダース
ジョン・モリス

原作

『クリスマス・キャロル』
チャールズ・ディケンズ

出演

ウィル・フェレル
ライアン・レイノルズ
オクタヴィア・スペンサー
パトリック・ペイジ
スニータ・マニ
アンドレア・アンダース
ジョー・ティペット
ジェン・タロック
ローレン・ウッズ
トレイシー・モーガン
マーロウ・バークリー

音楽
公開

2022年11月18日 各国

上映時間

127分

製作国

アメリカ

視聴環境

Apple TV+(Fire TV Stick・TV)

スピリテッド

肝心の歌が微妙。

6.5
「悪人を改心させる霊」に取り憑かれたマーケティングコンサルタント
  • 毎年悪人のターゲットを定めて“改心”させる霊たちの話
  • 今回のターゲットは分断を煽るマーケティングコンサルタント
  • しかし口上手な彼に霊も苦戦、逆に取り込まれたりしつつ…
  • やや説教臭いミュージカル

あらすじ

ミュージカルだからなのかなんなのか、どうにも今ひとつハマらずに終わりました。無念。

とある女性の“改心計画”が成功に終わったあの世の「世直しチーム」的なスピリテッド(霊)たちは次なるターゲットを決めますが、そのターゲットのホテル支配人のリサーチ中に現れたマーケティングコンサルタント、クリント(ライアン・レイノルズ)の方に興味を惹かれた霊のスクルージ(ウィル・フェレル)は彼の講演を調査。

クリントは対立と分断を煽る演説で聴衆を惹きつけ、まさに今の時代に相応しい“悪人”と思ったスクルージはターゲットを彼に変更したいと言いますが、スピリテッドたちのボス的な存在のジェイコブ(パトリック・ペイジ)は聞く耳を持ちません。

それもそのはず、クリントはすでに「救済不能」という判定が下っていたため、言ってみれば「やるだけ無駄」な人物でした。

しかしスクルージはなおも食い下がり、何としても彼を改心させるんだと主張してなんとかジェイコブにも認めさせますが、しかし問題のクリントは一筋縄ではいかない人物のようで…。

元を知らないと厳しいのかも

無学故に申し訳ない限りですが、元々はチャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」を元にした映画とのことで、そのパロディが大量に詰め込まれた映画のようです。

それ故に元となるクリスマス・キャロルについての知識がないとおそらく面白さの半分も理解できないと思われるので、そりゃあイマイチでもしょうがないなというお話。己が悪い。

「スクルージ」って聞いたらスクルージ・マクダックしか思い出しませんでしたからね。ドナルドダックのおじさんの。ヒューイ・デューイ・ルーイの大叔父の。

でもヒューイ・デューイ・ルーイというと今度は「サイレント・ランニング」が浮かぶという矛盾。どうでもいい話です。

ちなみにスクルージ・マクダックはそもそもそのクリスマス・キャロルのスクルージが由来だそうなので、やっぱり大元の話を知っているぐらい当たり前だろ的なことなんでしょう。アメリカ人であればなおさら、なのかな。

Wikipediaにも「クリスマス・ストーリーの中では最も有名」とあるぐらいの作品なので、むしろ通ってきていない自分のほうが非常識なのかもしれない…とちょっと恥ずかしくなるぐらい。でも本当にここまで断片的にも話を聞いた記憶がないのも珍しいので、やっぱり結論としては「お前はとことんクリスマスに縁が無い人生なんだ」という悲しい結論でまとめたいと思います。ありがとうございました。

とうっかり映画の話を書き忘れたので本題に入りましょう。

上記の通り、元ネタにまったく知識がない人間が文句を言うのはおこがましいんですが、それでもまあこちとらそういう趣旨でもう14年以上やってるんでね、ってことで続けます。

ターゲットであるクリントを改心させるチームは、過去担当・現在担当・未来担当の3者が中心となっており、彼らがその担当の通りに過去の出来事や「このまま行った場合の未来」を見せて改心させるような流れ。この辺も「クリスマス・キャロル」から来ているようです。

じゃあ現在は何するのさと思うんですが、この現在担当がウィル・フェレル演じるスクルージであり、クリントをあちこち連れて再現を見せる案内人のような格好。

結局大半はこのスクルージとクリントによるあれこれが中心になっていて、さながらバディムービーのような雰囲気もあります。

そしてこの映画は最初に言われるようにミュージカルにもなっていて、それがよりクリスマスの多幸感を演出してくれもするんですが、ただ肝心の歌詞が…結構説教臭くて白けるというか、もうちょっとうまく騙してほしいなとそこで乗り切れないものがありました。

簡単に言えば「善行を積もう」みたいなド直球な改心促しソングが多く、歌自体にグッと来ないんですよね。一番(セット込みで)いいなと思ったのはスクルージが悪さを発揮する「グッドアフタヌーン」だったし。勢いがあって。

まあそもそも論で言えばクリスマスなんてキリスト教ど真ん中のイベントなだけに、それこそ聖書とかそっちの方に近いものになってくるのも当たり前といえば当たり前なんですが、舞台も話自体も現代っぽい割に歌詞がかなり古めかしいのでもうちょっとなんとからならんかったんかいと。

「分断を煽る悪者」も現代らしくて良いテーマだと思うんですが、その割にクリントはそこまで悪いやつにも見えないのもイマイチ微妙。いや悪いやつなんだけど。

ただライアン・レイノルズの演技も相まって人たらしな「憎めない悪いやつ」みたいなキャラクターになっていたので、もうちょっと「こいつは悪いやつだ」と思わせてくれないと盛り上がりに欠けるんじゃないかなと思うんですよね。

その辺「クリスマス・キャロル」はもっとストレートに悪と改心を描いていると思われるので、それを下敷きにアレンジした以上ちょっと角度を変えるのはわかるんですが…ただそれでは元を超えるのも難しいのではないかなと。

また結末についても想像通りすぎるので意外性もあまりなく、例によって無駄な(あえて無駄と言いますが)恋愛も混ざってくるしでいかにも「ザ・ハリウッドクリスマス」っぽかったのも残念。

次なるターゲットは…

文句言ってますが当然映画としてはしっかり作られていてレベルも高いと思います。ただ「この映画ならでは」のものが何もなく、ほとんどすべてが微妙に感じられて結構なガッカリ感がありました。

ずっと一つ隣の道を歩いているようなこれじゃない感。素材は良いのにお決まりに終止する残念さ。

ただネットで見かけた「クリスマス・キャロルを知っている人のレビュー」によると、結構なパロディがあってかなり笑える部分もあるそうなので、やっぱり原作を知っているか知っていないかでだいぶ評価は変わるのかもしれません。僕はこの映画で笑った記憶はないです。

しかし僕は大前提として「原作ありき」で評価しなければいけないのはそもそも映画として問題があると思っているので、となるとやっぱり評価としては今ひとつと言わざるを得ないかなと。

ただそうなってくると「人々にあるであろう共通知識」を頼りに作るものもすべてダメ、という話にもなりかねず、それはそれで問題があるので結局「自分にとって良いか悪いか」でしか物が言えないダメ人間ですよ。やっぱり。ある程度の知識が必要な映画も自分とマッチしてたらベタ褒めしますからね。こんなのクソ野郎ですわ。

ということで次のターゲットは僕にしてください。改心したいです。お願いします。

このシーンがイイ!

歌としては上に書いた「グッドアフタヌーン」のシーンが好きでした。古いロンドンの街並みも良かったし、歌も良かった気がする。

ココが○

すごく意外だったんですが、ライアン・レイノルズの声がすごく綺麗なハリのある高音でもっと聞きたかったですね。

歌も普通に上手かったんですが、ただ歌自体は後工程でどうにでもなる(「ラブソングができるまで」のときにおヒューが言ってたし)らしいので実際上手いかどうかはわかりません。

ココが×

それなりに「クリスマス・キャロル」を知っていないと楽しめないっぽい内容。

ですがおそらくアメリカでは日本と比にならないレベルで浸透している話なんだろうし、日本人が「しらねーよ!」って文句を言うのも筋違いなのかもしれません。日本における忠臣蔵のパロディみたいな。わかんないけど。

MVA

ウィル・フェレルは歳も取ったせいかコメディ感も薄めで少し落ち着いた役になり、僕としては結構良かったんですが彼のファンはそこが物足りないかもしれないですね。

んで選ぶのは結局この人。

ライアン・レイノルズ(クリント・ブリッグス役)

今回のターゲット、分断を煽るマーケティングコンサルタント。

ターゲットの割に(言ってることは確かにどうなのとは思うものの)そこまで悪人感もなく、なんならすぐに友達っぽくなる親しみやすさすらあるんですが、まあその辺のキャラクターをやらせたらやっぱりお上手だなと。

ウィル・フェレルと同じく、ライアン・レイノルズとしてももうちょっとバカっぽい役でも良いような気もするし、どっちも普通の人っぽかったのが良いような悪いような…。そこでリアリティをもたせたかったのもわかりますが、まあでもキャラの深さにしても説教臭い歌からしても、「子どもと一緒に」みたいなポジションの映画なんでしょうね、きっと。

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