映画レビュー0204 『ドラゴン・タトゥーの女』

「ミッション:インポッシブルのテーマ」を聞きながら動きまわるとなんでもスパイ感が出て面白い、というたまがわ名言がありましたが、同じように「あの頃ペニー・レインと」サントラ収録の「Tiny Dancer」を聞きながら動きまわると、例え駅の中でもなんとなく青春感が出てオススメです。無駄に切なくなれます。壁に寄りかかって電車待ったりしてるともう最高。

それはさておき、個人的に今年前半戦最大の期待を背負った作品と言っていいでしょう、こちらを観て参りましたことよ。

ドラゴン・タトゥーの女

The Girl with the Dragon Tattoo
監督
脚本
原作
『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』
スティーグ・ラーソン
音楽
公開
2011年12月20日 アメリカ
上映時間
158分
製作国
アメリカ・スウェーデン・イギリス・ドイツ
視聴環境
劇場(大きめスクリーン)

ドラゴン・タトゥーの女

とある大企業グループの元会長から、かつて40年前に失踪した姪・ハリエットを殺した者が一族の中にいるから調べて欲しい、と依頼された記者・ミカエルは、背中にドラゴン・タトゥーのある天才ハッカー・リスベットを助手に従え、同時期に起こった連続殺人事件からハリエットの手がかりを追っていく。

サスペンスファンの期待を真正面から受け止めてくれる良作。

8.0

全編「移民の歌」をバックに短いカット割でつなぐ予告編を初めて観た時から、これはとんでもなく面白そうだな! デヴィッド・フィンチャーだし! ダニエル・クレイグだし! と期待度満点で劇場へゴーした今作。

僕だけでなく、映画ファンなら「デヴィッド・フィンチャーでこの世界観」と来れば、当然オーバーラップするのは「セブン」でしょう。そんな期待を胸に観に行ったわけですが、結果的には期待に応えてくれる良作でした。

セブン」とは違い、原作とリメイク元となる映画が存在するわけですが、どっちも観たことがない僕は完全な新作としてひじょーに楽しませて頂きました。

「158分はちょっと長いなートイレ持つかなーおまけに夕飯ちょっと濃い味だったしなー」と不安だらけの鑑賞でしたが、終わってみればあっという間。気付けば濃い味も忘れてました。

冬のスウェーデンという残酷なほど綺麗な景色がサスペンスの世界にものすごくハマっていて、さらに「一族の島」という閉鎖性がどうにも不安感を煽ってくれます。

そこに充てられる劇伴も素晴らしくサスペンスフルで、サスペンスファンとしてはもうこの世界に入り込まないわけがない。

かと言って(当然ですが)「ドーン!」といきなり驚かせるような安っぽい演出も無く、緊張感を保ったまま全編突っ走ってくれます。アカデミー賞編集賞を受賞したという先入観があったからこそ、かもしれませんが、場面場面のつなぎもすごくウマイ。編集自体も演出を担っていたのがよくわかりました。

それと、これは観るまでは予想してなかったことですが、実は割とミカエルとリスベットがそれぞれ単独行動を行う流れが多いので、ミカエルのシーンでいよいよ…! というところでリスベットに切り替わり、リスベットが核心に近付いたか…! というところで今度はミカエルへ、と集中力を削がないつなぎ方がすごくうまかった。

じわじわジワジワ、相乗効果で緊張感を高めていく感じが、そのままこの映画の期待感に置き換わってどっぷりストーリーを味わわせて頂きましたよ、と。ちょっと濃い味でしたよ、と。そんな映画でしたねぇ。

個人的には、あくまでサスペンスとして、リスベットのキャラクターは(最後の方の部分で)ここまで色をつける必要がなかったんじゃないかな、という気がして、最後への持って行き方とそのラストにちょっともったいない感じがしちゃったんですが、それでもこの映画の持つ「サスペンス映画を観てください」という作り方、話の展開は、コチラの期待とがっぷり四つで戦ってくれた気がして、ある種清々しいような気分もあり。満足いたしました。ハイ。

ただ一点、こと「謎解き」の部分に関しては、実はハリエットの事件よりも連続殺人事件の調査に重きを置いているので、そのつながりとか最後の収束を観てみると、ちょっと勢い任せな部分があったような気はします。なので、簡単に「犯人は誰なんだ」とか「どんな陰謀が」とかを期待してると肩透かしを食らっちゃうかな、と。そこだけはご注意。

あくまで「サスペンス映画の味わい」を楽しむ映画であって、「推理を楽しむ」映画ではないです。

このシーンがイイ!

評判通り、オープニングはかっこよかったなぁ。

最近こういう本編と直接関係のない、全編イメージのオープニングって珍しい気がしますが、文字の流し方といいさすがデヴィッド・フィンチャーの映画だな、と。

ただ、シーンとして一つ挙げるなら、序盤なんですが、ミカエルが食事をしながらヘンリックに依頼を受けている時に「望みの…ヴェンネルストレムも」と言われながら肉のアップになるシーン。ここは思わずニヤリとしちゃいましたね。

伝えたいことを被写体で現す、そのサスペンスっぽさに期待感がグッと高まりました。ものすごく印象的なシーンでしたね。

ココが○

そんなわけで編集と演出はすごく良かったんですが、一番思ったのはとにかく音楽。CDで聞いてどうこう、って類のものではないと思いますが、いかにもサスペンスらしい煽りの雰囲気を出しつつも、でもどこか今までよりも洗練されているような音楽がかなり効果的だった気がします。「なんか起こりそうだな…」って場面でのノイズの入れ方なんてすごいなぁ、と感心しきり。

ココが×

「結構エログロ」とは聞いていたので覚悟していましたが、実際のところグロはそこまででもなく、どっちかと言えば「セブン」の方がグロかった。

ただ、エロの方はちょっと必要以上に長い気がして、「ここまでやる必要あるのかね?」とちょっと気になりました。話としてはすべて差し込む意味があるし、別にあっていいと思うんですが、ちょっと「ここは察してくださいね」という感じではなくて、あからさまに見せつつさらに長いので、個人的にはちょっと趣味が悪い気がしました。女性はここで嫌悪感を持つ人が結構いるんじゃないかと思います。

MVA

あえて書きますが。リスベット役のルーニー・マーラ

話題をさらっただけあって、確かに文字通り体を張ってがんばってたのと、変身っぷりはすごいなぁと思いましたが、こと演技自体に関しては、割と一本調子な役柄だけに、そこまですごいぜ、とは思えず。ちょっとMVA足り得ないかな、と。

クリストファー・プラマーとステラン・スカルスガルドはすごく安定していていい演技を見せてくれたので、彼らのどっちかにしようかな、というのもあったんですが、結局は好きなのでこの人かな、と。

ダニエル・クレイグ(ミカエル・ブルムクヴィスト役)

「007」のような鍛えあげられた超人でもなく、普通の記者なので、正直あんまりパッとしないような部分もあったとは思いますが、やっぱりこの人はこういう役がすごく似合う。

知的だけど程良いワイルドさもあるし、若すぎず歳取りすぎずの位置取りも絶妙。メガネのかけ方、外し方、写真の持ち方、タバコの吸い方…と小道具の使い方も印象的で、その「パッとしない感じ」含めて適役だったんじゃないかと。

逆に言えば、この人が主役じゃないとルーニー・マーラに完全に食われるので、映画のバランスが悪くなってたんじゃないかなぁ。

やーーーーっぱかっこいい。ダニエル・クレイグ

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