映画レビュー0445 『トランス』

カポーティ」、「ミッドナイト・ガイズ」と一緒に借りてきた一つ。何かで評判が良いのを目にして、概要を見ても面白そうだったので借りたわけですが、個人的にあまりダニー・ボイルは好きではないのでどうかなぁと思いつつ。

トランス

Trance
監督
脚本
ジョー・アヒアナ
音楽
リック・スミス
公開
2013年3月27日 イギリス
上映時間
101分
製作国
イギリス
視聴環境
TSUTAYAレンタル(ブルーレイ・TV)

トランス

ゴヤの傑作絵画「魔女たちの飛翔」のオークション中、絵画を盗もうとギャングたちが競売場にやって来た。競売スタッフのサイモンは手順通りに絵画を避難させようとするが、途中で待ち構えていたギャングのリーダー・フランクに殴り倒されてしまい、絵画は奪われてしまう。だがその絵画も、フランクがアジトで確認すると額縁のみだった。フランクは実はグルだったサイモンに絵画の在処を吐かせようとするが、サイモンはフランクに殴り倒されたことで記憶の一部を失ってしまっていたため、どうしても思い出せずにいる。万策尽きた彼らは催眠療法士に記憶を呼び出してもらおうと、一人の女性の元を訪ねるのだった。

どうにも好きになれない。

5.5

まあ、好みの問題でしょうね。よく出来ているんでしょうが、好きになれません。多分、僕とダニー・ボイルの相性の問題なんでしょう。

なぜダニー・ボイルがそんなに好きではないのかと言うと、前回「127時間」を観た時に、テーマとは無関係に無駄にカッコつけたがる絵作りが気に入らなかったからなんですが、今回に関しては、割とその絵作りはテーマにあっていると思うし、そういう意味で鼻につくような感じはあまり感じられませんでした。それでも、評価したくなる映画ではなかったですね。

興を削がない程度に概要を書くと、主人公のサイモンはギャンブル依存症で借金を抱えていて、その一発逆転の方法として自分が関わるオークションに出品された絵画の盗難を計画します。ただ自分だけでは無理なので、知り合いを通じて今回の実行犯リーダーとなるフランクを紹介してもらい、5人で犯行に及びます。サイモンはあくまでスタッフのフリをして緊急時の手順通りに事を進めますが、なぜかフランクが奪った後に抵抗したため、頭に来たフランクに殴り倒され、一部記憶を喪失。アジトでフランクが絵画を確認すると額縁のみで、こりゃサイモンが俺たちを出し抜こうとなんかしやがったな! ということでサイモンを拷問にかけますが、記憶が無いサイモンはどうすることもできず、仕方なく催眠療法士のエリザベスに記憶を呼び覚ますための治療をお願いしたところ、このエリザベスも物語に深く絡んでいって…というようなお話。

まずストーリーの軸がこの「記憶喪失」と「催眠療法」なので、そこである程度は人を選ぶ面があるとは思います。おそらくサイモンは催眠が効きやすいタイプの人間という設定もあるんでしょうが、僕もこの映画で描かれている「なんでも意のままに」都合よく探れる催眠療法についてはちょっとオカルトっぽいしどうなのかな、と思いつつ観てました。

まあ、早い話が物語の推進力としてオカルトっぽい力に頼るのはサスペンス映画として(もちろんホラーとかは別です)はそれこそ「なんでもできちゃう」ので好きではないんですよね。夢オチが嫌い、っていうのと近い感覚。

まずストーリーを作った上で、都合のいいところを隠し、催眠療法を通して小出しにしていく…という作り手側のロジックが見えてしまうと、どうしても「のめり込んで先が気になるぜ!」という感覚で観られなくなってしまうので、まずこのテーマの時点であまり自分に向いてなかったのかな、という気がしました。

だったら「トランス」っていうタイトルの時点で借りるなよ、って話ですが、なんか「ドライヴ」みたいで良さげだな、って思っちゃったんだからしょうがないじゃない。

もう一つ、小さいようで大きかったのが、ヒロインとなるエリザベス役のロザリオ・ドーソン、綺麗なんですがどうもこの役のイメージには合わないんですよね。サイモンもフランクもお熱をあげちゃうほど魅力的には見えなかったし、そういう小悪魔的な表現も特になかったし。おそらくはあまり彼女を怪しく見せたくないという意図があってなんでしょうが、もっと男どもを惚れさせるきっかけになるようなシーンがあってもいいような気がしました。

鑑賞後に調べたところ、他にスカーレット・ヨハンソンなんかが候補に挙がっていたそうですが、彼女がやってたらもうぜんっぜん違ったでしょうね。もちろん好き嫌いであろうことはわかってますが、いかにも男をたぶらかせそうだぜ、的なスカーレット・ヨハンソンがやってたら、多分印象もだいぶ変わってただろうなーと思います。

ちなみに現在、ロザリオ・ドーソンはダニー・ボイルとお付き合いしているそうで、なんだよ公私混同かよ、とまた余計に評価を下げたことも一応ご報告しておきます。(もっとも映画ではそんな話、ザラにありますが)

複雑に交差する催眠状態と現実の描写であったり、やや最近のSFサスペンスっぽい味付けもあるので、好きな人は本当に好きなんだろうなと思います。おそらくは僕もこれをノーランが撮ったとなると手放しで褒めていただろうことが想像されます。(となるとヒロインはアン・ハサウェイでこれまた良さげ)

ただ、悲しいかな監督はダニー・ボイル、もちろんすごくよく出来ているんですが好みには合わなかったな、と。だから逆に言えばダニー・ボイルが好きな人なら「やっぱダニー・ボイルすげぇ!!」ってなれるかもしれないんですよね。でも今回は監督云々以上に、脚本そのものが少し薄っぺらい気はします。

誰が騙そうとしているのか、誰が敵なのか、みたいなサスペンスではお馴染みの不信感丸出しストーリーではあるんですが、そこにドキドキしなかったんですよね。

誰にも情が沸かない=キャラクターが魅力的ではない、っていうのもあったかもしれません。

ただ「観て損したわー」というのは無くて、「まあ好き嫌いはあるけどそこそこ面白かったな」と思えるものではあったので、サスペンス好きなら一度観てみてもいいと思います。

このシーンがイイ!

ううむ…そうだな…。特に出て来ないっていう。

ココが○

やっぱりなんだかんだ使い古されたものを観る機会も多い世の中ですが、それなりにオリジナルの物語として頑張っていたように思います。

くどいようですが「好みとして好きではない」映画ですが、評価しないわけではないです。「超面白い!」って人がいてもおかしくないと思う。そういう意味ではよく出来てもいるわけで。

それと、おそらく通常であればモザイクがかかっているであろう場面もモザイクが無かった点。これは英断だったと思いますね。

見たかったから、ってわけじゃないですよ。「ぼくのエリ」みたいに、モザイクが入ることでまったく印象が異なる場合もあるので、こういうところを極力そのまま使う、っていうのは大事だと思います。笑っちゃいましたけどね。主人公の性癖。わかるわかる、って。

わかるんかい!

ココが×

まず少し過激なシーンもあるので、お子様はご遠慮くださいね、というのが一点。

それと催眠療法っていうテーマもそうですが、一つ(若干ネタバレ気味ではありますが)思ったのが、あの結末からすると、オープニングのサイモンが説明をしているシーン、あれは禁じ手じゃないの、と思います。

俺が主人公で、これから始まる物語を説明してやるぜ、みたいな感じで、登場人物の見方を制限していく方法。ああいう姑息なやり方がすごく嫌い。なんかなー。

正々堂々と勝負しない感じが好きになれないんですよね。ダニー・ボイルは。まあ監督のせいではないかもしれませんが。

MVA

もうヴァンサン・カッセルこういう役ばっかだな、と思いつつ観てましたが、それはさておき今回はコチラの方に。

ジェームズ・マカヴォイ(サイモン役)

ちゃんと観たのは初めてですが、真面目そうな好青年だったり、「ああこいつやべーな」って感じだったり、なかなか使い分けがしっかりしていて良い役者さんだな、と。

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