映画レビュー1491 『パリタクシー』
今SNSはタイッツーを使ってるんですが、そのFFさんの一人が「ホールドオーバーズ」を観て「パリタクシーぐらい良かった」と言っていて元々ちょっと気にはなっていたので観てみることにしました。
パリタクシー
クリスチャン・カリオン
シリル・ジェリー
クリスチャン・カリオン
リーヌ・ルノー
ダニー・ブーン
アリス・イザーズ
ジェレミー・ラウールト
グウェンドリーヌ・アモン
ジュリー・デラルム
トマ・アルダン
アドリエル・ルール
2022年9月21日 フランス・ベルギー
91分
フランス・ベルギー
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

かわいいおばあちゃんが出てくる映画は間違いない。
- 施設に入るため、最後のドライブにタクシーを呼ぶおばあちゃんとそのために呼ばれた人生どん詰まり運転手
- 長いドライブ中におばあちゃんの語りを通して彼女の過去を振り返る
- 今の時代らしい社会性を説教臭くない程度に語る良いさじ加減
- ちんこを燃やされない男でいたいと誓いを新たに
あらすじ
想像通り、良い映画でした。それなりの大人には誰にでもおすすめできるタイプの映画かもしれません。
タクシー運転手のシャルル(ダニー・ブーン)はお金に困っているようで、映画開始早々に金の無心の連絡をしていたりと厳しい状況ですが、さらに「次の違反で免停」なので仕事自体終わりかねない窮地に追い込まれております。
そんな中、「一人の老婆を施設まで送り届けてほしい」と連絡が。
そもそも現在地からそのおばあちゃんを拾う場所までが遠いことからも渋るシャルルですが、もうメーター切っていいよと言われて受諾。お迎えにあがります。
待っていた女性・マドレーヌ(リーヌ・ルノー)は御年92歳、施設へ引っ越しするためのドライブということでいわゆる片道通行です。
ロングドライブなこともあって彼女は初恋から始まる自らの人生を語りますが、シャルルは興味もなく適当に相槌を打って聞いているだけ。
しかし次第に彼女の人生が非常に波乱に満ちたものであることを知らされ、少しずつ心の交流を重ねていくのでした。
あとはご覧くださいませ。
マドレーヌのかっこよさ
ダニー・ブーンがタクシー運転手役のコメディ、ってことでもう完全に「ぼくの大切なともだち」と一緒です。っていうかもうダニー・ブーンはタクシー運転手なんだな、としか思えない。
ヨーロッパの映画って割とこういうタクシーの出会いみたいな映画が多い気がしますね。「パリの調香師」もそうだったし。多いって言いつつ3つだけなんだけど。
92歳のおばあちゃんの壮絶な過去を観ながら現在の2人の姿を追っていく映画です。
よくある方式ではありますが、過去のエピソードは別の(当然若い)役者さんが演じる形で、一人の人生を追体験するような映画になっています。
マドレーヌを演じるリーヌ・ルノーはフランスの歌手兼俳優さんで、演じる役と少し被るような人生を歩んで来られた方だとか。
この手の役は大体演じる人の方が若干若いんだろうと思って観ていたんですが、なんと彼女はこのとき94歳でまさかのサバ読みですよ。役でサバ読み。2025年現在もご存命で今年97歳、スーパーおばあちゃんですね。映画でもそんな歳には見えないぐらい元気だし。
生まれた年は1928年、なんとあの某ミッキーマウスと同い年と言われればどれだけスーパーおばあちゃんかよくわかるんじゃないでしょうか。ハハッ
通しで観ていくと「たった一日ながら濃厚な時間を過ごしたおかげで距離が縮まってお互いが大事な存在に」というのは割とよくあるパターンでもあるし、取り立ててすごく良いわけでもない“形式”の映画なのになぜ心に響くのかというと、やはり描かれるマドレーヌの人生が壮絶で語られるだけの価値があると思えるから、ではないでしょうか。
初恋を経て別の男性と結婚するもその男性がクソ化してきたおかげで…とこれまた(前時代的に)よくあるパターンの夫婦でありつつ、そこでマドレーヌが取った行動によってその後の人生が非常に稀有なものになっていくのはなかなか見応えがあり、また今の時代から見返すと時代を先取りしているような問題提起や彼女の行動になっていて、「過去には珍しくなかった出来事を今から振り返ることで今生きている彼女の立ち位置を語る」ような作りがすごく上手な映画だなと思います。
それはつまり、マドレーヌと同じように虐げられてきた女性たちへの応援歌になっているんだろうと思うんですよ。
ここまでひどくはないにせよ、僕もいわゆるモロ家父長制的な明らかに上下関係を感じさせる両親の元で育っただけに、このマドレーヌの勇気とそれに対する人生の過酷さは母親と重ねてしまうような部分もあったし、だからこそ響くものがあったのかなと思います。
同じような扱いを受けていた女性たちがずっと「我慢してきた」ことを突破して切り開いてきた先駆者のようなポジションの人物としてすごくかっこいいんですよ。マドレーヌ。だから感情移入しちゃうんじゃないかな、と。
一方のダニー・ブーン演じるシャルルは彼女と過ごすことでまったく余裕のなかった日常を改めて見つめ直すような形となり、本来の人柄を取り戻していくかのような一日になります。
正直オチは(誰もが言っていますが)ちょっと出来過ぎで、そこがフィクション感を強くさせてしまう分もったいない気もしますが、一方で「人生はたった一日、一人との出会いで変わるもの」であるという意味では(ここまで劇的ではなかったとしても)十分可能性のある話でもあるし、こちらは僕と年齢が近いであろう役柄ということもあって羨ましさと“出会いの大切さ”を強く感じました。
この物語はマドレーヌがその年齢的なものもあってだいぶ優しいから上手く行った話でもあると思うんですよね。
最初の余裕のないシャルルの態度であれば、普通の人なら「じゃあ何も話さないわよ」でそのまま普通に送っておしまい、って可能性もあると思うんですよ。映画にはなりませんけど。
そこの扉を開いてくれたマドレーヌの存在はもう菩薩ですよ。さながら。
一方で、同じような出会いで人生が変わった2人の話である「パリの調香師」の方は、逆に乗る方の態度が悪くて決裂しかけますがそこを反省して先に進む話になっています。
こっちで重要なのは「反省」とそれを正直に伝える勇気、でしょうか。
結局どちらも“想像もしていなかった出会い”によって人生が変わった話なので、会社に行く以外は基本家から出ずに何でも済ませようとしてダラダラするだけの生活を送る自分は本当にダメだねと改めて思いました。泣きながら。
オチに不満はあれど…
オチのせいでもう一つ評価が上がらない面もある映画ではありますが、ただそのオチも無い話でもないかなとは思うんですよね。
「出来過ぎだろ」っていうのは当然思いますが、でも実際稀に出来過ぎな実話もあるわけだし。
これは創作だから不満が出ちゃうものだと思いますが、仮に実話ベースだよと言われると「すげーな」となっちゃうわけで、あんまりそこを突っつきすぎて全体の評価を下げてしまうのはかわいそうかなと。いや気持ちはすごくよくわかるんですが。
「映画はオチが大事」なのは間違いないですが、この映画に関してはオチはおまけみたいなものだと思います。
それよりも、過去を振り返りつつ語られるマドレーヌの人生そのものを今の時代から見てどう考えるか…が大事な映画なのかなと。
この話が不幸な終わり方をしたらかなりしんどい気はするので、その意味でもこのオチはある意味順当というか、出来過ぎだし想像通りだけどこれはこれで仕方がないかなと思います。
このシーンがイイ!
一緒にタバコ吸うシーン、好きですね。自分はタバコ吸わないけど。ご飯のシーンも素敵。
あとはやっぱりちんこ燃やしは戒めとして深く心に刻まれました。燃やされないように生きるぞ、と。
ココが○
やっぱりマドレーヌのキャラクターでしょうか。
演技含めてこの人がいるからこその映画になっていると思います。
ココが×
まあこれも順当にオチ…だとは思いますが上記の通り仕方のない面もあるので、オチそのものの良し悪しよりも「オチがこうならざるを得ない」そこまでの前フリの方が問題かなと。
MVA
これはもう一択でしょう。
リーヌ・ルノー(マドレーヌ役)
施設まで送ってもらうおばあちゃん。92歳。
上記の通り、実際は94歳ぐらいでの撮影ということでクリント・イーストウッドもびっくりの元気さ。
しかも実にチャーミングなんですよね。素敵でした。


