映画レビュー1265 『ウイスキーと2人の花嫁』
いかにも地味なんですが非常に自分好みの匂いがプンプンとしていたのでウォッチパーティの候補に挙げたら選ばれました。
ちなみにこれを鑑賞したの日の帰宅中に骨折したんですが、検査したのは翌週月曜日だったので痛みはありつつものほほんとチャットに参加しました。
もっと言えば自分でも「これ致命傷になるのでは…?」と思いつつさして痛みも感じないからと土日含めスプラトゥーンもゴリゴリにやってました。結果的に指が曲がらなくなったりしないだろうかと今から不安です。
ウイスキーと2人の花嫁
ギリーズ・マッキノン
ピーター・マクドゥガル
『Whisky Galore!』
コンプトン・マッケンジー
アンガス・マクファイル
『Whisky Galore』
コンプトン・マッケンジー
グレゴール・フィッシャー
エディー・イザード
ショーン・ビガースタッフ
ナオミ・バトリック
ケヴィン・ガスリー
エリー・ケンドリック
ブライアン・ペティファー
ジェームズ・コスモ
2017年5月5日 イギリス
98分
イギリス
Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

この手の映画でしか摂取できない栄養がある。
- 第2次世界大戦中、スコットランドのとある島での出来事
- みんな酒が好きすぎて酒がないと生きていけないと嘆いていたときに降って湧いた酒の供給可能性
- しかし規則に厳しい士官にバレるとヤバいので策を練る島民たち
- 期待通りのほんわかゆるコメで大満足
あらすじ
これちょっとオシャレ気取ってそれっぽいタイトルになっていますが、これ本当に邦題が良くないと思いますね。決して花嫁主体の話ではありません。
ちなみに原題を直訳すれば「ウイスキーたっぷり!」で非常にゆるくてバカっぽい感じがとてもマッチしているので原題のままでいいじゃんと思いました。
世間的評価は結構低いっぽいですが、僕は期待通りに好きなタイプの映画で大満足しました。っていうか世間厳しすぎだろ。
舞台は第2次世界大戦中、スコットランドのとある島。結構狭い島らしく、島民みんなが顔見知り的な感じですね。
スコットランドらしく島民の多くがウイスキー狂とも言えるぐらいにウイスキーが大好きなんですが、戦争の煽りで酒の供給が絶たれてしまい、絶望。何もやる気が起きねーぜ状態です。
そんな中、島の近くで一隻の船が座礁。その船の積み荷に大量のウイスキーがあるらしいぞ…と聞いた島民は「命の水がそこに!!」と色めき立ちますが、厳格で島民から煙たがられる存在のワゲット大尉(エディ・イザード)が目の上のたんこぶとして立ちふさがります。
いかに彼にバレずにウイスキーをゲットするか…思案した島民たちは作戦を立て、決行。首尾よく持ち帰りますが、しかしそのまますんなり祝杯とは行かないようで…はてさてどうなることやら…!
全部好き
全体的に割と登場人物の扱いがフラットな映画で、一応主人公はタイトルにある「2人の花嫁」のお父さんにあたる郵便局長のジョセフになると思いますが、しかし彼のいないシーンも多く、言ってみれば「ウイスキーが好きすぎる島民」という総体が主人公というイメージ。
「(傍からすれば)どうでもいいことに熱中する田舎の人たち」が主人公のイギリス映画…ということで完全に「ウェールズの山」っぽさがあり、その時点で僕はもうたまりませんでした。もう本当にこういう映画大好き。意地悪な人はいても悪人は出てこない感じ。
なおこの映画は元となる事件があり、その事件を元に書かれた1947年の小説「Whisky Galore(ウイスキーたっぷり)」をさらに映画化した同名作品のリメイクにあたる作品だそうで、なんでもとある記事によるとプロデューサーが少年時代からそのオリジナル版のリメイクを夢見ていたらしく、いよいよその夢を叶えるぞとなった段階で当時の事件を実際に知っている人たちに入念な取材を繰り返し、10年の歳月をかけて製作されたという熱意の塊のような映画です。
でも出来上がった作品はゆるくてほのぼのしちゃってるのが面白い。そしてそこが良い。
まーとにかくそこかしこに漂う「スコットランドの田舎島」感がたまらなく、衣装のかわいさや風光明媚なロケーション、そしてそれらを盛り上げる“それっぽい”バグパイプの音色が響く劇伴と全体通して雰囲気が最高でした。
登場人物たちもみんなどこかのどかで緊迫感がなく、第2次世界大戦中の話とは思えないぐらいにゆるい。一言で言えば「ユーモラス」って感じ。その辺もまたイギリス映画っぽく、本当に好きですこの雰囲気。
また「花嫁」がタイトルにあるように結婚式も出てきますが、当然狭いコミュニティなので華美で豪華な結婚式なんてあるわけもなく、手作り感溢れる「村の結婚式」という感じなんですがこれがまたものすごく好きで。余談ですがふと個人的に「憧れる結婚式」として記憶に残っている「イン・ハー・シューズ」の結婚式を思い出しました。それぐらい雰囲気が良かった。
混ざりたさしかない
一応“敵役”とも言える存在はいるものの、彼は彼で「空気が読めない仕事人間」なだけで悪いやつではないし、なんと言うか毒っ気のない物語ですね。
「酒がないなんてやってられっか」という超ダメ人間的な発想に島民の大半が加担して小さい悪事を働く様は、先生に急用が入って自習にされたけど勉強なんてやってられっかと遊んじゃう学生たちのようなかわいらしさがあって、そこがもうどうにも愛すべき映画だなと思います。
こういう話を目くじら立ててここが良くないだのつまらないだの言ってるのはそういう人こそつまらないやつだなと思いますよ。
ダメ人間としてはこれほど混ざりたい話はありません。今の自分がこの場にいたら、ウイスキーなんてそんなに飲まないくせにノリノリで計画立ててたと思う。
そういう「みんなで一丸となって何かをやろうとする」けどそれがすごくバカバカしい内容、っていうのが最高じゃないですか。
それこそ「ウェールズの山」もそうですが、傍から見ればどうでもいいことなんですよ。それぐらい我慢しろよとか受け入れろよって話なんですが、でも当人たちにとっては大事だし、そのために力を合わせる姿ってすごくかわいいじゃないですか。何なら童話っぽくもあって。
そういう世界観を見せてくれる映画って実はそんなに多くないと思うし、この雰囲気が出せるのはやっぱりイギリスのコメディだと思うので、そういうのが「好きだなぁ」と気付いた自分のここまでの歴史を踏まえた上でたまらんな、という映画でした。
繰り返しますが世間的な評価はかなり低いです。でも僕はかなり好きです。なんならまたすぐ観たいぐらい好き。
こういう映画が評価される世の中であってほしいなと思いますけどね…大作や手に汗握る映画も好きですが、そういう映画ばっかりじゃ疲れちゃいますからね。
それこそ週末ウイスキー片手にのんびり観るには最高の映画だと思います。酔っ払って寝ちゃっても良いでしょう。この島民たちなら「途中で寝ちゃったな! ワッハッハッハッハッ」で許してくれると思います。
このシーンがイイ!
(大尉に報告されて)作戦の障害となるのではと思った下士官を襲いに行くシーン、大好き。最高。
ココが○
突き詰めると雰囲気でしょうか。見た目も耳も良すぎる。話のゆるさも最高。
ココが×
エッジが立った話ではないので合わない人は合わないのかもしれません。結局この島民たちを愛せるかどうか、なのかも。
MVA
結構おじさん爺さんにいい人が多かったんですが(あと旗振るキッズ)、無難にこの人に。
グレゴール・フィッシャー(ジョセフ・マクルーン役)
一応主人公。島の郵便局長で花嫁2人のお父さん。
すごい雰囲気の良い爺さんだなぁと思ったら「ラブ・アクチュアリー」でビル・ナイのマネージャーをやってた人でびっくり。全然イメージ違う! あと「ターゲット」にも出てたよね!?
ひげがあるとこうも変わるか、と思いつつも好々爺感が最高でした。