映画レビュー1020 『オートマタ』
本日(この映画を観たとき)より世の中は4連休、せっかくなのでインド特集でも…! と思ってTSUTAYAに行ったところメモっていた観たいインド映画が何一つ置いていないという体たらくにて即帰宅、やむなくネトフリ終了間際シリーズと相成りました。
そう、結局いつものやで。
オートマタ
ガベ・イバニェス
ガベ・イバニェス
イゴール・レガレタ
ハビエル・サンチェス・ドナーテ
アントニオ・バンデラス
ビアギッテ・ヨート・ソレンセン
ディラン・マクダーモット
ロバート・フォスター
ティム・マッキナリー
メラニー・グリフィス
2014年10月17日 ブルガリア
110分
スペイン・ブルガリア
Netflix(PS4・TV)

最高の下地に建てた建造物がドイヒー。
- ブレードランナーの影響を色濃く受ける近未来SF
- いわゆる“AIの反乱”を予感させる展開に期待高まるも…!
- 最終的には広げた風呂敷もそのままになんとなく終了
- 息切れ、失速、期待外れの悲しい終盤
あらすじ
スペインの近未来SF、オートマタとくるとどうしても「EVA」が浮かんでしまうので、評判がイマイチなのは事前に知っていたものの、もしかしたら良い映画なんじゃないか…と一縷の望みを託して観始めまして、中盤までは「どうよいいじゃないのこれ! どうよどうよ!」とテンション上がり気味に観ていたものの、終盤がもうどうでもいい展開のグダグダ感で幕引きというなんとも残念な映画でございましたよ…。
舞台は2040年代、太陽が暴れん坊将軍と化したことで地球はほぼ砂漠化してしまい、人口の99%以上がお亡くなりに。
そんな状況の中、「ROC社」が人類の希望とするべく環境復元のためのヒューマノイドロボット「ピルグリム7000型オートマタ」を開発。砂漠化を止めようと活動を開始するも結局失敗してしまい、オートマタは生き残った人類たちの単純労働補佐程度の存在に追いやられてしまいます。
彼らに例外なく埋め込まれている、最も重要かつ単純な行動原理となる“プロトコル(規約)”は2つ。
1.生物に危害を加えてはならない。
2.自他への改造を行ってはならない。
しかしある日刑事が発見したオートマタは自らを修理していたため、ROC社の保険調査員であるジャックが調査に乗り出します。
“あり得ない”はずの規約違反を犯すオートマタの存在を信じない上司に調査を命じられ、本人も同様にあり得ないと信じていたところに目の前で自らに火を付けるオートマタを発見したジャック。
裏で改造する“もぐり”の技師がいるに違いない…と踏んだジャックは一人調査を進めますが…あとはご覧ください。
ブレラン好きなら滾るオープニングも…
オープニングからしてもう完全にブレードランナーの世界観で、「パクリだろ」と言われたら100%反論できないぐらいのブレラン感が凄まじいビジュアルでした。まあパクリと言うよりリスペクト、監督その他スタッフが相当好きなんだろうなと思います。
話としては「絶対に破られるはずのない設定を破る個体が登場することで人間の危機を想像させる」、よくある“AIの驚異”を扱ったものの一つと言えますが、その「なぜ破られるはずのない設定を破る個体が登場したのか」辺りの理由についても(ありふれたものなのかもしれませんが)なかなか面白いもので、こと設定と世界の作りに関しては相当いい線行っている映画だと思います。
実際中盤まではかなり楽しめたし、「こっちの方がブレードランナーの続編としてふさわしいんじゃね?」と思いながら観ていたぐらいには期待も膨らみ、ビジュアル含めて本流(ハリウッド)外の映画とは思えないぐらいにレベルが高く感じられた映画だったんですが…しかし。
やっぱり映画はオチだよな〜と思わざるを得ない、終盤の展開のお粗末さったらなかったですよ。
いや…「お粗末」は少し言葉として印象が違うかもしれません。別に手を抜いているわけでもないだろうし、きちっと描きたいことを描こうとしているのは伝わりました。
ただその内容が非常に残念なもので、いろいろ風呂敷を広げて気になる要素を印象づけておきながら、最終的にはどれも回収されずに「アレどうなったんや」のオンパレードですよ。
上に「設定の良さ」について書いていますが、要はその良い設定に応えるだけの強い回答を用意していないんですよね。映画の中で。
「俺はもうそりゃ走り幅跳びなら8mは跳べるぜ」と豪語する男、実際見た目的にも跳べそうなぐらい身体の作りもフォームも理論も良さげなんですが、結局最後まで跳ばずに飲み行っちゃう、みたいな。このガッカリ感ったらないですよ。「えー」出ましたね。久々に。「なんとなく薄々感じてたけどここで終わりかよえー」って。
中盤まではかなり「人類が未だに漠然と感じているAIに対する不安感」をうまく利用した世界を作って期待させるものの、残念ながらそれに対する納得の行く答えを見つけられなかったのか、物語はそっちの方に進まずにどうでもいい話を進める方にシフトしてしまい、結果観客が興味のある内容については一切触れずじまいでどうでもいいエンディングを迎えて観客涙目、という。早い話が“逃げた”ようにも見えました。
もーなんなんだよーこれまじでさー。めっちゃ楽しみにしてたのにさー。なんで回答を用意しないのかなー。
正直採点的には5.0でも良いぐらいのガッカリ感が半端ない鑑賞だったんですが、ただそれでも中盤までのワクワクした楽しみとビジュアルの良さを切り捨てるのは忍びなく、サービスで0.5上げましょうという感じ。
惜しいなぁ…本当に惜しい映画だと思う。脚本に一人、この手の話をうまくまとめられる人物がいてくれたら…きっとかなりの良作に化けていたのではないかと思います。残念。
「広げた風呂敷をうまく畳めた」AI映画の例としては、やっぱり「エクス・マキナ」なんだろうと思います。逆に言えば、展開が展開であればあれぐらいの傑作になり得るぐらいのベースはできていたと思うのでつくづく惜しい。
とにかく終わったあとのガッカリ感がすべて
主演はアントニオ・バンデラス、渋い上司にロバート・フォスターと悪くないコンビだったのに…本当に残念な映画でした。これは悪いバンデラスの一例と言えるでしょう。
バンデラスは脚本を読んで興味を持ち、プロデューサーも兼任したそうですがマジでこの脚本だったの? と問いたい。結末違ったんじゃないの、って。
考えオチとか続編に委ねます系とか極端に悲劇的でキツい終わり方のほうがまだ良かった。何一つ答えを示されずになんとなくで終わるこの感じ、もしかしたらデ・ニーロの「ナイト・アンド・ザ・シティ」のときに感じたガッカリ感と近いかもしれない。
そんなわけでオススメはできません。ただバッサリ捨てるにはあまりにも惜しい、上質なイクラをトイレに落としたような感覚です。わかりますかね!?
拾ったところでもう洗って大丈夫って話でもないんだけど素材の良さだけは忘れられないこの感じ。わかりますかね!?
このシーンがイイ!
雰囲気は本当にとても良かったんですが、オープニングの「オートマタ誕生から現状に追いやられるまで」を静止画で見せていくスタイルは良かったですね。説明しすぎずに理解させてくれる感じが。
ココが○
AIの進化について語る内容が将棋ソフトみたいな話で面白いというか、ありそうな感じなのが良かったですね。本当にそうなりそうだな、って。
ココが×
ネタバレ項に散々書いたのでもうお疲れですよ。とにかく期待させといて結局それかよ感がすごい。
MVA
まああんまりピンとこなかったんですが、この人かな。
ロバート・フォスター(ロバート・ボールド役)
通称ボブ。ジャックの上司。
ロバート・フォスターは去年観たジョン・ホークスの2作で完全に「当たり映画役者」的な期待感を持つ人になってしまったので、今回も「ロバート・フォスター出てるんじゃ良いんじゃない!?」と期待させてくれました。結果はお察しですが。
渋くて善人感があり、落ち着ける存在感も良かったですね。
まあ映画自体が微妙なときは渋い脇役選んでおけば間違いないってやつですよ。