映画レビュー0809 『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』
またネトフリ終了間際シリーズに戻りますが、これねー。ずっと観たかったんですけどねー。ほんといまさらのご紹介だとは思うんですが。
ただどんな映画かはイマイチ知っていなかったので、ロードムービーと知ってウヒョッたんですが…。
※イラストが下手すぎてティル・シュヴァイガーのアゴが伸びてますが、
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

荒削りだから逆にイイ。絶妙な古さもまたイイ。
- 病院で知り合った男二人が海を見に開き直った旅を送る
- 全体的に軽めで上映時間も短く観やすい
- 展開の拙さも“屈託のない”素直な雰囲気で受け入れやすい
タイトル的にL⇔Rの歌を思い出す(古い)んですがちょっとタイトル違ったよ、っていうね。
「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」っていうのはですね、まあそのまんまなんですが「俺たち天国への扉を叩いてる(ぐらい死が目の前)んだぜ」というような意味で主人公のマーチンが言うセリフが元になっています。さらに元をたどればボブ・ディランの曲名から取っているそうで。
主人公の二人は元々友達というわけではなく、各々がたまたま同じタイミングで同じ病院に診察に来たらどっちも深刻な病気でした、ということで同じ病室に入院させられるところからお話はスタート。
ティル・シュヴァイガー演じるマーチンは結構な大きさの脳腫瘍で「いつ死ぬかわからない」状態、ヤン・ヨーゼフ・リーファース演じるルディは末期がんでこれまたいつまで保つかわからない、と。
二人の入院する病室になぜか置いてあった酒を一緒にあおって話をしていた時、ルディが突然「海を見たことがない」と告白。マーチン曰く、天国では海について語るのが流行っているそうで、見たこと無いお前は天国で会話に入れないぞ、それでいいのか? ということで二人は病院を抜け出して海を見に行くことに。
彼らが盗んだベンツはその時たまたま病院に訪れていたマフィアたちのもので、大切にしていたボスは大激怒、下っ端二人に命を賭けて見つけて来いと厳命。さらにお金のない二人は(どうせ死ぬんだし的な雰囲気もありつつ)強盗にも手を染めたおかげで警察からも追われる身となり、マフィアと警察双方に追われながら果たして彼らは海を見ることができるのか…? というお話です。
犯罪に手を染めながらの男二人の逃避行的な展開は「テルマ&ルイーズ」っぽくもあり、また元々は友達でもない二人が友情を育んでいくコメディ仕立てのロードムービーという面では「ミッドナイト・ラン」っぽくもあるし(おまけに主人公の名前が「マーチン・ブレスト」なので絶対リスペクトしてるはず)、ちょっと軽めに笑わせつつ最後はしんみりの90分、という展開と長さ的には「ファンダンゴ」っぽくもあって、ちょうどこの映画が作られる少し前の名作たちのエッセンスを取り込んだかのようないいとこ取り的な映画だと思います。
さらに言えば死を目前にして「叶えたい願い」のリストを作る辺りは(後発ですが)「最高の人生の見つけ方」っぽいし、いろいろ良い映画の雰囲気を感じる映画でしたね。とは言ってもパクり感があるわけでもなくて、すごく真っ直ぐな作りの映画だと思うんですよ。
真っ直ぐ、っていうのはある意味では不器用でもあるし、素直すぎて捻りがないようにも見えるんですが、ただその真っ直ぐな感じがちょっとベタだったり嘘臭い展開だったり、想像できる展開でも許せちゃう純粋さに感じられて、そこがすごく良い映画だなと思いました。
ハリウッド映画じゃないから…なのかはわかりませんが、ちょっといろいろ拙い感じはあるんですよ。荒削りで、ゆるくて、そんなうまく行かねーよみたいな部分もすごくあるし。
でも…イイんだよなぁ。むしろ「だからイイ」のかなぁ。
「世の中そんな簡単じゃないよ」と思えるような意見も、裏のある人が言えば「今さら何言ってんの?」だけど、すごく素直で良い子が言うと「そうだね」って思えちゃうじゃないですか。そんな感じなんですよね。なんとなく。
別にこの映画がすごく媚を売ってるわけでもないんですけどね。中盤ぐらいまでは割としょうもないような内容で捻りもないし、「そこまで良くはないかもなぁ」と思いながら観ていたんですが、ただそれでも最初からずっとどことなく全体的に映画に対する愛情とか熱意みたいなものが伝わってくる気がしたんですよね。どこがとか全然言えないんですけど。
やっぱりこの前の「エンド・オブ・ザ・ワールド」も似たような面がありましたが、「死の宣告を受けてもうすぐ人生が終わる二人」っていうベースが愛着を持たせてくれた部分は少なからずあったような気がします。
舞台装置としてもかなりベタだとは思うんですが、それでもやっぱり「もうすぐ死ぬから最後にやりたいことを」っていう前提はいろいろ心情を推し量っちゃうし、それ故に感情移入もしちゃうんだと思います。特に僕はこの手の話に弱いんでしょう。
最初に「ファンダンゴに似てる」部分があると書きましたが、あの映画もモラトリアムが終わりを迎える一時期のお話で、終われば別れが来ることはわかってバカ騒ぎしている人たちが主人公だったじゃないですか。
この映画も同じで、人生最後の期間をともに過ごすことで唯一無二の親友となっていく二人が、同時に残り時間の少なさも十分わかっていて、でもそれは口にせずに目標を見て残り僅かな時間を過ごしていくわけです。
もうたまらないじゃないですか。これだけでも。
「海を見る」という目的と、他にそれぞれの“最後にやりたいこと”も実現させようと行動しつつ、でも後ろにはマフィアと警察が追ってきていると。でもそれ以上にいつ迎えるかわからない死の予兆が常にある、と。
こんなキツイ状況でも、二人は開き直ったように旅を楽しみ、出来る限りのことはしようと最後に燃え尽きようと突き進みます。いやー、好きだなやっぱりこういう話。
果たして二人の旅はどういう終わりを迎えるのか。終盤のまとまりっぷりはなかなか見事だと思います。90分弱でこの後味…これは良い映画だ!
このシーンがイイ!
やっぱりラストになるのかな。あと一連のキャデラックのシーンもすごく好き。
ココが○
90分弱でこれですからね。人にも気軽にオススメしやすいし、すごく良い映画だと思います。
あと海無し県在住者としては、「海を見に行く」っていうテーマがもう根源的にたまらないです。これって海のそばに住んでる人はあんまりわからないものなのかなぁ。
ココが×
最初に書いた通り、荒削りな部分は結構あります。もう少し丁寧にとか、もう少しリアルな話のほうが良いんじゃないかとか。
ただそれも込みで「そうじゃないから良い」映画なんだと思うんですけどね。サラッとしてるけど熱い、そんな映画。
MVA
割とクセのある脇役のイメージが強かったティル・シュヴァイガーがこんな良い映画に主演で出ていた(おまけに脚本も)のは結構びっくり。
まあ普通に考えて二人のどっちかだと思うし、どっちもとても良かったんですが…こっちの方に。
ヤン・ヨーゼフ・リーファース(ルディ・ウルリツァー役)
僕は完全にルディタイプなので、結構重ねて見ちゃう部分がありました。
途中で「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」するのは常にマーチンだったので、なんとしても助けようとする彼の姿、そして終盤の感情の高ぶりっぷりが良かったかなと。
でもどっちも良かったですけどね、ほんとに。


