映画レビュー0821 『EVA〈エヴァ〉』
現在8月末なんですが、この時ネトフリは配信終了作品が(邦画・ドラマ他含めてですが)300本弱という暴挙に及んでいてですね、こりゃー困ったぞということで悩んだ結果、まずこれだなということで選んだのがこの一本。
いい出会いの予感がありつつさてどうなんだ…!
EVA〈エヴァ〉

小説のように綺麗な世界が織り成す極上の切な系SFファンタジー。
- 終始漂う儚い雰囲気が気分を盛り上げる
- キラキラしすぎていない近未来感が素敵
- 物語はありがちと言えばありがちながら、仕立ての良さで素晴らしい作品に
これねぇ…。やられましたねぇ…。久々にやられました。「うわー! こういうの好きだー!(涙)」って感じ。当たりも当たり大当たり、よくぞ数ある配信終了の中からこれを選んだと自分で自分を褒めたい(by 有森裕子)ってやつですよ古いね。
舞台は近未来、雪深い地域のお話。スペインにもこんな寒そうなところあるんですね。
この世界ではもうロボットがかなり一般的になっていて、まあ早い話がブレードランナー的な世界とでも言いましょうか。いわゆるヒューマノイド的なロボットも(一般に広まっているかは不明ですが)かなりのレベルで導入されていて、人間と共生する社会になっているようです。
主人公のアレックスはそのロボット開発の天才と言われるような存在で、大学で教えているロボットに関する講義の内容もほぼ彼が作り出した理論がベースになっているような、いわゆる第一人者というお人。まだ若そうですけどね。近所にユアン・マクレガーに似た外人さんが引っ越してきたんだよ的な雰囲気のダニエル・ブリュールが演じます。この人他の映画でもたまーに見る気がするな…。
彼は10年前にいろいろあって故郷を出たんですが、「今度こそ子供型ロボット(ヒューマノイド)を完成させたい」という大学に勤める旧知の科学者・フリアに呼び戻され、久しぶりに故郷に戻ります。
どうやらこのヒューマノイド、ほぼ8割方ぐらいは完成しているので、あとは“天才”アレックスに頭脳の部分をきっちり仕上げて欲しい、というようなオファーなんでしょう。
依頼を引き受けるも「大学で仕事はしたくない」とかつて住んでいた今は誰もいない実家に戻り、大学から派遣されてきたおっさんヒューマノイド・マックスと暮らしながら研究を開始します。
このマックスを開発したのが彼の兄で同じロボット科学者でもあるダヴィッドで、そのダヴィッドの奥さん・ラナは…どうやらアレックスともいろいろあったようですがこの辺は割愛。
この世界のヒューマノイドは、まず元となる人間をベースにして脳のプログラムを作るようなんですが、定石通りに少年候補を何人か見繕って勧めるフリアに対し、アレックスは「みんなつまらない」と一蹴。その後街で見かけた少女に惹かれたアレックスは彼女をモデルにしてロボットを作ろうと考えるんですが…あとはご覧くださいませ。
やっぱりちょくちょく書いてますが、オープニングで「ん、これはちょっと期待できそうだぞ」と感じる映画は大体裏切らないんですよね。
ちょっと幻想的で儚そうな雰囲気のオープニングに期待高まる中、描かれる「近未来」がまずとても素晴らしくて一気に惹き込まれました。
見た目はほぼ現代と一緒、でも「お金かけないようにそうしている」風にも見えず、絶妙に“今の延長線上にあるリアルな未来像”を感じさせるビジュアル。
アレックスは常に「(この世界で)唯一の自律型ロボット」である猫ロボットを連れているんですが、これが絶妙に古いポリゴン風の角ばったデザインで、このアナログ感、手作り感を感じさせる未来像のセンスがもう抜群。一気にたまらんゲージも上昇ですよ。
一方、彼の家に派遣されるヒューマノイド・マックスは見た目ほぼ人間と一緒で、実際演じているのも人間なんですが…こっちは逆に絶妙に“不気味の谷”を感じさせる作り物感を漂わせていて、そこがまた得も言われぬ不安を抱かせてくれてイイ。
やっぱりAI的なものはトラウマですからね。映画好きにはね。HAL9000からずっと。
まあそんな手作り感溢れるロボットも完璧に見えるロボットも出てきつつ、家の設備(ドアとかPCとか)はちょっと「マイノリティ・リポート」や「アイアンマン」を感じさせるUIデザインになっていて、これまた「今の延長線上」っぽいリアリティがあってすんなり入っていけます。もうこの雰囲気からして期待感がすごい。
一応ベースはSFではありますが、描かれるのはやっぱり人間関係が中心になっているので、どうしても僕は同じSF+人間関係の傑作「ガタカ」を思い出しちゃいましたねぇ。話の内容は全然違いますが、全編漂う不穏で不安定な雰囲気、儚さを感じさせる作りにもうたまらんぞと。終始期待は膨らむばかり。
この映画では主人公のアレックスと彼の兄、そしてその奥さんとの三角関係に加え、アレックスがロボットのモデルとして見出した少女・エヴァの人間模様が物語を紡ぎます。詳しいことは書きません。あとは観てください。
はっきり言ってしまえば結末はある程度読めるし、「まあそうなるよね」という話ではあるんですよ。ただそこに至るまでの世界観の積み上げがすごく上手だし、「わかっててもグッと来る」セリフのうまさも光っていたと思います。
正直(偏見ですが)スペイン映画でこんなファンタジックな素敵SFが作られるとは思っておらず、ただただすごいなと感動。物語そのものよりも、映画の世界の作り方の巧みさが上積みされて感動したようなイメージでしょうか。
これ、もしかしたら今言われているような脅威論とは別の形の「人間とAIの問題」を描いた映画なのかもしれません。そしてこの映画で語られる問題の方がより生々しく、悩ましいもののような気がします。
リアルな未来像の先に描かれる人とロボットのつながり、そしてずっと変わらない男女の問題…シンプルなストーリーではありますが、しっかり押さえるべきところを押さえた「感情のSF」ですね。
もう観終わった瞬間に大好きな映画に仲間入りしました。ブルーレイ超欲しい。
このシーンがイイ!
ラストシーンかなぁ…。セリフがもう100点満点ですよ。あのセリフが。
ブワッと来ました。鳥肌。
ココが○
やっぱり世界観の描き方が一番でしょう。無駄に未来ミライしていないというか。本当にこうなってそうというリアルSF感。
地味ながらニャーンロボの存在も大きかったと思います。あのロボ超欲しい。
ココが×
上にも書きましたが、物語自体はそんなに珍しいわけでもないし、展開が読めないわけでもないので、人によっては「んー、まあそうだよねイマイチ」みたいな人もいそうです。
それでもその物語を最大限魅力的に見せる世界の作り方と演技、セリフの巧みさでうまく化粧をしていると思います。
なのである意味では好き嫌いが分かれる映画なのかもしれません。僕は超好きですが。おそらく素直な人ほど好きになれる映画だと思いますね。僕は素直ですからね。ご存知。
MVA
ダニエル・ブリュールの弱さを感じる雰囲気も、ヒロイン的存在のマルタ・エトゥラの綺麗さも良かったです。エヴァを演じたクラウディア・ベガの小悪魔少女っぷりもとても良かったんですが…一番印象的だったのはこの人なんだよなぁ。
ルイス・オマール(マックス役)
アレックス宅に派遣されたヒューマノイド。
この人の「不気味の谷」感、すごいんですよ。もちろん後から加工してそう感じるように見せてる部分も大きいんだと思いますが、でもなんかね。絶妙に気持ち悪いんですよね。そこがすごく良い。
彼の存在感がこの未来感にかなり寄与していたのは間違いないところで、素晴らしい演技だったと思います。


