映画レビュー0562 『俺たちに明日はない』

また結構古い映画ということで。最近古い映画が続いていますが、たまたまです。そしてこれまた超有名作。

俺たちに明日はない

Bonnie and Clyde
監督
脚本
デヴィッド・ニューマン
出演
ウォーレン・ベイティ
マイケル・J・ポラード
エステル・パーソンズ
音楽
チャールズ・ストラウス
公開
1967年8月13日 アメリカ
上映時間
112分
製作国
アメリカ

俺たちに明日はない

ある日、ウェイトレスとして働くボニー・パーカーは、自宅の前に停めてあった車を盗もうとしている男を見つけ、声をかける。「強盗で刑務所に入っていた」と話す男に興味を持ったボニーは、彼についていき、彼をそそのかして強盗を働くところを目撃する。やがて二人は強盗を繰り返し、全米でも有名な犯罪者として名を馳せていくのだが…。

この時代特有の空気感を味わいましょう。

7.0

「俺たちに明日はない」というタイトルから「明日に向って撃て!」的な想像をしていたんですが、原題は「ボニー&クライド」。そう、あのボニーとクライドのお話だったんですね。

恥ずかしながら映画のタイトルとしてこの映画がこの二人の話である、ということは知らなかったんですが、ただボニーとクライドという二人の“有名人”についてはもちろん名前は知っていたので、俄然興味が湧いたというどうでもいいお話からスタート。

至って平凡なウェイトレスとして暮らしていた若い女子・ボニーが、一人の男に興味を持ってしまったがために一緒に道を踏み外していくというお話。いわゆる“アメリカン・ニューシネマ”の先駆け的な作品とされているらしく、なるほどこれはアメリカン・ニューシネマだな、とオウム返しの感想を持つに至りました。

アメリカン・ニューシネマとはなんぞや、というウンチクどうこう以前に、確かにこの時代、70年代辺りのアメリカ映画にはこういう雰囲気、こういう価値観がよく見られるので、この時代のアメリカ映画の空気感が好きであれば、まず問題なく楽しめる映画だと思います。

フツーの女性が気付けば逃げ続ける以外に道がなくなっていた、という姿は即「(全然後に作られる映画ですが)テルマ&ルイーズ」を思い出したわけですが、まさにあの感じの、後戻りできなくなり、罪の意識も薄いまま日々を過ごしていく刹那的なストーリーは何となくいろいろと彼らの心情を“察し”たくなる哀愁のようなものがあり、まあなんとも言えない味わいがありました。

当然ながらアメリカン・ニューシネマだし、実話ベースでもあるので、ラストはなんとなくこうなるだろうという予測はつきます。予測はつくんですが…それがまた結構予想の上を行く展開だったもんで、はー、すごい時代だな…と時代について思いを馳せざるを得ない内容でもありました。

彼らのメインとなる稼ぎは銀行強盗(最近銀行強盗モノばっか観てるな)なんですが、当然ながら今時銀行強盗なんてそうそう簡単にできるものではないし、警官に囲まれても逃げおおせるようなザルっぷりはいかにもこの時代っぽく、なかなか味があります。その上、劇中ではあまり語られませんが、彼らは実際に「凶悪犯」というよりは一種のダークヒーローのような存在になっていたらしく、あまり世間からの風当たりも強く無さそう。この辺がとてもとても時代性を感じる部分で、とんでもない犯罪者が主人公でありつつも、なんとなく憎めない、人間性と時代に対する郷愁みたいなものを感じるのが面白いところですね。

劇伴もなんとなくのどかなカントリー調が多く、深刻な犯罪者という雰囲気はまったくありません。この辺で現実での彼らの印象を表現している面もあったんでしょう。

ただ、でも観てるとやっぱり彼らはアホなんですよね。とんでもないアホで。調子乗っちゃってる感じも非常に残念な人たちな上に、良くも悪くもあまり“主人公補正”みたいな形で人間像を良くしてもいないので、そこまで感情移入できなかったところが、世間に対する表現としては(犯罪者を美化するのか! みたいな批判を避ける意味で)良心的な気もしつつ、映画的な面白さで言えば残念な気もします。

この辺は「狼たちの午後」の方が、アル・パチーノのうまさも手伝ってだいぶ感情的には応援したくなる感じでした。あっちは誰も殺していない、というのもあるかもしれません。本当に普通の兄ちゃんだったしね…。

まあ、こちらもちょっと素行の悪い連中に普通の姉ちゃんがくっついただけ、ではありますが、興味本位でくっついて行ったら一気に悪の仲間入り、という怖さも感じます。(ただ、現実ではボニーも元々結構悪かったようですが)

兄貴夫婦もびっくりするほどストレートに犯罪に加担する頭の悪さがどうなんだろうと思いましたが、多分この頃の治安の悪いアメリカの田舎出身だとこういう人たちも珍しくなかったんでしょう。コトの重大さに気付けない頭の悪さがとても悲しい…気はしましたが、まだ締め付けがゆるかったであろうこの時代であれば、ちょっとやんちゃならこうなっちゃうのも無理はないのかもしれません。

映画としては、さすがに60年代なので古さも感じるし、テンポも特に良くはないし、深い描写もなくダラダラと彼らの活動と人間関係を眺めるだけ、なので、今の時代にいきなりこの映画を観よう、となると少し退屈かもしれません。ただ、細かい部分はフィクションとは言え、現実にいた二人のお話であるということを考えると、やっぱりいろいろと考えさせられる部分はあるように思います。

それとやっぱり、映画ファンとしては“アメリカン・ニューシネマの先駆け”という部分に価値があるのは間違いなく、それを最も顕著に感じさせてくれるラストシーンはやっぱり胸に刺さる何かがありました。

現代的な感想としてまとめれば、「古い映画っぽい退屈さ」はさすがに感じる面があるものの、この時代特有の空気感という意味では相当いいものがあるので、好きな人は好きなハズ。なかなか面白かったです。

このシーンがイイ!

ラストシーンが一番ですが、そこを除けば、もう本当にどうでもいいシーンですが、“33歳”のところ。あの間、素晴らしい。

ココが○

やっぱり実在する人物のお話という点でしょう。この二人の関係がこのままだったのかはわかりませんが、いろいろと…面白かったです。

ココが×

やっぱり古い映画の宿命ですが、中盤はちょっと退屈な気がします。もうちょっと短めにまとまっていれば…。

MVA

ジーン・ハックマンは久しぶりに観て嬉しかったんですが、彼らしからぬ平凡な役だったのが少し残念。それはさておき、この方に。

フェイ・ダナウェイ(ボニー・パーカー役)

出たての頃のようですが、まーかわいい。

フェイ・ダナウェイの出ている映画は良い映画が多い印象。さすがに演技も良かったし、文句ありません。

ちなみに相方のウォーレン・ベイティもイケメンでなかなかでしたが、シャーリー・マクレーンの弟さんだとか。びっくり。

余談ですが、2017年アカデミー賞で作品賞取り違えのミスが発生して話題になりましたが、その時の司会がこの主演二人です。明日どころか数十年後があったんだね、良かったね。

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