映画レビュー1319 『暗くなるまでには/いつか暗くなるときに』

JAIHOにタイ映画が来たら特に調べずに無条件で観ないとと思っております。なので特に調べずに観ました。

暗くなるまでには/いつか暗くなるときに

By the Time It Gets Dark
監督

アノーチャ・スウィチャーゴーンポン

脚本

アノーチャ・スウィチャーゴーンポン

出演

アーラック・アモーンスパシリ
アピンヤー・サックジャルーンスック
アッチャラー・スワン
ワイワイリー・イティヌンクン

音楽

Wuttipong Leetrakul

公開

2016年12月8日 タイ

上映時間

105分

製作国

タイ・オランダ・フランス・カタール

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

暗くなるまでには/いつか暗くなるときに

さっぱりわからん。

3.0
「血の水曜日事件」当時参加していた作家にインタビューする監督
  • インタビューから始まるドキュメンタリーっぽい映画から話は脈略無く飛ぶ
  • ストーリーはほぼあってないようなもので、アート作品としての映画に近い印象
  • 最終的に一つに収束していくような仕掛けもなく、ただ散漫に細切れのエピソードが続く
  • しかし世間的評価は高く、震える

あらすじ

いやーもう参りましたねこれは。久しぶりに何も書くことがないというか書けないというか…。手短にチャチャッと終わらせましょう。

1人の女性映画監督が1976年にバンコクの大学で起きた「血の水曜日事件」に関する映画を撮ろうと考えているようで、当時活動家としてその事件に関わっていた女性作家にインタビューすべく、別荘のような家にご招待します。

数日間寝食をともにしつつ当時の話を映像に収めていきますが、その後どうやら役者らしいイケメンが突如登場して急に日本語で喋ったり一緒に写真撮影を求められたりPV撮影したりしてたら今度はトイレ掃除をする女性の姿が現れたりとなんかいろいろ出てくる、そんな映画です。

ストーリーが無い

あらすじがあらすじになってない。っていうか説明が難しすぎてお手上げですよ。でも実際こんな映画なんですよね。

僕はてっきりJAIHOの解説から「血の水曜日事件」の本当のところを掘り下げる、もしくは当時のトラウマを背に今の生き様に影響を与えて云々、みたいなお話なのかなと観始めたんですが、その「血の水曜日事件」に関するインタビューも途中で終わり、その後それが「実際に映像化された」と思しき別キャスティング(つまり最初の監督と作家が役者に置き換わって映像化されたような形)でちょこっと流れたかと思ったらまた別の人の話になり、今度はそれを追っていくとまた途中で切り替わり、「これもしや群像劇で、最終的にみんな知り合いで〜〜とかそういうやつ?」と思ったら特にそういったつながりもなくなんとなく終わっていくという…さっぱりわからん。いやまじで。

もう本当に、ここまでまったく意味がわからない映画はあまり記憶にないぐらいでかなり困惑しました。一番近いと思ったのは「ツリー・オブ・ライフ」なんですが、あれなんかは比べればまだ話がわかった方だったなと思います。これは本当に「え? 何が言いたいの??」と最後の最後まで思い続けて終わりました。

こっちとしてはやっぱり最初の「血の水曜日事件についてのインタビュー」を軸に観ていくので、急に出てきたイケメンも「これ作家さんの初恋の人とか?」「彼女の息子でその影響がこのあと明かされるとか?」などいろいろ関係性を探りながら観るんですが、その繋がりも一切描かれないまま(というか本当にまったく関係がない)他の人に移り、他の人もふわっとしたエピソードだけでまた次へ行ってを繰り返し、収拾付かないままエンディングで呆然、ですよ。

正直ここまで話に継続性が無い映画は初めて観ました。ちょっと「ECHO」っぽいかなとも思ったんですが、あれはあれで規則性(すべてごく短いエピソードで構成されている)があり、「クリスマスから年末にかけての人々」というテーマもあったのですごく良かったなと思えたんですが、こっちはもう本当に出てくる人たちをつなぐ要素もまったくないため、なんなら他国に潜伏中の諜報員に向けた高度に暗号化されたメッセージなんじゃないか、と頭を抱えて疑心暗鬼にさいなまれながら鑑賞を終えた次第です。

実は最近ブログに関して「ようやくちょっと筆が走るようになってきたねグヘヘ」とか思ってたんですが、今回に関してはもうお手上げで本当に書くことがないです。だって話が意味わかんないんだもん。

これが好みの問題であればまだけなしたりもできるんですよ。あそこで主人公が死なないのはおかしいだろとか色恋でそれっぽくごまかすんじゃねぇとか。

ことこの映画に関してはそういった要素もまるでなく、今同時刻に別の場所にいる人たちを数人切り取って映画にしました、ぐらいの脈略の無さなんですよね。

一人だけ、最初にカフェの店員をやっていた女性が別の仕事に就いて働いているシーンが何度か登場しますが、それにしても特に何を語るでもなく、ただ働く姿を見せるだけでそこに込められた意味もよくわからず。

なんなら「そこまで推してくるってことは監督の娘ですか?」みたいな。意味がわからないと縁故に理由を求めてしまう自分の浅はかさに我ながら嫌気が差しますけども。

だが…!

フィルマークスを見るともう大半が絶賛ですよ。すごい、と。

その褒めている意見を読んだところでまったくピンとこず、同じ言語を使っているのに会話が成立しない感じがしてそこもものすごく怖かったんですが、きっと僕には見えていないものが見えているんでしょう。世の中の人たちには。自らの感受性の乏しさを呪うばかりです。

とは言え、どんな贔屓目に見たところで「ストーリーは無い」というのは衆目の一致するところなのも間違いないと思うんですよ。

ストーリーは無い、ただそこに何を見出すのかという話で。僕は何も見出だせなかったし、見出そうとも思えませんでした。観ている最中は「絶対これはなにかストーリー的な意味があるんだろう」と思って観ていたので余計に。

いわゆる「考えるな、感じろ」系の映画なんだろうとも思うんですが、それにしたって取っ掛かりもなさすぎるし…やっぱりこれは海外の諜報員に対するメッセージとしか思えない。テレビで賛美歌13番を流したらゴルゴへのコンタクトを希望している、ってアレと同じようなやつです。

絶賛している人たち、本当にそんなに良かったのかな!?

確かに映像はすごく綺麗でした。ただ一言「クソつまらん」でバッサリこき下ろすにはちょっと気が引けるぐらいに画に力があったし、なんとなく「監督にしか見えていない何か」があるようにも感じました。

でもこっちは頭の中8割はエロいことで埋まっているのでそんな高尚な表現に気付くはずもなく、「他の観れば良かった」と率直に思います。

これでもまだ歳を取ってマシになった方で、10年前なら95%はエロいこと考えてましたよ。15%も脳の活用領域が広がったのにこの体たらく。もしかしたらまだ早い、80歳を越えてからわかる世界だったのかもしれません。その頃にはきっと頭の中のエロいことは20%ぐらいにはなってるでしょうからね。

でも昔DVDショップに行って、曲がった腰で上段の棚に置いてあるAVを必死に取ろうとする爺さんを見て「これは…これは未来の俺だ!!」と涙した経験を思えば、その頃もまだ60%ぐらいはエロいことを考えてるのかもしれない。

そんなゲス野郎にはこの映画はきっと向いてないのさ…。

自分が時代と合わなくなってきたのかもしれない恐怖

ちなみに今さらタイトルについて、JAIHOでは「暗くなるまでには」でしたが、フィルマークスには上記のように「いつか暗くなるときに」と併記される形で両方のタイトルが入っていたので、最初に日本に来たときと今とで邦題が違う等の理由があってタイトルが2つあるようです。

それにしても自分の中で絶対的に信頼していたタイ映画なんですが、初めて明確に“外し”ました。

まあでも当たり外れがあるのはそれだけ多様性があることとイコールなので、悪いことでもないんですけどね。というか全部が全部面白いはずもなく、ようやく不発弾を発見しましたというところでしょうか。

ただ上記の通り、世間的にはかなり評価が高い映画です。「意味がわからない」と言っている人はレビューを読む限りでは1割もいなかったと思います。

これは自分が時代と合わなくなってきた証拠なのかなぁ…すごく不安になりますね…。

とは言えポジション的にかなりマニアックな映画であることも事実なので、この映画を現時点で観る人は、広い意味での「映画を観る層」からすればかなりのアーリーアダプターなのは間違いないだろうし、そういう人たちが「すごい」と言っているのをわからんぞとなったところで、「世間とのギャップ」という面ではさして意味がないのかもしれませんね。

まあ、僕としては「恐竜神父」の方が面白かったですよ。間違いなく。

このシーンがイイ!

序盤、「血の水曜日事件」についてのインタビュー中に回想シーン的に過去のシーンが入ってくるんですが、そこで学生たちが政治について意見を交わし合っているところを見て、タイはいろいろ問題があるだのなんだのと(ついこの前の選挙でも)言われているのに日本よりよっぽど健全だな、と全然本線とは関係ないところでしんみりしてしまいました。

と言いながら自分も仲のいい人と政治の話はしづらいんですけどね。そういう社会はやっぱりすごく不健全だなと改めて思わされる1シーンでした。

ココが○

映像、かな…。映像だけは本当に綺麗でした。いちいち画になるカットだったり、照明の使い方だったり。

観ていて「あ…この作風似てる監督いるよな…」と考えていたんですが、途中からどうでもよくなったのでわからず終いです。ありがとうございます。

ココが×

自分はやっぱり「ストーリー重視」なんだなと気付かされましたよ。ここまでストーリーが無いとまったく興味を持てないことがわかりました。

MVA

大変不本意ですが、まったく面白くなかったので該当者無しとします。役と演者を調べるのもめんどくささが勝ってしまうぐらい何も響くものが無かった。

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