映画レビュー1318 『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
もう前作から15年経ったと聞いて震えたんですが、そうか前作観に行った頃はまだこのブログやってなかったのか…と気付いて改めて震えました。
幼少期の思い出に残るシリーズではあるんですが、前作はかなり不満が残る内容だったために今回もスルーしようかと思っていたところ、長年ハリソン・フォードファンの母親が観に行きたいと言うので親孝行を兼ねて行ってきました。
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
ジェズ・バターワース
ジョン=ヘンリー・バターワース
ジェームズ・マンゴールド
ジョージ・ルーカス
フィリップ・カウフマン
ハリソン・フォード
フィービー・ウォーラー=ブリッジ
アントニオ・バンデラス
ジョン・リス=デイヴィス
シャウネット・レネー・ウィルソン
トーマス・クレッチマン
トビー・ジョーンズ
ボイド・ホルブルック
オリヴィエ・リヒタース
イーサン・イシドール
マッツ・ミケルセン
2023年6月28日 各国
154分
アメリカ
劇場(ドルビーシネマ)
いろいろ言いたいけど許したくなっちゃう味。
- かつて若かりし頃に手に入れたダイヤルを巡って過去の因縁が蘇る
- インディ・ジョーンズシリーズらしい考古学的謎解きもありつつ前作同様ややSF感も
- 敵役があまりにもステレオタイプで物足りない
- 良くも悪くも昔ながらの娯楽作
あらすじ
前作よりは全然良くて「まあ面白かったな」とそれなりに満足したんですが、一方で言いたいこともいろいろあるしもうちょっとできたでしょ、と思うんですが多分これで最後だろうしお疲れさまでいいか、と許せちゃう部分もあるという…なんとも評価が難しい映画ではありました。
かつて第二次世界大戦中、友人の考古学者バズ(トビー・ジョーンズ)とともにナチスが略奪した「ロンギヌスの槍」を奪還しようと敵地に乗り込んだインディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)。
一時は捕らわれてしまうものの当然無事逃げおおせ、それでもロンギヌスの槍は取り返さねばと様々な遺物を移送中の列車に乗り込んでブツを発見したんですが偽物と判明。
一方捕らえられて列車で移送中に尋問されていたバズは、ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)が見つけてきた「アンティキティラのダイヤル」を偶然入手、合流したインディとともに逃走します。
追ってくるナチスのウェーバー大佐(トーマス・クレッチマン)やフォラーを振り切ってなんとか逃げ切ったあの日…から時が経ち、爺となったインディアナ・ジョーンズ。
彼の引退講義に姿を現したのはバズの娘、ヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)。インディがダイヤルを持っていることを知らない彼女は、当時父とインディが飛び込んだ川まで行って回収したいと言い出してきたため、インディはやむなく保管してあったダイヤルを見せると彼女はそれを奪って逃走。
同時にかつて一度はダイヤルをその手にしていたフォラーも姿を見せ、インディを追ってきます。
ヘレナ、そしてフォラーの狙いもわからないまま、老体に鞭打って逃げるインディ。しかしこれはまだまだ序章なんですよねやっぱり…!
昔ながらのキャラクターを今のフォーマットで
言わずと知れたインディ・ジョーンズシリーズ5作目。
関係者の誰もが「ハリソン・フォード以外にインディ・ジョーンズはやらない」と明言しているだけに、「インディ・ジョーンズ」としては間違いなくこれが最後でしょう。スピンオフとかはあるかもしれないけどさ。
前作で息子を演じたシャイア・ラブーフも(リアル)トラブル続きでクビになったようで、息子は戦死してしまった設定になっていて、息子が後を継ぐシリーズ継続の線も無くなりました。
過去作同様、今作もメインとなるアイテムは現実に存在するもので、その他もところどころで現実の考古学とリンクする作りなのは変わらず、この手の話が好きな人間にはたまらないものがあります。
それだけに前作同様にSF要素が出てくるのはちょっと乗り切れない面があるんですが、ただ考えてみたら1〜3もちょっと(SFではないにせよ)ファンタジー要素はあるし、現実にあったらトンデモ扱いされるようなお話でもあるので、結局は程度問題なのかもな、と思ったりもしますね。あんまりそこ一点を持って「こんなのはインディ・ジョーンズじゃない!」っていうのも違うんじゃないかなと。
ただそう言いたくなる気持ちもわかりはするだけに、この辺はシリーズに対する思いだったりこだわりが影響しそうな気はします。
僕は一応全作観てはいますが、1と2についてはほぼ記憶にないぐらい遠い記憶すぎるのでそこまで強い思い入れもなく、それだけに割と「まあそれもアリか」と許せてしまう感覚はありました。最後だしもう好きにすればいいんじゃない、っていうのもあるし。
それよりも気になったのはとにかくもう定番すぎるヴィランのキャラですよ。
ネットでは「強さより弱さを感じてマッツかわいい」とか結構見たんですがそれ単純にマッツのファンだからでしょ、と思わずにはいられない。
まず元ナチス、って設定が「また!?」ってもう驚くぐらいにベタだし、百歩譲って(実際モデルとなる人物がいたらしい上にロンギヌスの槍はナチスが所持していた時期があるらしいということもあり)そこは良いとしても、何よりも彼が連れている部下がベッタベタのベタすぎてつらい。
すぐに発砲する頭悪そうなヤンキータイプと、体がデカくて怪力タイプ。いつの時代のヴィランだよ!?
もう本当にこの部下2人のひねりの無さには参りましたね。まだこんなキャラ使ってんのか、演じる役者もかわいそうだわ、って。
マッツはマッツで自分には彼の良さが生きる役には感じられなかったし、あまりにも一面的なヴィランなのでものすごくガッカリしました。
今の時代であればもう少しヴィランなりの正義を背負った…みたいな背景が入ってくるものだろうと思うんですが、ただそれはそれで「インディ・ジョーンズシリーズにはそぐわない」みたいな意見も当然あるだろうし、その辺の作り含めていかにも“昔ながらの娯楽大作”を引きずった映画なんだろうと思います。良くも悪くも。
そんなわけであんまり現代的に変えすぎても不評を買いそうなので、このシリーズだからこそベタなヴィラン…というか字面的には「悪役」と言ったほうがしっくり来るような、単純明快な勧善懲悪の構図にした方が良いと判断したんじゃないでしょうか。
インディ・ジョーンズは当然正義で、対する悪は単純にわかりやすいタイプにして、その間に位置する今作のヒロインである「親友の娘」ヘレナをトリックスター的なポジションに据える、という形。それもまた昔ながらの作りなんですが、その「昔ながらのキャラクターたち」を今のフォーマットに載せて見せるのが今作なんでしょうね。
今のフォーマットと言えば、やっぱりオープニングの「若かりし頃のインディ・ジョーンズ」のシークエンスが秀逸。
「アイリッシュマン」でも見られたような若返りCGによるアラフォーハリソン・フォード(とマッツ)でしばらく展開するんですが、これがもう本当にびっくりするぐらい自然。
たまにちょっとだけ違和感を感じるシーンもあったんですが、でもそれも「CGすげえな」とアラ探ししようと観ていたからこそ気付いたぐらいのもので、今のハリソン・フォードの年齢も外見も知らない、赤の他人をハリソン・フォードだと思って一緒に記念撮影しちゃうEXILEの人みたいな方が観たら普通に撮影したとしか思えないレベルに自然です。本当にすごかった。ちなみにシステム開発含めこのシークエンスに3年かかっているそうです。
列車のシーンは緊迫感もあるし、そのCGの凄さも含めて非常に見応えがあり、オープニングが一番良く出来ていたのは間違いないでしょう。
いろいろ不満がありつつも
当然ネタバレになるので終盤の展開についてはここには書きませんが、どうしても最初と最後(CGに対する驚きと終盤の展開に対する引っ掛かり)に話題が集中しがちな一方で、道中の展開の結構な雑さも看過し難いものがあったように思います。
娯楽大作だししょうがないでしょと言われればその通りなんですが、その道中の雑さ、なんとなく勢いで進めちゃう作りも含めて「古い」感覚が拭えず、このメンバーならもう少し頑張れたんじゃないの…と思うんですよね。
ぶっちゃけ今回もスピルバーグが監督してたならまあこんなものかなと思えるんですが、監督も脚本家も変わって心機一転するならもうちょっと冒険しても良かったんじゃないの、と。ちなみにこのトリオは「フォードvsフェラーリ」のメンバーです。
ディズニーが買収した過去に人気のあったシリーズを新しい監督が担当、しかし冒険が足りないと来ると…スターウッ…頭が…。
といろいろ不満を感じつつ、でも最後の最後でまあいいか、と許したくなりました。僕の予想とはちょっとズレて(というかそう予想させるようにミスリードしていた感じ)、でもそこが良かったので。
多分賛同する人はほとんどいないと思うんですが、一人の人生を追っていってこれで最後だよ、という感じが少し「ゴッドファーザー PARTIII」っぽい気もしたんですよね。(加えてダニクレボンドっぽさも感じた)
最盛期から最後まできっちり見せてもらって、きちんとこっちの気持ちにも整理がつく感覚にありがとうを言いたくなるような。
もうハリソン・フォードも(なんと)80歳だし、間違いなくこれでインディ・ジョーンズは最後だろうと思うので、それを考えればきっちりこのキャラクターにお別れさせてくれる映画を作ってくれただけでも良かったのかな、と思います。
それでも最後に言わせてもらえれば、やっぱりこのシリーズは3作目で終わらせておくのが一番綺麗だったことも間違いないでしょう。
それを思えば、「絶対に続きは作らない」と公言しているバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズは偉いですね…。まあ今もマイケル・J・フォックスが最前線だったらまた違ったのかもしれませんが…。
あとユニバーサルをディズニーが買収してたら…
おや、誰か来たようだ。
このシーンがイイ!
やっぱりオープニングのシークエンスですかね。音楽の使い方がいちいちズルいというかこびてる感じもしましたが、それでもやっぱり「帰ってきた」感じがあったし、映像もすごいしで。
ココが○
約2時間半の長丁場ですが、文句を言いつつあまり中だるみも無く、早く終わったように感じるぐらいにはテンポも良かったと思います。
難しすぎず、でもちょっと考古学を感じさせて世界観を作るエピソードも結構良かった。
ココが×
一番は上に書いた通りヴィランのキャラクター。特に部下、もっと言えばボイド・ホルブルックが演じたヤンキー部下がクソクソのクソ。あんな薄っぺらな悪役今どき持って来るなよと言いたい。
MVA
これも書きましたがマッツの使い方としては非常にもったいない一面的な役だったのがつくづく残念。
ハリソン・フォードはしっかり頑張ってたと思いますがあまり代わり映えもなく、となるとこの人かなぁと思います。
フィービー・ウォーラー=ブリッジ(ヘレナ・ショー役)
今作のヒロインで、バズの娘。
役としては「これヒロインなの!?」と思うぐらいイライラする嫌な役だったんですが、イライラさせてきただけいい演技だったような気もしてチョイス。あとは終盤の彼女の行動でこの性格に納得が行ったので許しました。
ちなみにこの方、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」の脚本にも名を連ねていたりします。
彼女のお父さんであるバズを演じたのがトビジョなのも密かに嬉しかったポイントですが、残念ながら出番としては少な目。
同様に(またも)ナチス将校をやらされたトーマス・クレッチマンも出番少な目でちょっとガッカリ。