映画レビュー0851 『しあわせはどこにある』

確か何かの映画をレンタルしたときに入っていた予告編を観て、ずっと観たいと思ってたんですよね。

ネトフリでもリストに入れていたんですが、この度(これまた)めでたくネトフリ配信終了ということで自動的に観ることになりました。

しあわせはどこにある

Hector and the Search for Happiness
監督
ピーター・チェルソム
脚本
マリア・フォン・ヘランド
ピーター・チェルソム
ティンカー・リンジー
原作
『幸福はどこにある 精神科医ヘクトールの旅』
フランソワ・ルロール
音楽
ダン・マンガン
ジェシー・ジュボ
公開
2014年8月15日 イギリス
上映時間
119分
製作国
イギリス・ドイツ・カナダ・南アフリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

しあわせはどこにある

すべての面倒を見てくれる理想的な恋人・クララと何不自由なく暮らしていた精神科医のヘクター。しかし患者と接していくうちに「本当の幸せとは何なのか」疑問を感じ、幸せの定義を探しに世界各地へ旅に出る。

安定のハッピーコメディロードムービー。大切な人がいるって良いね。

8.0
幸せ探しの一人旅、そりゃあ良いに決まってます
  • いろんな出会いから「幸せの定義」を見つけていく男の物語
  • 過去との対峙も大きな柱
  • 脇役陣がなかなか豪華
  • ただしかなり軽めで深みは薄め

主演はもはや「ミッション:インポッシブル」シリーズのみんな大好きベンジーでおなじみ感の強い、サイモン・ペグ。元々コメディアンですが、脚本を書いたりもするしなかなか多彩な方です。

一応コメディドラマなんですが、要素としてはロードムービー的な部分が大きいと思うのでジャンルはロードムービーにしました。「コメディ仕立てのドラマ寄りロードムービー」なんてもう最初っから良いのがわかりきっているようなもので、おまけに主演がサイモン・ペグですからね。そりゃ良いだろうよと思って観たら案の定良かったよ、と。

全体的に「LIFE!」と似たような雰囲気と旅感がありますが、ただあちらよりもだいぶ浅めであんまり自分の中に残らないような印象はあります。良くも悪くもサラッと観やすくて薄味といった感じ。

主人公のヘクターはロンドンの精神科医。昔からの常連患者に慕われ、安い診察料で相談を聞きつつ特に解決もしない、というある意味リアルなお医者さんです。

彼はクララという恋人と同棲しているんですが、このクララがとても良く出来た彼女で…食事はもちろん、毎日締めるネクタイの準備まで至れり尽くせりでヘクターを支える献身的な彼女なんです。なんですが…演じるのはあの「ゴーン・ガール」でおなじみのロザムンド・パイク。もう恐怖しかない。嫌な予感しかないぞ!

と思いましたが当然ながら別の映画なのでいきなりヘクターを殺しに来たりとかは無いです。よかったね。ゴーンさせられなくてよかったね。ゴーンさんも話題だしね。

そんな何一つ不満がない日常を送りながら、いやそんな日常だからでしょうか。ヘクターは次第に「幸せとは何なんだろう」とふと疑問を抱き始めるわけです。

そもそも「幸せとは何か」がわかってないと精神科医として患者に良いアドバイスができないじゃないか、と思い立った彼は、「旅に出て幸せとは何かを調べたい」と言うことでまずは中国へ向かいます。

向かう機中でたまたま隣りに座った超金持ちの男・エドワードと成り行きで一緒に中国観光することになった彼は、エドワードのおごりでたらふく飲んで食ってチャンネーともネンゴロ、ひどく中国を満喫してーの山へ行きーのいろいろありーので次の目的地、アフリカへ。

そんな感じで数カ国回って手帳片手に「幸せとは何か」を探し続けるヘクター、果たして彼は本当の幸せを手に入れることができるんでしょうか、というお話です。

「幸せ探し」という大テーマと「過去の自分との対峙」という小テーマを織り交ぜつつ、各地で新しい人との出会いと別れがあったり旧知の友人の元を訪ねたりしながら少しずつ成長していく主人公、というまあぶっちゃけロードムービー的にはよくあるパターンではあります。

印象としては最初に挙げた「LIFE!」+「マイ・ブルーベリー・ナイツ」的な感じ。話の内容は全然違いますが、エピソードの数とまとまり具合が何となく似てるなーと。

タイトル通り「幸せ」が中心のお話ということもあって、ヘクターは出発前にクララから渡された手帳に何度となく「幸せとは○○」と記帳していくんですが、これがなかなか良い内容でですね。これを記憶にとどめておくだけでも日常が少し変わりそうな、そんな素敵な雰囲気がある映画でした。

「世界を旅する」内容ではあるんですが、そこまで多くの国を旅するわけでもなく、割とコンパクトにまとまっているのもむしろ良いなと。あんまり数が多いと散漫になっちゃいますからね。コレぐらいが良いと思います。

何せサイモン・ペグが主演ということもあって、程よくコメディ感もあって深刻になりすぎないし、ホロリとさせるイイシーンもあったりして本当に過不足のない仕上がりだと思います。予想通り良くて予想通り大きな不満もない、比較的誰にでもオススメできるタイプの映画ではないでしょうか。

ただあまりにも過不足なさすぎて、面取りした大根のようなやわらかすぎる印象もまたありました。面取りした大根という例えが適切かはわかりません。でもそんな感じなんですよ。嫌味がなさすぎるのが嫌味、みたいな。

基本的に登場人物はみんな良い人だし、展開的にもあまり裏切りがない。何より旅のきっかけになる“ヘクターの悩み”が割と唐突感があり、そこまで悩んでる雰囲気もない。そもそも「そこそこ繁盛している精神科医」って時点で成功者ですからね。言ってみれば。その彼がさして重くもない悩みのために旅に出る、って言われても「とっさに旅に出られるお金と休みがあっていいね」とひがんじゃうような面もありました実際。この辺はイギリスと日本の違いも大きいとは思うんですが。

何よりオープニングで描かれる彼女のクララがもう完全にダメ男製造機レベルで完璧すぎるので、これ以上望むのは高望みしすぎじゃね? という気もします。何が不満なんじゃい、と。

なのでもうちょっとヘクターの悩みが大きかったり、後半の振れ幅のために嫌なヤツに描いてくれたり、っていうのがあればもっとグッと来た気はするんですよね。元々そんなに悪いヤツではないし十分幸せそうだしで、旅の動機と成長の描写が弱いなとは思いました。残されたクララの描写もかなりあっさりしすぎてるし。

とは言えそれでもやっぱりじんわり感動しちゃったし良い映画だとは思います。

テンポも悪くないし、気楽に観られて少しだけ前向きにさせてくれる良作としてオススメです。

ネタバレはここにある

最終的に「クララが一番大事です」はちょっと当たり前すぎるんですが…まあそれ以外だとガッカリだししょうがないのかな。

ただそうなると、やっぱりもう少し「残されたクララ側」に危険な匂いを漂わせて欲しかったですよね。ありがちですが違う男の影とか。そういうのがまったくないから「戻ってきたよ」「おかえりなさい」で普通すぎちゃう。

ディエゴ(ジャン・レノ)の使い方もちょっともったいないかなと思います。直接彼が出てきて解放させるぐらいの方が気持ちよかったかも。

もっともそういうベタな見せ場を作らないのがイギリス映画的な良さだとも思うんですけどね。ただ全体的にあっさりし過ぎかなとは思いました。

このシーンがイイ!

やっぱり「機内にお医者様はいらっしゃいますか」でしょうね。あそこが一番グッと来た。

ココが○

爽やかで嫌味がなく、適度に軽くて観やすい。良くも悪くもあざとさがないので間違いなく誰でも観やすいタイプの映画でしょう。

ココが×

上記の通り、もう少し感情的に高めてくれる振り幅が欲しかったですね。特に動機とクララ。ここはもうちょっとだけあざとくしても良かったんじゃないかなぁ。

もしかしたら一番イマイチなポイントは最初と最後でヘクターがあんまり変わってない点かもしれません。

変わってはいるんですが…最初はもっと嫌なヤツのほうがやっぱりわかりやすく盛り上がるんじゃないかなと。「恋はデジャ・ブ」みたいな。

MVA

ステランさんはさすがの存在感、トニ・コレットも良かったしちょっと登場のジャン・レノも久しぶりで嬉しかったですが、やっぱりこの人になるかなー。

サイモン・ペグ(ヘクター役)

この人のキャラの良さはやっぱり素晴らしいと思いますよ。コメディ的な明るさと、じんわり感動させる演技力と。さすがです。

さすがと言えばロザムンド・パイクもやっぱりさすが。この人も良かったですね。ちゃんとかわいらしさもあるし。

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