映画レビュー0999 『ロード・オブ・ウォー』
この日は特に他に観たいものもなく、気分でチョイスしたこちらの映画。
ロード・オブ・ウォー
ニコラス・ケイジ
ジャレッド・レト
イーサン・ホーク
ブリジット・モイナハン
イーモン・ウォーカー
サンミ・ロティビ
イアン・ホルム
エフゲニー・ラザレフ
アントニオ・ピント
2005年9月16日 アメリカ
122分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

世界の仕組みの一端を垣間見る。
- よくある「一人の人生の栄華と凋落」の半生を描いた伝記風映画
- ただ背景に戦争があるためにリアルな世界を垣間見られる
- 実話ではないもののノンフィクションに近い内容
- ジャレッド・レトがイケメン
あらすじ
この映画は昔の職場の同僚に勧められていつか観ようと思っていたわけですが、「確かに面白かったよ」とお知らせしてあげたいもののもはや10年近く音信不通なのでひっそりと絶対に読んでいないブログにアップすることでその代わりとしたいと思います。
主人公はウクライナからアメリカに移民としてやってきた4人家族の長男、ユーリ・オルロフ。ネタキャラになる直前のニコラス・ケイジが演じております。(勝手な印象)※ちなみにニコラス・ケイジ好きですよ
彼の家族は庶民的なレストランの経営で生計を立てていたんですが、長男であるユーリはある日偵察で向かった向かいのレストランで銃撃戦に出くわし、そのときの衝撃で「俺は武器商人になる!」と決意したのでした。なんで?
強引な導入ではあるものの、これは天命だったのか…意外と武器商人としての才能があったユーリは、「信頼できる相棒」として弟のヴィタリーも巻き込みながら、徐々に事業を拡大していきます。
しかしある日、取引の支払い代金の代わりに無理やりコカインを押し付けられ、それに手を出してしまったせいでヴィタリーは薬物依存症になり施設入り、再びユーリは一匹狼として武器商人の道を進むことに。
それでも順調に歩み続けるユーリは、ずっと想っていた地元のスターモデル、エヴァを射止め結婚し順風満帆…のように思われたんですが、当然のように彼に目をつけていたインターポールの捜査も徐々に迫ってきていて…あとはご覧ください。
普通の人間が戦争を構成する要素に
最初に書いたように、大まかに言えばよくある「一人の人生の栄華と凋落」という例のアレで、まあ流れ的には本当によく見るやつですよ。「ブロウ」とか「ウルフ・オブ・ウォールストリート」とかああいうのと同じ感じの。
ただこの映画は主人公が武器商人で、それ故世界を巻き込んだとても大きな“流れ”の中にいる、というのがかなり重要なポイントになっていて、そのからくりが白日の下に晒される終盤の展開によって気が遠くなるような“現実社会の闇”に目を向けざるを得ない作りになっている、というのが素晴らしかったですね。
主人公のユーリ自身は(やっている商売そのものは別として)割と普通の男だし、特に強いわけでも非人道的でもなく、たまたま選んだ仕事が合っていたからそのままやっているだけでイデオロギー的な何かに立脚した生き方をしているわけでもない、その姿がすごくリアルで等身大感が強いわけです。
早い話が「その辺にいる誰か」だし、もしかしたら自分がそうなっていてもおかしくないぐらいに身近な存在であるユーリが、最終的に“世界にとって”どのような立ち位置にいるのかを認識させられ、そしてそれこそが戦争という普通に考えれば誰もが避けたいと思っている事象を“無くさせない”歯車となっている事実に言葉を飲むわけですよ。
結局何でも「こいつが悪い!」と思えばメンタルの置所も楽で良いんですが、世界ってそんなに単純じゃないよねという。誰か一人が悪いって話じゃない、誰が“そちら側”に行くかもあやふやなものなんだぞ、っていうのをまざまざと見せつけられた気がして…いろいろ考えさせられましたねぇ…。
弟の存在の良さ
「普通」という意味ではユーリ以上に身近に感じられたのが、彼の弟であるヴィタリー。
彼は薬物依存症になる点もそうですが、普通だけど“何かから選ばれている”ように感じられるユーリと違い、本当にフツーの兄ちゃんなんですよね。それは感情面も含めて。
彼はおそらく観客が最も人間としてリアルに感じるであろう存在なのかなと思うんですが、それ故に彼の辿る足跡にまた考えさせられるものがあり、そこまで対照的な性格でもないのに最終的にはまったく違う人生となるこの兄弟の描き方がまたとても良かったと思います。
ちなみにこの弟役はジャレッド・レトが演じているんですが、キワモノ役だらけの個性派俳優イメージが強い彼がかなりイケメンでびっくりしましたよ。「えっ、普通にしてるとこんなイケメンなの!?」って。この辺はガールズも楽しみにしてね、といったところ。
やるねニコルん
繰り返しになりますが、あくまで構成的にはよくあるパターンの映画ではあるので、意外性という意味ではそこまででもなく、安心して観られる分、想像を超える良さみたいなものはあまり見出しにくいのが残念ではありますが、とは言え一般人が「よく知らない世界を動かしている何か」の一端を垣間見ることができる興味深さもあるので、これは一度観ておくといい映画の一つではないかなと思います。
「ガタカ」以降パッとしねぇなと勝手に思っていたアンドリュー・ニコル、やっぱりすごい人なんだなと再評価の兆しですよ。
これ以降に作られた「ドローン・オブ・ウォー」もなかなかだったし、「TIME/タイム」みたいなドSFよりも少しリアルに比重を置いた物語の方がお上手なのかもしれないですね。
このシーンがイイ!
ネタバレ回避のためにあまり書けませんが、ユーリが“共犯”にさせられるあのシーン、かなぁ。本人的にはあまり変わってなさそうでしたが、それでもあそこでやっぱり“橋を渡ってしまった”部分があったんじゃないのかなぁと。
ココが○
「必要悪」というものを嫌というほど考えさせられる内容なので、社会の構図を考えるのが好きな人にとってはかなり好物なんじゃないかなと思います。綺麗事だけじゃやっていけないよね、としみじみ考えさせられるような。
ココが×
特にこれと言っては無い…かな。
「よくあるパターン」ではあるものの、そのよくある感を利用した展開でもあるし、なかなかうまくできた映画だと思います。
MVA
イーサン・ホークがもう少し食い込んできてほしかったなぁという気がしますが、今回は完全に脇役でしたね。
兄弟どっちかで悩んだんですが…こっちかな。
ニコラス・ケイジ(ユーリ・オルロフ役)
主人公の武器商人。
何がいい、ってやっぱりニコラス・ケイジなのがいいんですよね。イケメンでもないし、めちゃくちゃ強そうなわけでもない、なんなら人が良さそうで与し易そうな印象を与える普通っぽさ。
どこか流されやすそうな雰囲気もあるし、いろいろと諦めちゃってるような、諦観しているような印象もある…そのキャラが結末にすごく合ってるんですよね。よくぞニコラス・ケイジにやらせてくれた、という。
とかくネタキャラにされがちな彼ですが、たまに見るとなかなか良い役をやってたりするんですよねぇ…。これからも頑張ってくださいね、ということで。