映画レビュー0424 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

フィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなりました。

主演も脇役もこなす上に、どの映画でも強い印象を残す稀有な俳優さんだったと思います。ものすごく好きな俳優さんだったので、返す返すも残念でなりません。遠く日本からご冥福をお祈りしたいと思います。

彼がアカデミー賞を受賞した「カポーティ」含め、まだ観ていない作品も結構あるので、今年のうちに追悼企画として何本か取り上げようと思います。

さて、気を取り直して今回のご紹介。

ご承知の通り昨日は記録的な大雪でしたが、まだその予報が流れてくる前に座席を予約してしまい、せっかくなので行ってきたところエラい目に遭いまして…。

「レイトショーほど遅くなりたくないから無料鑑賞券を使って夕方に行く」というプランでいつもなら車で20分の劇場に行ったんですが、雪だったために電車に変更したところ帰りに電車が止まってしまい、結果上映時間以上の3時間半ほどずっと車中で待たされ、帰ってきたのは日付を超えてからだったという…。

結果的には「雪じゃない日に普通にレイトショーで良かったじゃん」というなんとも後味の悪い鑑賞となりまして、もはや映画の内容よりもその疲れのほうが印象に残ったような体たらくなんですが、なんとかレビューしたいと思います。

ウルフ・オブ・ウォールストリート

The Wolf of Wall Street
監督
脚本
テレンス・ウィンター
原作
『ウォール街狂乱日記 – 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』
ジョーダン・ベルフォート
音楽
公開
2013年12月25日 アメリカ
上映時間
179分
製作国
アメリカ

ウルフ・オブ・ウォールストリート

ウォール街で株式ブローカーとして就職後、その手腕とカリスマ性で驚異的な収入を得た男、ジョーダン・ベルフォートの半生。

テンポ良しのスーパー下品映画。

8.0

実在する人物の半生を、事実に脚色を加えつつまとめた割とおなじみスタイルの半伝記映画。どこまで事実かはわかりませんが、ざっと情報を見た感じでは軸となる物語は割と忠実に、ただそのディテールはかなり大げさに、という雰囲気。

ジャンル的には「コメディ」に分類されることが多い作品ですが、観た感じでは「この人の人生がコメディ」というか、もうこの人のやることなすことすべてがぶっ飛んじゃってる故にコメディになった、という感じで。とにかくすごい人生。

演技やセリフで「笑わせまっせ~!」というコテコテなコメディではないので、そういうものを期待する人には向いてないだろうし、逆にそういう映画じゃ興味ない、というような人も心配はいらないと思います。

僕としても「ドコメディ」じゃきついなーと思ってたんですが、結果的にあまりコメディっぽい印象はなく、「ぶっ飛んでて笑える伝記映画」という印象。実際、バックに流れる挿入歌が軽いからシリアスにならないけどそれなりに演出を変えたら結構深刻なシーンじゃないの、みたいな部分も結構あって、あくまで見せ方がコメディタッチであって中身はふざけてないよ、というのはお伝えしておきます。

なにせフィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなった直後でもあり、これでもかとクスリに依存する主人公とその仲間たちにはちょっと複雑な気持ちも抱きましたが、もう証券業界からクレームが入らなかったのが不思議なほど、クスリ・オンナ・クスリ・オンナの繰り返し。クスリでテンションをあげて社員を鼓舞し、その勢いでセックスまでなだれ込むぜ、みたいな。そりゃーR18にもなるわな、という内容。

劇中に出てくる「ファック」の回数の記録が更新されたそうですが、その通りスーパー下品、とても「ご家族でご一緒に」なんて映画ではありません。女性も嫌悪感を抱きかねない描写も結構あるし、そういう意味ではそれなりに人を選ぶ映画かもしれません。

しかし、約3時間という長丁場を感じさせないテンポの良さ、単純に「この人どこまで行っちゃうんだろう」と興味を抱かせるサクセスストーリー、そして何よりディカプリオの強烈なラリ演技と、映画としての見応えは十分。

「キワモノ」と言っても差し支えのない主人公は常に強烈で、「すげー…こんな人いるのか」と“キャラクター勝負”だけで引っ張れるテーマは、“食材”としてこの上ないでしょう。とんでもない話でした。

ただ、いわゆる後日談に当たる部分がかなりサッパリとしていたのが個人的には残念。

エンディングは綺麗にまとまってはいるものの、もっとどうなったのか…特に周りの人がどうなったのか、をもっと観たかった。道中の濃厚さに比べて、まとめの部分がかなりサラッとしていた印象で少し尻すぼみ感はあったかなと思います。それだけ道中が強烈だった、っていうのもあるとは思いますが…。

この程度のネタバレは問題無いと思うので書きますが、当然この手の映画は「堕ちる」ところがあるわけです。その堕ちる部分が昇るときの強烈さと比べるとやや弱く、あまり「やっぱりこういう仕事はよくないよね」みたいな訴えも弱いので、「報いを受けたんだな」みたいな納得感が少なくて、言ってみれば…「落差のカタルシス」というか。ある種観客の期待する「ざまぁ」みたいな部分があっさりしていたのが、結果的に「前フリの回収不足」みたいな印象を抱くかな、と。

むしろコメディに徹するのであれば、もっと主人公を悪い人間として描き切って、開き直った感じに描いたほうがスカッとした気もしますが、まあそれはなにせ本人もまだご顕在だし、いろいろと難しい面があったのかもしれません。その本人への配慮なのかはわかりませんが、ラスト30分ぐらいで急に「良い映画です、しんみりしてね」みたいな雰囲気に突入した違和感がありました。

とは言え、長尺の映画としてはかなり観やすい部類に入るし、単純に「この人すげぇ」と楽しめるのは間違いないでしょう。

日本なら例の捕まった王子製紙の元会長がこんな感じなんですかねぇ。もっとスケールは小さいだろうと思いますが、多分こういう派手なアップダウン人生を送っているんじゃないかなと。あの人の伝記も観てみたいぜ、という感じ。

このシーンがイイ!

「空飛ぶドラッグストア」のシーン。狂気の極み。そして下品の極み。この映画のすべてが集約されている…ような気がします。

ココが○

この人の人生を再現する以上、やり切らないと中途半端になるんだと思いますが、もちろん監督はそれがわかっているんでしょう、もう批判とか一切気にしないでとにかくやり切ってます。

自分とは一生縁のない世界をまざまざと見せつけられた感じで、ある意味清々しいほどの突き抜けっぷりでした。そしてそれに応える役者陣の熱演。素晴らしかったです。

あとはこれは映画よりも事実の方の話ですが、一番最初に会社を立ち上げた時の創設メンバーがもうとにかくイケてないメンバーばっかりなんですが、彼らが最後まで重用されている、その信頼関係みたいなものはすごくいいな~と思いましたね。

すんごい使えなさそうなオッサンでも右腕は最後まで右腕だし、会社が大きくなっても重役として常に近くにいるというのが、金と女とドラッグにしか興味が無いように見える主人公の最も人間的な面を感じられた気がして。

ココが×

くどいですが下品。ドラッグの量がハンパじゃない。

これに憧れて証券会社を目指すおバカさんが出てこないことを祈ります。

MVA

これはもう、当然この人。

レオナルド・ディカプリオ(ジョーダン・ベルフォート役)

今まで観たどのディカプリオとも違うんですよねぇ。すごい。

強烈にラリりつつクルマを運転するシーンとか圧巻です。演説のカリスマ性もすごかった。こりゃ人を魅了するのも頷けるな、と。さすがですね。大俳優の雰囲気すら漂ってました。

もちろん、脇役陣も素晴らしかったです。

相方は「マネーボール」で脚光を浴びたジョナ・ヒル。ほんと冴えないその辺のオッサンっぽいんですが、「マネーボール」とは全然違う雰囲気で、存在感ありました。

奥さん役のマーゴット・ロビーは初めて観ましたが、ストーリー通りにパーフェクト、すごいかわいくてそしてエロい。文字通り体を張ってよくやっています。

出番は少ないものの強烈なインパクトを残したマシュー・マコノヒーもグッド、さらに「アーティスト」のジャン・デュジャルダンもお見事でした。

お父さんもすごく良かったですが、なんとこの方、あの「スタンド・バイ・ミー」や「ア・フュー・グッドメン」でおなじみの名監督ロブ・ライナー。さらにジョーダンの弁護士は「アイアンマン」「アイアンマン2」の監督ジョン・ファヴローと、意外なキャスティングも見どころ。

ただし、ひとつも意外じゃないのがカイル・チャンドラー。この人こういう役ばっか…な気がする。

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