映画レビュー1481 『そう、家族』
もうチョン・マンシクが不機嫌そうに座ってるトップ画のコメディ、って時点でそりゃあ観るでしょって話ですよ。
そう、家族

ベタだけどベタじゃない。
- 3人兄妹だったつもりが知らない弟の登場で揉める兄妹
- それぞれの悩みも不満もありつつ結局まとまる、いつものパターンではあるものの…
- 定番の流れながらハリウッド量産型でない分飽きずに観られる
- 家族・兄妹の距離感がよくわかるリアルさもよし
あらすじ
あんまり良い言い方ではないですが、「普通に面白かった」ですね。この手の映画は本当に展開がベタだと飽きちゃうんですが、韓国映画な分飽きずに観られた感じがします。
父の葬儀に集まった3人の兄妹。
長男・ソンホ(チョン・マンシク)は幼稚園でバスの運転手をしていて、2人の娘を持つパパ。夫婦仲は良くも悪くもなく普通っぽいですが経済状況は厳しそう。
長女・スギョン(イ・ヨウォン)はテレビ局の敏腕記者として鳴らしており、唯一経済的にも困っていないようでその分兄妹からも頼られストレスが溜まっている模様。独身です。
次女・ジュミ(イ・ソム)は芸能人志望ながらオーディションに落ち続けており、現在飲食店でアルバイト中。そのためやはりお金はあまり持っていないようです。こちらも独身。
兄妹仲はこれまたよくある感じで、長男と長女は仲悪く、次女はどちらとも比較的良好な関係を築いているような雰囲気。
ただそれぞれ別で暮らしていて父親とも疎遠だったようで、総じて家族仲はあまりよろしくない…というのも(経済的にも)核となるスギョンがかなりイライラ系女子(家族嫌い)なのでそのせいで雰囲気も良くない、みたいな感じです。母親はみんな慕っていたようですがすでに父親よりも前に他界しています。
そんなわけで父の葬儀で久しぶり(?)に集まった3人ですが、そこに誰も知らない子ども・ナギ(チョン・ジュンウォン)が一人やってきて、「お父さん〜!」と号泣します。
え…? お父さん…?
どうやら田舎で半ば隠遁生活のような状況だった父親が一人で育てていた子のようです。
親子2人暮らしだっただけに他に頼れる人もおらず、誰かが引き取らなければならない状況ですが、余裕のないソンホも仕事バリバリのスギョンも生活力のないジュミも嫌がって押し付け合いの様相を呈しておりまして、果たしてナギの行く末やいかに、と。
兄妹の関係性
この手の家族再生コメディはとにかくハリウッドで量産されている印象で、兄妹が物語の中心にいるという点では「我が家のおバカで愛しいアニキ」が思い出されますが、まったく納得感がないまままとまっていくあの映画と比べるとだいぶ丁寧で納得できる内容でした。
やっぱりお隣かつ家父長制がまだ幅を利かせている国の映画だからなのかはわかりませんが、家族に対する感情がすごく日本の感覚に近い気がしましたね。
特に兄妹というのは、この歳になって考えると人間関係の中ではかなり特殊なポジションだと思うんですよ。
僕の場合は“姉弟”でしたが、親と比べると距離感も違えばその分苛立ちも大きいし、歳が近いからより感情的になりやすいというか。あんまり他の関係性でこういう怒り方しないな、とか最近思うんですよね。個人的な問題なのかもしれませんが。
それはある意味遠慮がないことの裏返しでもあり、この映画はそんな「遠慮がない」関係性を割とよく描いているなという印象でした。
事情がありつつではあるものの、やっぱりスギョンは「もうちょっと優しくしろよ」とかイライラしてくるし、ソンホは一番上なんだからちゃんと見てやれよみたいなのも思うわけです。
一方でジュミは(ナギを除いて)一番下だしその分ちょっと幼い末っ子感みたいなものも感じられるキャラクターだからちょっと大目に見ちゃう、みたいなのもあるし。
そんな各人のキャラクターがわかりやすいながらもしっかり丁寧に描かれていて、2時間足らずの映画ながらなんとなくぼんやりとどういう兄妹なのかがわかる内容になっているのが、いわゆるハリウッド量産系のこの手の映画とは一味違うかなと思います。
またこういう映画なので「当然そうなる」話なのは観る前から明らかなだけにネタバレ的な内容でも問題ないと思うので書いちゃいますが、まあ早い話結局最終的には家族が“再構築”されていくわけですよ。
父の死と誰も知らなかった幼い弟という1人の異質な存在によって固まっていく…というのはこれまた非常にありがちなんですが、でもこれはこれで多分どんな家族にも起こりがちな面があるんだろうとも思うんですよね。
親の葬儀で親の知らない話が出て見え方が変わるとか、環境が変わることで結束が高まるとか。
その辺も込みでベタな面は否めませんが、人物描写の上手さと自然な展開のおかげでだいぶ納得感のある内容になっていたように思います。
コメディ色の強いシーンもあれば緊張感高まるシーンもあったりと、定番の展開の中にしっかり緩急があったのもさすが韓国映画。しょうもないハリウッド量産系とはやはり地力に差がある印象ですね。
俳優陣も見どころ
ソンホ役のチョン・マンシクはいろんな映画でしょっちゅう見る、韓国映画好きにはお馴染みすぎる実力派なのでひとまず置いといて、主人公の常時不機嫌生意気ねーちゃんスギョンを演じるのはあの「子猫をお願い」のイ・ヨウォンです。あの映画でも生意気なタイプだっただけに抜群にお上手。
そして次女のジュミを演じるのはこれまた「子猫をお願い」同様に傑作だった「小公女」の主人公を演じていたイ・ソム。彼女が出ているのは知らずに観たのでまた見られてめちゃくちゃ嬉しかったですね。
そんな3人に加えてナギ役の子もさすがにすごくお上手で、俳優陣の演技力も見どころの一つでしょう。
やっぱりベタなジャンルも国が変われば一味違ってくるんだなと良い学びになりました。面白かったです。
このシーンがイイ!
カーチェイスのシーンで物語自体が一気にスピード感を増していく感じがしてよかったですね。シチュエーション的にはコメディらしいあり得なさそうなシチュエーションなんですが。
ココが○
良い意味で生々しく、家族の描き方が丁寧な点。ハリウッド量産系と比べると雲泥の差。
ココが×
まーそれでもやっぱりベタではあるので、突き抜けて面白かったとまでは行かないかなと思います。
それと家庭環境でも評価が変わるかもしれません。
MVA
主要メンバー皆さん良かったのでぶっちゃけ誰でも良いんですが、まあやっぱりキーマンなので。
チョン・ジュンウォン(ナギ役)
葬式に現れた幼い弟。
この子が上手でないと話にならない映画なだけに、当然いい演技でした。
子役然とした演技ではあるので、「私の少女」のキム・セロンみたいな凄みはなかったんですが、話の内容的にその方が良かったとも思います。


