なんプロアワード 2014

みなさま、あけましておめでとうございます。

今年もひっそりと続けていく所存でございますので、暇すぎてもう便すら出ねーよ、てな時にでもチラ見してやってください。

さて、今年も一発目はなんプロアワードでございます。全然おなじみでもないものの、もはや自分としてはこのまとめをやるために一年間映画を観ていると言っても過言ではないほど、悩ましく楽しい作業からひねり出される中身の無い長文企画。

はー、今年でもう6回目ですかー。なにげに続いておりますね。なんとなくね。

まあ、そんなわけで毎年恒例のご説明でございます。

「なんプロアワード」とは
前年に初めて鑑賞した映画の中から選んだベスト10と、主演男優 or 女優賞を発表する、どこかで必ず見たことがあるであろう百番煎じ的企画である!

[ルール]

  • エントリー基準は「その年初めて観た映画」
  • その中から勝手にベスト10を選定
  • そのため古い映画も入って来るという謎のベスト10
  • さらに生死関係なく、その年に観た映画に出ていた最もナイスな役者さんに主演男優 or 女優賞進呈

今年は(ババーン)から(どーん)に変更になっています。(どうでもいい)

さてさて、そんなわけで昨年の記録としましては、鑑賞本数は79本(うち再鑑賞3本)、劇場鑑賞本数は14本でした。(俺様調べ)

12月に「80本は観ないと!!」と焦って結局1本足りずに終わったんですが、今見たら一昨年は72本だったので、前年比としては微増ではあります。でもまあ少ないですよね。100本行ってませんから。

ただ12月から平日鑑賞も組み込むようになったので、今年はもっと増えることでしょう。少なくとも100本は観ます。まあ毎年言ってる気がしますが。増える増える詐欺。増毛法でしょうか。

劇場鑑賞に関しては、これでも地味に人生最高本数だったこともあり、去年は新作で良い映画が多かった印象。劇場に行くのは「まず間違いないだろう」と予想している映画であり、事実去年劇場に観に行った映画はほとんど外れがなかったので、最近は良い映画が増えてきてるのかなーと漠然と思っております。今年も劇場はたくさん行きたいですね。

[総評]

一昨年は満点が0本というバッドエンドに終わったわけですが、去年は3本、しかもどれも劇場鑑賞映画ということで、やっぱり数字上でも新作に名作が多かったという感覚を裏付けてるぞっと。サンプルとなる数字が少ない、とかそういう野暮なツッコミはやめましょう。

物を投げるのもやめてください。危険です。

ちなみに10本中劇場鑑賞映画が5本で、ちょうど半分という比率は過去最高。他にも入れようか悩んだ劇場鑑賞映画もあり、やっぱり過去作品より新作の方に良い映画が多かった気がします。

10本の順位付けに関しては、トップ3はかなり悩みました。2012年と同じぐらい悩んだ気がします。反面、下の方は逆の意味で悩みました。「これだ!」って思うような強い印象が残っているものが例年ほど無かったんですよね。なので、上位と下位には結構差がある気がします。

やっぱりこれで選出する映画は、観た時に「面白かった!」って思っても記憶に残る“何か”が無いとなかなか選びにくい面があるので、「面白いけどすぐ忘れる消えもの映画」みたいなものはあんまり入ってこない傾向にあります。

というどうでもいい自己分析を経て、以下どうぞ。

なんプロアワードベスト10・2014年版

『イントゥ・ザ・ワイルド』
イントゥ・ザ・ワイルド

成績優秀なおぼっちゃまが、親の敷いたレールを嫌って一人アラスカで生きて行こうとサバイバルの旅に出るロードムービー。

去年一発目に観た映画です。なので詳細はかなり頭から消えつつありますが、とてもとても考えさせられたことは覚えています。

自分に置き換えた時に最も考えさせられる部分って、おそらく(男女関係なく)「出会い」の部分な気がするんですよね。旅に出て、普通に生きていたら知り合えない人たちと出会い、別れ、その度に成長する主人公の姿というのは、やはり自分も外に出ないと、と考えさせられるものがあります。

結果的に彼がどうなったか、というのは関係なく、やっぱり外の世界を知らないと人間成長しないよな、と頭ではわかっていてもなかなかできない、そのもどかしさを映画を観ながらしみじみ思うわけです。

なお、この映画のレビューで「あてもなく旅に出る決意を」なんて書いてましたが、結局去年もどこにも行かず、口だけ野郎の本領発揮で大変反省しております。今年こそは…!

『アメリ』
アメリ

コミュ障少女・アメリの恋愛と日常。

フランス映画と言えばアメリ、っていう人も多いでしょう、ご存知オドレイ・トトゥ主演の名作ですが、ようやく昨年末初鑑賞、噂通りによく出来た映画だったよ、というお話。

風景、音楽、ちょっとファンタジーな演出、どれを取ってもハリウッドとは違う、ヨーロッパ映画らしい良さに溢れた作品ですね。

この映画の一番の良さはやっぱりその辺の雰囲気と、あとは深~いセリフの数々だと思います。これまた一つのきっかけで外に出たら人生が変わったよ、というお話なので、やっぱり「外に出る何か」って人生においてすごく大事なんだよな、と思うわけですが、そうは言ってもなかなかそういうのって出てこないんですよね…。まあ、自堕落なだけだとは思いますが…。

『ノッティングヒルの恋人』
ノッティングヒルの恋人

ある本屋の店長が、店にやってきた大女優とお近付きになるラブコメ。

これまた今更感のあるチョイスですが、ラブコメ史に残る名作の一つ。

もーね、何と言ってもヒュー・グラントですよ。この人の情けなさそうな一般人演技、最高です。もう使い古された言い回しですが、いわゆる「等身大」感が半端じゃない。

ヒュー・グラント自身はいい男だと思いますが、そういういい男感以上にダメっぽさが勝っているので、やっぱり同性としてもやっかむより応援したくなるイメージがいいんですよねぇ。

あとは同居人のキ●ガイとか友人関係がまたいい味を出していて、1対1の恋愛に終始しない感じがすごく好きです。

イギリス映画らしい良さ、そして何と言ってもリチャード・カーティスの作風。ホントにラブコメを作らせたらこの人の上を行く人っていないでしょうね。

『誰よりも狙われた男』
誰よりも狙われた男

ドイツ・ハンブルグでテロ対策チームを指揮する男を中心に、一人の青年を狙う諜報組織間の探り合い。

ジョン・ル・カレ原作の激渋地味スパイ映画。そしてフィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作です。

ほんとーに地味で地味で、もう寝る人続出だと思うんですよね。これは本当に劇場で観て良かった。家だったらきっと「集中できなかったので6.0点」とか言ってそうな気がします。

ここまで地味な映画はなかなか無いですが、当然ながらただ地味なわけではなく、ジョン・ル・カレらしいリアルスパイの世界で緊張感がほとばしり、どういう決着が待っているのか目が離せない展開が続きます。

音も静かで当然観客も誰一人話をせず、じーっと画面を見つめていながら、誰もがじんわり手に汗を握っているような、とても貴重な時間を過ごせました。今日は集中できるぞ、と思える時、特に夜にしっかり部屋を暗くして、携帯も切って何も妨害されない状況でじっくりじっくり観て欲しい映画です。

結果的に最後になったはずなのに前からわかっていたんじゃないかと思えるほど、フィリップ・シーモア・ホフマンの過去最高の演技も超見所。あの体型なのにあの渋さ、かっこよさにしびれました。

彼が死んでしまったことを思うと、ラストシーンも印象的。彼はどこに行ってしまったのか…。

『めがね』
めがね

あるゆるい南国の島にやってきた一人の女性と、島に住む人々のなんてこと無い日常。

6回目にして初の邦画ランクイン。どうも僕が観てきた邦画と言うのは、やっぱりハリウッド的な映画を目指そうとして失敗しているか、逆に「日本はこれだ!」って気合いが入りすぎて空回りしているものが多かった気がしますが、そんな中この映画の緩さはどうよ、と。

力を入れ過ぎないゆる~い作りの映画で、ものすごくリラックスしながら、ちょっとした笑いや綺麗な風景に癒やされまくる2時間弱。こんなに心地の良い時間を過ごせる映画もまた珍しいと思います。

本当に特になんてこと無い日常が流れるだけの映画なんですが、その中にちょっとした価値観を提示する深さもあって、「本当に豊かな生活とは」みたいな部分に思いを馳せることができる、とても懐の深い映画だと思います。

かなり気楽に観ながらも楽しめる映画なので、誰にでもオススメできる良い作品です。

『ミッドナイト・ガイズ』
ミッドナイト・ガイズ

元マフィアの男が28年ぶりに出所、出迎えた親友は「彼を殺す」使命を受けていた…。もう一人の爺を加えて爺3人、一晩の同窓会の最後に待つものは? アル・パチーノクリストファー・ウォーケンアラン・アーキン主演のジジイ・クライム・コメディ。

この映画はレビューにも書いた通り、エンディングがすごく惜しくて、エンディングさえもっとバチッとハマればもっと上に持って行きたかったんですが、逆に言えばそういう欠点がありながらもこの位置に来るほど好きな映画です。

映画ファンであれば揃って出てくるだけでもたまらないこの3人が、彼らの人生をなぞらえたようなセリフでコメディのくせに泣かせてくれるんですよ。笑いながら涙がツツーっと流れるような「たまんねぇな感」がたまんねぇです。

「親友を殺す」使命を隠さず、途中からお互い知っている状態で、それでも親友としての最高の一夜を過ごそうとする、その内面がもう本当にたまんねぇんですよ。

悩むクリストファー・ウォーケン、悟るアル・パチーノ。この二人の姿がもうずーっとたまんねぇんですよ。ホントに。

ずっと愛していたい映画の一つです。特に(その時が来て欲しくは無いですが)彼らが亡くなった後、より感じるものが多い映画になることでしょう。

この人たちが好きであれば、問答無用で観るべき映画です。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
オール・ユー・ニード・イズ・キル

規律違反のために戦場に送り込まれた戦闘経験ゼロの兵士が、死んでは前日の朝に戻る生活を繰り返しながら、地球滅亡を阻止するべく戦うアクションSF。

ご存知トム・クルーズ主演。日本人作家のライトノベルが原作ということで話題にもなりましたが、原作を知っている友人が観たところ「設定と名前以外オリジナル」とのことで、あまり原作云々にとらわれず、普通のハリウッド大作として観て差し支えないかと思います。

とは言え日本人の考えた設定だけに、死んでは戻る毎日でスキルアップしながら、徐々に大ボスに近づいて行く「トライ&エラー」のゲーム風SFは日本人としては直感的に楽しみやすい…かもしれません。

まあ、そんなどうこう以前にすごく面白いんですよ。単純に。テンポも良いし、繰り返しを活かした天丼ギャグ的な笑いもありつつ、ほんのり恋愛も絡ませながらの濃厚なSFはもう一度観たいと思わせる力作でした。

設定の妙を活かした展開もお見事で、ラストシーンも綺麗にビタっとハマります。あのラストの気持ちよさは鑑賞後の評価を引き上げてくれる素晴らしいもので、女性ならラストシーンのトム・クルーズにイチコロになること間違いありません。

『インターステラー』
インターステラー

地球が滅びに向かっている世界で、移住できる星を探そうと宇宙へ旅立った男と、残された家族の時空を隔てた物語。

悩んだベスト3、3位は変態クリストファー・ノーランの最新作です。パッと見ご都合主義的な展開だけは気になるところですが、どうも鑑賞後にいろいろ調べたところそれも一応それなりに理論があるとかないとかで、おそらくは「ご都合主義だな」と言われることを承知で、確信犯的にああいう展開にしたんでしょう。なかなか食えない男です。ノーラン。

その他の部分、映画としてはまったく文句なし。

本当に相変わらずこれほど濃厚な内容をきっちりまとめ上げるノーラン特有の世界観は圧巻で、娯楽としての映画の「一つの最終形態」を見せられる監督であることは間違いないと思います。

本人も語っている通り「家族で観られる」言わば大衆向けの作品ですが、その割に良い意味で難しく、でもきっちりまとまっているというノーランファンも納得の奇跡的なバランスを持った映画。こんな監督が、ハリウッドでも最も大規模なプロジェクトの大衆向け娯楽作品を撮るという今の時代がとんでもない気がしますね。

『グランド・ブダペスト・ホテル』
グランド・ブダペスト・ホテル

かつて隆盛を極めた名門ホテルで起こった殺人事件を舞台にした、ちょっとコミカルでビターなサスペンス。

いやー、この映画を観た時は「今年はもうこれ以上は無いな」と思ったんですが。それぐらい、ものすごく良かった。

ウェス・アンダーソン監督の最新作。この人の映画はすごく独特なんですが、でもこの映画の感想としては「映画らしい良さに溢れた名作」なんですよね。

オープニングからもう「ああ、これは絶対良い映画だわ」とわかる質の高さが全編にじみ出ていて、この映画を観ている2時間弱、映画ファンとしてこれほど幸せな時間はありませんでした。もうずっと「たまらんなぁ」とニヤニヤしてました。

独特ながら映画にしか出せない味わい、雰囲気を存分に味わえるというとても贅沢な経験の出来る映画だと思います。

最後がちょっとほろ苦いのがまたすごく好きで。この映画は観ないと間違いなく損します。ちなみにブルーレイ買いました。

『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』
アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

タイムスリップができる男子が、素敵な彼女を見つけ、大事な家族との日々を過ごし、本当に大切なものとは何かを見つけるヒューマンドラマ。

映画としての技術力、みたいなもので言えば「インターステラー」と「グランド・ブダペスト・ホテル」の方が上だと思いますが、ストーリーの人間力というか、より身近で心に触れる内容という意味で言えばこの映画がダントツでした。

また「インターステラー」と「グランド・ブダペスト・ホテル」は娯楽としての映画の楽しみを最大限味あわせてくれるものでしたが、この映画は持ち帰る部分、自分の人生に反映させる部分がすごく大きかった気がします。

例えるとすれば「インターステラー」と「グランド・ブダペスト・ホテル」はとても美味しい外食、この映画は最高の家ご飯のような。より身近で、大切にしたい映画という感じ。

リチャード・カーティスが最後の監督作品として手がけただけあり、その思いが存分に詰まっている、とてもとても素敵な映画です。そう、この映画は「面白い映画」というより「素敵な映画」。素敵という言葉が最も似合います。

リチャード・カーティスだけに恋愛映画っぽい気がしていましたが、実際は家族を軸にしたヒューマンドラマで、特に「父さん」とのエピソードは涙なしには観られません。僕は未だにこの映画が語るような“いい時間”を過ごせていませんが、それでもこの映画のメッセージは忘れずに覚えておかないと、と常々思います。

ライトで気楽に楽しく観られる映画ですが、その中には自分の人生を豊かにするためのヒントが詰まっていて、下手な説教よりよほど効きました。これだけの見やすさにこれだけのメッセージ性を込めた作りはお見事です。

オススメするのも悔しいですが、付き合いたてのカップルにぜひ観て欲しい。その時二人がこの映画を素直に受け入れられれば、きっと長く幸せになれると思います。薄っぺらい美男美女のベタ恋愛ドラマなんかとは違う、本当の意味でカップルが観るべき映画でしょう。

僕のように一人で観に行ってオイオイ泣いているのはきっとリチャード・カーティスにとっても不本意なことだったと思います。残念です。ごめんなさい。

謝っておきます。

勝手に選出・AOY(Actor or Actress Of the Year)

というわけで、最後に最優秀俳優 or 女優賞の発表。

毎回大抵その年に観た映画のうち何本かに出ている人を選ぶんですが、今回は(去年観た中では)1本のみに出ていた、この方に。1本でも十分すぎるほど、むちゃくちゃ素晴らしい演技を見せてもらいました。

ビル・ナイ

元々好きな役者さんではありますが、この映画での演技は他の誰にも真似できない、もういるだけで泣けちゃうレベルの素晴らしさ。

リチャード・カーティス作品の常連ではありますが、なんでも実は出演する予定は無かったらしく、監督の「本番は別の役者を使うんだけど、本読みだけ付き合ってくれる人のいい役者はいないか」と言う結構無茶なオーダーで連れて来られたのがビル・ナイだったらしいです。その時の演技が素晴らしかったので出演も決まったそうですが、得てしてとんでもない名演というのはこういう形で決まったりするものなんでしょうね。ぜひ、ぜひビル・ナイを観るためだけでも、この映画は観て欲しいと思います。

お得意のポーズで受賞に応えるビル・ナイさん

はい、そういうわけで今回のなんプロアワードはこれにて終了。

自分としてはやや小粒感のあった10作品ですが、トップ3は紛れも無くここ数年で観た中でもトップクラスの映画だったので、この3本だけでもぜひ観て欲しいところです。僕もブルーレイが出次第買ってまた観ます。

ではまた次回。みなさまも、そしてもちろん自分にとっても良い一年になりますように。というか自分が一番良い一年になりますように。まじで。

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