映画レビュー0509 『ノーカントリー』
今回もオススメされ映画の一つ。
ノーカントリー
普通に観ただけでは微妙かも。
コーエン兄弟最大のヒット作っつーことですが、コーエン兄弟と言えば僕が観たのは「未来は今」と「オー・ブラザー!」なので、これもあんな感じのちょい緩い映画なんじゃないの? と思ってたら全然違ってゲボー、みたいな。いや、面白かったんですが。思いの外ハードな映画でしたね。そしてちょっとシュールでもある感じ。
麻薬取引でいざこざがあったらしい現場にたまたまやってきた男が、たまたま見つけてしまった大金を持ち帰り、その大金を取り戻しに来た殺し屋に追われる物語。
概要としてはそれ以上でもそれ以下でもないわけですが、この殺し屋の描き方と、その背景に重ねているっぽいアメリカの姿に深みのある映画のようで、ラストは結構ポカーンものなんですが、いろいろ批評を読んでみると、なるほど深い映画だな、と思わないでもないです。
僕はおなじみの激薄レビューなので、そういった深みを提示することもなく、頭の悪い感想を書き連ねるだけになるわけですが、そんな立ち位置からすると、やっぱりちょっと「面白いけど…ウーン」という感じ。結構クセのある映画ではあると思います。
いつものごとく、ネタバレになっちゃうのでイマイチ伝えきれない部分があるんですが、いわゆる「映画のフォーマット」に則ると違和感のある展開になっていたりするので、そこが「面白さ」という意味では今一歩残念な感じがしたんですが、ただその「フォーマットから逸れた」ところにこの映画の意味があって、そこに最大のテーマがあるのも理解しているので、じゃあそこを期待通りにすれば良かったんかい、と言われるとそれもまた違うという。なかなか語るのも難しい映画です。
映画の雰囲気、ストーリー展開から期待するものを外すことで、見せたい・語りたい世界観を浮かび上がらせる感じ、とでも言いましょうか。なので、素直に観たところで期待外れになる確率は高いと思います。僕も実際そういう部分はありました。ただ、それでも独特の雰囲気にはたまらないものがあり、これはこれで(好きではないけど)すごい映画だな、という感じ。
まあ、あとは何と言ってもハビエル・バルデムでしょうね。この人の殺し屋っぷりしかないと思います。もちろんいつものようにジョシュ・ブローリンも良かったんですが、彼が霞むほど、ハビエル・バルデムすげーぞ、と。あの武器を使わせた、その設定含めて大したもんです。
あと彼を追うカウボーイハットの兄ちゃんの小物感ね。これも外せません。
このシーンがイイ!
これはやっぱり、ラスト前の「足裏確認」ですねぇ~。そのシーンを見せずともあれで語る感じ、好き。きちんと前フリも効いてるし。
あと序盤のお店のおっさんとハビエル・バルデムの絡みもすごく嫌な感じで良かった。気味が悪くて、何か嫌なことが起こりそうな雰囲気が。
ココが○
一応音楽担当も名前があるんですが、はて劇中に音楽って出て来たっけ? とまったく記憶に無いほど音楽のない映画でした。
ものすごい珍しいと思いますが、その遊びのない感じというか、音楽が無いことでキリキリとしたスリリングな雰囲気を作り出しているのがいいな、と。すごく独特の雰囲気を持った映画だと思います。
ココが×
どうしても展開的にはスカッとするものもないので、なかなか自分の中でどう折り合いをつけるべきか悩む部分があります。物語そのもので100%答えが出る映画ではないだけに、かなり好き嫌いが分かれそうな印象。
それとちょっと残酷な映画ではあるので、ひどくグロかったり、とかはないものの、苦手な人は注意したほうが良さそうです。
MVA
意外とジョシュの奥さんも良かったりしたんですが、まあこの映画はこの人意外に選びようがないでしょう。
ハビエル・バルデム(アントン・シガー役)
冷静ながらも狂っている殺し屋。
ある意味で狙い過ぎな感じもあるんですが、それ以上にやっぱりすごかったですね。このキャラ。あのオカッパヅラもすごいし。「スカイフォール」の時より全然すごかった。