映画レビュー0528 『ヴィンセントが教えてくれたこと』

「ビル・マーレイ主演のヒューマンコメディ」という事前情報だけで「こりゃ間違いなくいい映画だな!!」と鼻息荒く劇場へ行って参りました。劇場鑑賞映画は絵を描かなくて済むのでアップが早いです。(豆知識)

ヴィンセントが教えてくれたこと

St. Vincent
監督
脚本
セオドア・メルフィ
音楽
公開
2014年10月10日 アメリカ
上映時間
102分
製作国
アメリカ

ヴィンセントが教えてくれたこと

女、酒、ギャンブルにタバコが大好きな、気難しくてガサツな男、ヴィンセント。彼の家の隣に、旦那と別れた母親・マギーと子供・オリバーが引っ越してくる。翌日、オリバーは転校初日にいじめにあったために家の鍵をなくしてしまい、仕方なく隣のヴィンセントに助けを求める。悪態をつくヴィンセントだったが、お金に困っていた彼はシッターとしてマギーからバイト料をもらうことでオリバーの面倒を見るようになり…。

当然良い。いろいろ隙がないです。

9.0

まあ、やっぱり事前の想定通り「ビル・マーレイ主演のヒューマンコメディ」で外すわけが無いんですよ。ええ。もう四十になろうかというオッサンが、一人劇場でメソメソしてきました。

すごく良かったし、笑うポイントも結構あってしっかり楽しめましたが、ただこういう映画に(勝手に)期待したい「持ち帰って自分の人生を振り返る」ほどの中身では無いかな、という気がしたのも事実で、満点までは行かないかなという感じ。

主人公のビル・マーレイ演じるヴィンセントは、まあとにかく(全部が全部ではないものの)嫌な爺でダメ人間なんですよね。

人嫌いがはっきりと出ている受け答えに加え、金にうるさく、常にタバコを吸い、酒に酔い、女好きかつギャンブル大好き。下品でガサツ。絵に描いたような、ダメなまま終わりに近付いている男。

そこへ聡明で大人びた少年・オリバーがやってきて、彼とのやり取りを通して学び、成長し、そしてそのオリバーを見てヴィンセントもまた少しずつ変わっていく、というお話。

概要からすればありきたりな感じではありますが、遠慮無くダメさを隠さないデリカシーのない男が、常に語尾には「サー」を付ける、いかにも賢そうで育ちの良さそうな少年を競馬に誘い、バーに連れて行き、喧嘩の仕方を教え、環境や育ちを取っ払って「男同士として」友情を育む姿は、やはり観ていて楽しかったし、いいなぁとほっこりしました。

このヴィンセントとオリバーの対比がすごく効いていて、またオリバーのヴィンセントを嫌悪しない純粋さが爽やかで素晴らしい。ヒューマンコメディらしい作りではありますが、極端な衝突もないし、ゆるくお互いを受け入れつつ、かと言って劇的なドラマもなく、徐々に近づいていく距離感がとても気持ちいいです。

ヴィンセントが囲っている“夜の女”ダカもいいスパイス。ナオミ・ワッツと言えば「ザ・バンク 堕ちた巨像」「フェア・ゲーム」「J・エドガー」「インポッシブル」と観ましたが、そのどれからも受けた「賢そうで凛とした美人」というイメージがまったくない、まさに“ヴィンセントが囲っていそう”なガサツでダメそうな女を熱演。これがまた素晴らしかったですね。キャスティングを知っててもなお「え? これナオミ・ワッツ?? 嘘でしょ??」と疑いたくなるほど今までのイメージと違っていて、さすが女優さんだなぁと感心しきり。つるんでるくせにヴィンセントについて悪びれずに酷評するところもナイス。笑えます。

誰にでも楽しめる良い映画だと思いますが、基本は男と男の年齢差のある友情を描いた物語なので、男性の方がよりストレートに理解できる内容な気がします。欲を言えば、ヴィンセントのキャラクター的にはエロ的な教えが(やらしくない形で)あってもよかったかなと思いましたが、あのオリバー君のかわいさを前にしちゃうと多分女性客からの相当なブーイングが来そうな気もするので、それもまたやむなしといったところでしょうか。

それと僕がすごくいいなと思ったのは、いじめっ子とオリバーの関係。ああいうのってマンガ的だとも思いますが、一方でリアルに感じられる面もあるし、全然本線ではないもののあの二人の関係がまた物語に幅を広げていると思います。妙に強調して劇的な見せ方にせず、気付けば関係が変わっていた描き方も大好きです。

派手さは無いものの、ちょっとほっこりして笑って泣ける、まさに僕の好きな素敵な映画でした。こういう映画なら本当にいくらでも観られますね。オススメ!

このシーンがイイ!

ベタですが、やっぱりピークの発表会はちょっと…。普通に泣きました。わかっているけど泣いちゃうっていう、あれは持って行き方がうまいと思う。

一番笑ったのは親権争いの場面。あれもうまい。しっかり伏線回収。

あとはエンドロールもいい! バックでかかる歌をヘッドホンで聴いてるテイでビル・マーレイが水やりをしながらテキトーに歌ってるだけ…なんですが、観ちゃう。あの辺やっぱりさすがビル・マーレイ、芸達者。

客席は満席に近い状態でしたが、僕が確認しただけでは2人以外はみんなエンドロールが終わるまで座っていました。しっぽまであんこが詰まった感じ、素晴らしい。

ココが○

ヴィンセント、オリバー、オリバーのお母さん、ダカ、みんなキャラクターが尖り過ぎてないけど立っていてすごく良かった。リアリティのあるヒューマンコメディというのはもうその時点で良い映画なのが約束されているようなもんです。

それと、この映画の評価に関わるネタバレではないので書いちゃいますが、エンドロールの話でわかる通り、ヴィンセントは死なないんですよね。普通に日常は続くわけです。なんとなくタイトルから「死んじゃってそれで振り返るのかな」とか思ってたんですが、安易に死を使った感動に持って行かない作りが◎。これすごく大事です。

あとは劇伴。曲のチョイスが抜群。こういう場面を盛り上げる歌の選び方って本当に大事だと思いますが、完璧でした。サントラ購入候補。

ココが×

冒頭に書いた通り、できれば「自分の人生を振り返って考える」ような自分に対する影響力がある内容だったら良かったな、と思います。こういうジャンルにはそういう内容が多い気がするので、期待し過ぎな面はあると思うんですが。

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~」と比べるとそこがやっぱり弱い気はしました。ただアレは超名作なので仕方がないかな。

MVA

主要キャストはとにかくとんでもなく素晴らしかったですね。まったく隙のない布陣。

ナオミ・ワッツは上に書いた通り、とにかく別人か、って言うほど今までと違うイメージで驚き。

ビル・マーレイは高い期待をそのまましっかり受け止めてくれました。力が入ってないのがいいんですよね、この人。本当に自然体で、とんでもなくリアルな人物を作り上げる。エンドロールの惹き付け方はこの人ならではです。

ですが、多分この映画を観た人は、おそらく大半がこの人を選ぶでしょう。

ジェイデン・リーベラー(オリバー役)

もう観れば誰もが好きになるんじゃないでしょうか。こんな美少年はなかなか出てこないと思いますね。顎が割れている以外は欠点ナシ。

すごく賢そうで、純粋そうな雰囲気がとんでもないです。ほとばしってます。こりゃーもう洋ショタ界隈はえらい騒ぎになってるんじゃないかと思います。洋ショタ好きの方々は何が何でも観るべきでしょう。

演技も子役にあるまじき素直さで、自然体のビル・マーレイとは素晴らしいマッチング。このまま順調に育てば、男版クロエ・グレース・モレッツも言い過ぎではないと思います。

ジェイデン・リーベラー。映画好き、洋ショタ好きは名前を覚えておいた方が良いと思います。今後に期待!!!

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