映画レビュー0529 『ジャッジ 裁かれる判事』
これも劇場で観たかったもので、割と近めの場所でやってはいたんですがタイミングが合わずに観られず、また評価も芳しくなかったようなのでスルーしてました。ただ個人的に主演二人がよだれモノなので、やっぱり観ておきたいな、ということで。
ジャッジ 裁かれる判事
重厚な家族ドラマ。
やっぱり評判的にはイマイチのようなんですが、僕はひじょーーーーに楽しめましたね。久しぶりにかなり集中してじっくり映画を観られた気がします。2時間20分超えと結構長めの映画ではありますが、この手の映画が好きな人であれば、時間を気にする暇もないぐらい、しっかりとみせてくれる映画ではないでしょうか。
判事として長年品行方正と思われていた父の“殺意のあるひき逃げ疑惑”をきっかけに、都会で暮らす敏腕弁護士の息子が地元に戻り、過去のトラウマや人間関係を再構築し、父に認められなかった劣等感や「父親という存在そのもの」を克服する様を描いた人間ドラマです。(この辺、どことなく性別を変えた「黙秘」っぽさもありますね)
主人公が弁護士、弁護する父親が判事で、さらに裁判シーンも多いために「法廷ドラマ」っぽい雰囲気も強いんですが、実のところ「トラウマを抱え疎遠になっていた地元に戻る主人公」という構図通り、人間的な成長を中心にした人間ドラマとしての性格が強いと言えるでしょう。
とは言え、やはり(バリバリの法廷モノには劣るものの)それなりに裁判シーンにも力が入っている上に、なにせ主演が名優二人ということもあって、法廷ドラマとしてもそこそこ楽しめる美味しさがウリでしょうか。
はっきり言ってとても地味ではあるので、これまたダメな人はとことんダメな映画の一つでしょう。眠くなってもおかしくない気はします。とは言え、真相が判明しないミステリー要素もそれなりに残しつつ、人間ドラマなので裁判一辺倒ではない、元カノとかの周辺の人間関係を含めた複合的なストーリーは感情移入しやすいし、まあなんといっても役者陣が素晴らしい。
ロバート・ダウニー・Jrとロバート・デュヴァルのロバートコンビが親子だよ、ってだけでもうこれは観るしかねーなと思ったわけですが、蓋を開けてみたらそれに加えて「ワケありイイオンナ」をやらせたら(脳内で)世界一と噂のヴェラ・ファーミガに、ヴィンセント・ドノフリオがガッチリ脇を固め、さらに娘役のエマ・トレンブリーが超ラブリー。もうこの役者陣だけでたまらないわ、面白いわと思えることウケアイです。
ロバート・ダウニー・Jrはいつも通りやや軽さも感じさせる優秀な男の役柄ですが、今回は過去の自分に向き合う場面が多く、また父親との確執も頻繁に登場するだけに、いつもよりは悩み深く、苛立ちを見せる演技が多かった印象。しかしまあさすがの一言で素晴らしく演技がウマい。特に父親役のロバート・デュヴァルとのやり合いはどのシーンも素晴らしい見せ場になっていて、ゴッド・ファーザーファンもアイアンマンファンも納得の演技合戦と言えるでしょう。
Wikipediaには「驚くほど個性がない」と言う批評家の言葉も載っていましたが、確かに通して観ると目新しい話ではないと思います。過去と向き合い、親と自分を克服する男の物語でしかない、と言えます。
ただ、話の構成と演技力という意味で、そこまでバッサリ言うほどかなーと思うんですよね。ロバート・デュヴァルとロバート・ダウニー・Jrが怒鳴り合い、ヴェラ・ファーミガがミステリアスっぽそうだけど健気なイイオンナを演じる、とかもうそれだけでたまらないわけですよ。この辺に価値を見出だせる人であれば、きっと楽しめると思うんですが。
ぶっちゃけ事件の真相とかはどうでもよくて、力のある人たちがきっちりドラマを演じるだけで観られちゃうよね、というお話です。ただ、事件自体もきちんと着地はするし、終わり方もベタとは言え納得できるし、特に大きな不満を感じるような映画では無かったです。
人を選ぶとは思いますが、オススメ。
このシーンがイイ!
ロバート・デュヴァルとロバート・ダウニー・Jrのバトルはどのシーンも見どころで、どれも良かった。落ち着いてる時もあれば、激しい時もあるし、その都度その都度親子の距離感が見えてくる素晴らしい演技。
ココが○
ロバート・ダウニー・Jr主演らしい、ちょっとした笑いがありつつも、でもかなり真面目に寄った内容なので、彼のファンであれば必見と言っていいでしょう。いつもとは少し違った彼が観られます。
ココが×
地味な点を除けば、特に無いです。そこまで言われるほどありきたりな感じも無いと思います。
MVA
これはねー、ほんとに悩むところなんですが、やっぱりこの人でしょうか。
ロバート・ダウニーJr.(ヘンリー・“ハンク”・パーマー役)
アイアンマンとかああいう役に関しては、割と肩の力を抜いて6割の力で完璧に見えるような印象ですが、今作は感情的になって涙を流すシーンとか、彼の本気が見える感じがしてよかったですね。
優秀ではありつつも、実際はたくさんの穴を隠している人物を演じているので、その辺りの「一流になりきれない人物」っぽさもお見事でした。
ロバート・デュヴァルはもうかなりのお歳ですがさすがの存在感、言うことございません。
一点強調しておきたいのは、ハンクの娘・ローレン役のエマ・トレンブリー。初めて観ましたが、素晴らしくかわいい!
ルックス的にはどちらかと言うとフツーっぽくて目立って良いわけではないんですが、表情や声、動きがとんでもなくかわいい。こんな「子供として完璧」に愛らしい子役は他に観たことがないかもしれません。くどいようですが顔の作りが特段良いわけではないので、大きくなる前にきっちり稼いでいただきたいと思います。