映画レビュー0246 『(500)日のサマー』
周りの評価も非常に高く、ずっと観たかったコチラの作品。
ただ恋愛モノなので、素直に評価できるのかなぁという不安もありつつ…さて。
(500)日のサマー
映画としても、話としてもカンペキです。
「架空の物語ですよビッチめ」「恋愛話ではない」なんてオープニングのお断りがいじらしい。わかるわかる。
負け犬男子と勝ち組女子の真剣勝負、というところですが、“真剣勝負”と思っているのは男の方だけ、女の方は…ビッチめ! わかるわかる。わかるから泣いちったよチクショウ。
共感要素からすると、恋愛映画としては珍しく(?)、男向きの映画です。
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じる、いい男なのになーんか冴えない感じのトム。いわゆる「優男」って感じでしょうか。ネガティブさなんて共感しかできません。入り口の時点でマイナス思考になって諦めかけてる時点で、ものっっっっっっすごい自分と似てる…! と親近感がハンパ無かったです。
思いが残ってるのに振り切ろうと自分に嘘をついて、願いと逆の行動を取るところなんて痛いほどよくわかります。切ない。踏ん切り付けようと新しいことを始めようとする姿勢とか。すげーよくわかる。
対するズーイー・デシャネル演じるサマー。
序盤に語られるように、もう昔からどこにいても常にアイドルとして生きてきたような、間違いなく男に困ることは無いタイプの女性。「恋人は作らない主義」なんて言えるのも、その余裕がなせる技でしょう。余裕というか、昔から困らないから作らなくていいような価値観に育った感じ。
カラオケの日の夜、「私のこと…好き?」なんて聞いた時の表情たるや!!!!!!! あの表情に惚れない男がいたら教えて欲しい。カンペキなまでの演技と配役。「あの頃ペニー・レインと」でも気になってましたが、いやはやすげー女優さんです。
全体的にはライトでポップな流れの映画で、良い意味でコメディの香りを漂わせる恋愛映画と言った感じ。音楽の質・使い方も抜群に良く、全編通した心地よさと、男子的にずっと喉の奥の方にキューキュー感じる切なさの隠し味、カンペキです。
なんなんでしょうね。
超イイオンナ、しかも良い感じの関係。でも望む答えは得られない。ヤサグレてふてくされて、でも好きで好きでしょうがなくて、こっち向いて欲しい。でもきっと向こうはそこまで真剣じゃないし、っていう苦しさ。
やがて知らされる“答え”、その気付き。もう何も言えません。
すごく普通に誰もが共感できるような内容なんだけど、でもそう思わせるための脚本と演技、話の流れがしっかりしてないと上手く受け取れないものだけに、この映画のデキの良さがよくわかりました。カンペキです。おまけにそれを(上映時間含めて)「ライトに」描いているセンスが素晴らしい。
音楽の良さ、演出の質は、それこそあのズーイーさんつながりの名作「あの頃ペニー・レインと」っぽくてすごくいいし、恋愛映画としてのライトさで言えば「JUNO/ジュノ」っぽくもありますが、まあ何と言ってもこの「男子的に共感せざるを得ない」展開が秀逸です。聞けば監督さんは長編初監督だとか…スゴイ。
何度も書いていますが僕は恋愛映画が嫌いです。(最初にこの映画自体、「恋愛話ではない」とは断っていますが)
おまけに美男美女が主演。普通ならこき下ろすような要素ですが、結果的にはこれ以上の恋愛映画ってなかなか無いだろうと確信できるほどの名作でした。やられたなー。
最後のサマーとの会話、涙なしには観られませんでしたね…。
爽やかで切なくてちょっと笑える、映画として文句のない作品でした。
そしてラストのトム。もしかしたら、いつか自分にもトムが舞い降りて、背中を押してくれて、人生が動き始めるかも…? と思わせるようなエンディング。学ばせて頂きました。素敵な映画です。
ブルーレイ&サントラ買っちゃいそう。と言ってたら手元にもうサントラがある不思議。鑑賞日(日曜)のうちに注文してしまいましたとさ。
ちなみに他のサイトでとあるレビュアーの女性が、「あんな小さい妹にいろいろ言われたりしてまずトムが子供すぎてバカバカしい」みたいにこき下ろしていたんですが、それはちょっと違うんじゃないの、と思います。半分当たってるけど、半分間違ってる。確かにトムは子供かもしれません。バカかもしれません。
だがな…
子供でバカなのは…“男”なんだよ!! トムだけじゃねーんだよ!!! 男は死ぬまで子供でバカ、だからいいんじゃないか!!!
僕は確実にトムとは仲良くなれます。大好きだコイツ。
このシーンがイイ!
さすがに名シーンもたくさん、それこそカラオケの帰りの「好き?」もカンペキ、喜びに溢れた街中ダンスのシーンも最高だったし、サマーとトムの劇中最後の会話のシーンもすごく良かった。
ズルいよ。ズルい。サマー。そこに来る時点でズルい。
でもわかる。わかるけど、ズルい。
ズルいけど、すごくいいシーン。
ただ、一番は金夜のパーティのシーンでしょうか。理想と現実の二画面構成。
見せ方のうまさもさることながら、展開されるシーンすべてが痛い。痛い…ほどよくわかるんですよね。切なさMAX。。
ココが○
山ほどありますが、やっぱり見せ方のうまさってすごく大事だなぁと思います。
映画の主演にトムが出てきたりだとか、周りの人が愛を語るインタビューっぽいシーンだとか、いちいち見せ方がうまい。音楽もまた然り。今時の映画らしい、オシャレさも軽さもお見事としか言いようがなく、本当に長編初監督とは思えません。日にちの構成も見事だしね。
あとは結構笑えるのが良かった。この前の「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」よりしっかり笑ったぐらい。
ココが×
特にこれと言っては。
恋愛としての好き嫌いはあって当然ですが、映画としてフラットに観た場合、悪い答えは出てこないと思います。
MVA
いやーーーーーーーーーーーーーーー悩む。ものすごく悩む。
まず脇役として、トムの親友をやってたジェフリー・エアンドもよかったし、妹のクロエ・グレース・モレッツもちょいおマセな感じがピッタリ。でもやっぱりこの映画は主演二人に尽きます。どっちもカンペキに“それ”っぽい。演者としての力量で言えば甲乙つけがたいので非常に悩むんですが、今回はコチラにします。
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット(トム・ハンセン役)
コメディっぽさがあるだけに、表情もまたわかりやすく、明るい日の笑顔と落ち込んだ時の暗い顔、笑っちゃうぐらいの対比がいい。
実は「表情豊か」という意味では、ズーイーよりこっちかな、という気がします。もはや全米ならぬ全男が共感的な。喜び方、落ち込み方、そしてちょっとダメそうな雰囲気と、同性からも支持したくなる良さが溢れてましたねぇ。「インセプション」の時とは良い意味で違って良かった。
ズーイーはもう、この役をやるために生まれてきたかのようなルックスが文句なし。不思議と(トムから見て)嫌な感じの時は老けて見えて、惚れちゃうようなシチュエーションではとてつもなくかわいい、っていう変化もあってすごいな、と。ドレスアップした姿なんてズルいですよね。かわいすぎます。まさに“小悪魔”が動き回ってるような。ズルいわほんとこの人。
何回ズルい言うねん。