映画レビュー1525 『リバー、流れないでよ』

毎年恒例、レビューが貯まってきたので平日も更新するぞ時期がやってまいりました。早い。
とは言え更新は週末まとめてやって日付だけ平日に公開した風にしてるだけなんですけど。(ネタバレ)
今年は大晦日に2時間差で10本とかアップするような事態は避けたいとの思惑があり、少し早めに始めましたが実際どうなるかはわかりません。

さて、本日はタイトルからちょっと気取った映画なんだろうと興味なかったんですが、アマプラでちょいちょいCMを観させられて「ループもの」と知って俄然興味が出て観た次第です。
なおこれは配信終了間際ではないので普通に(記事公開時点)観られます。

リバー、流れないでよ

River
監督
脚本
原案

上田誠

出演
音楽
主題歌

『Smile』
くるり

公開

2023年6月23日 日本

上映時間

86分

製作国

日本

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

リバー、流れないでよ

能天気恋愛フェーズさえ無ければ…!

8.0
とある旅館にいた人たちが2分間のループに巻き込まれ、脱出するために奮闘
  • なぜか旅館で2分のループを繰り返す面々、当然抜け出したいのでなんとかしたい
  • 全員ループしていることを自覚していて、会話も蓄積するのが珍し面白い
  • 途中で能天気にデートする2人にイライラ
  • アイデア勝負の単館系感が好きな人にはたまらない

あらすじ

面白かったですね。いかにもアイデア勝負の単館系映画という感じで、こういう邦画はバンバン作ってほしい。

とある冬、京都にある老舗旅館「ふじや」が舞台。
仲居のミコト(藤谷理子)は川の畔で物思いにふけったあと旅館へ戻り、同じく戻ってきた番頭(永野宗典)とともに客室の後片付けをしている最中、またも川に戻って物思い。
あれ? さっきいたよね? と思いつつ旅館へ戻るとまたも戻ってきた番頭と客室の後片付け。「さっきこれやったよね?」と話しつつ片付けているとまた川に戻って物思い。
ループしてね? と思いつつ戻ると同じくループしてね? 顔の番頭と…と繰り返すうち、旅館にいる誰もが「ループしてね?」とやがて大騒ぎ。
延々と“〆”の雑炊を食べ続ける客や、何度火にかけても出来上がらない熱燗をセットし続ける仲居さん、原因を解明しようと理系アピールする板前等みんなで協力しながらループから抜け出そうと頑張りますが…あとはご覧くださいませ。

映画らしからぬセリフに笑う

2分間をループし続ける旅館の人々の話。ジャンルとしてはSFコメディ(タイムループコメディ)です。僕としても超好きなジャンルですね。
最初に書きましたが「登場人物全員ループしていることに気付いている」のと「それぞれが会話をしてループ前に戻ってもその以前に起こったループを覚えている」というのが今まで観てきたループものでは無かった作りで、そこが非常に新鮮で面白かったです。
もちろん他にもそういう映画はあるんでしょうが、少なくとも僕は観たことがありませんでした。
大体ループものは「主人公だけループしていてそのことに気付いている」「周りは毎回“その時が初めて”の時間を過ごしている」のが定番だと思います。「恋はデジャ・ブ」にせよ、「ミッション: 8ミニッツ」にせよ、「ネイキッド」にせよ。「ハッピー・デス・デイ」もそう。他にもあった気がしますが、とにかく全部そうでした。
オール・ユー・ニード・イズ・キル」はちょっと違って「他にもループを知っている」人がいましたが、実際にループしているのは本人だけ。
その辺考えるとやっぱり「全員ループしていてそれに気付いている」この映画は、ループものとしてはかなり特殊な部類に入るのではないかと思います。
セリフにも「次のループでまた集まってください!」とか「初期配置あそこなんで」とかおよそ他の映画ではお目にかかれないセリフが出てきて笑えます。初期配置て。
またループしている時間もたったの2分なのでかなり短く、そこも相当珍しいのではないでしょうか。
最初は「2分で話進むのか?」とちょっと心配しましたが当然そこはしっかり考えられていて、むしろ2分だからこそサクサク進むし仕切り直しのタイミングが早い分展開も早く見えるしでこれは相当な手練れの仕業だな…! と息を呑みましたよ。
その手練れ、僕は知らなかったんですが「ヨーロッパ企画」という劇団の主宰である上田誠さんが首謀者のようです。(言い方)
出演者もそのヨーロッパ企画の人たちが中心となっていて、そもそもこの映画自体「ヨーロッパ企画制作オリジナル長編映画」の第2弾ですよと。(ちなみに第1弾もこのあと鑑賞したのでまた後日レビュー書きます)

話を内容に戻しますが、この「ループに全員気付いている」珍しさは、それ故に一致団結してループから脱出しようとするチームプレイに繋がる点も面白く、そのおかげで(使い古された)ループものというジャンルにありながらもかなり新鮮に感じられるのが本当にお見事だと思います。
そしてその設定は主人公だけが気付いているケースだとなかなか話が進みそうもない「2分間」の制約も、(描写がない裏で)手分けして解決に向けて動いている物語にするにも都合が良く、つまり「主人公以外が物語を展開する」のにかなり使い勝手の良い設定なんだなと勉強になりました。これは本当に感心しちゃいましたね。なるほどな〜と。
「主人公だけループを知っている状態で抜け出そうともがく」話は、どうしても主人公視点ですべてを見せなければならない分制約も多いわけですが、この映画はその条件を取っ払っているのでなんならご都合主義的に「他の人はアレやってました」みたいな話も無理なく盛り込めるんですよね。次のループのときに出てきた脇役が「前回のループで俺がやっといたぜ」みたいなことができる、と。
これ、結構な発明だと思うんですよ。ループものの再発明。スイッチひとつ切り替えるだけで幅が広がるのは天才の所業ですよ。これは本当にすごい。

が!
そんな感心する作りの中、途中で主人公のミコトと料理人見習いのタクが恋人同士で…的な話が入ってくると一気にテンションダウン。
別にそれはそれでいいんですよ。そういう関係もあって当然だろうし。
ですが、途中で「じゃあ今デートしようよ」って2分間デートするフェーズが何回か続くんですよね。
これ、最後まで観てもノイズというか、全然いらないシーンだったなと思うんですよ。解決につながる何かを見つけてもいないし。
ただ能天気にデートするフェーズを何度か見させられ、これぞ本物の中だるみだなとかなり評価を下げました。他の部分が本当に良いだけに本当にもったいないなと思うんですが。
なんなら変な圧力でもかかってたのか? ってぐらいいらない要素なんじゃないかと思います。
もちろんここのフェーズでのアレコレが次につながって最終的に…という要素もあるんですが、別にデートさせる必要もなくない? っていう。
まあ単純に能天気なミコトとタクに苛ついたから文句言ってるだけなんですけど。
どうしても旅館内だけだと変化がつけにくいから外に出すためにデートを…という理屈もわかるんですが、とは言えたかが2分なので別の理由にしても全然成立すると思うんですよね。急に嫌になって主人公だけ逃走した、とかでも。
なんでこんなお花畑見させられないといけないんだよ、ってなんか妙に腹が立ってきちゃって。しかも繰り返し。(ループものだからそれはそう)
ここだけが本当に惜しい。
もちろんここがハッピーで好き、って人もいると思うのであくまで個人の好みの問題ですが。
僕はいらなかったなと思います。

これ以上無い観やすさ

ということで最後ブータレましたが、しかし全体としては非常に良く出来た面白い映画だと思います。
明かされるループの理由についてもやや強引ではありますがコメディなので許容範囲内といったところ。むしろ明かしてくれるだけ良い方。
90分無い上映時間にコメディ仕立ての2分間ループ、と「観やすさ」という意味ではこれ以上無いと思います。
何より邦画でこんな意欲的な作品が出てきたこと自体がとても嬉しい。
気軽に観られるので、未見の方はぜひ観てみてほしいですね。

このシーンがイイ!

序盤のそれぞれ気付いて確認する感じが好きでした。ループもので観た記憶がないシーン。

ココが○

これはやっぱり設定の良さでしょう。ループものでこの新鮮さはなかなか他にないレベル。

ココが×

やっぱり上に書いたお花畑シーンだけが惜しい。ちょっと浮いてる気がするんだよな、あそこだけ…。

MVA

最初からずっと女将さん綺麗だなぁゲヘゲヘと観ていたんですが本上まなみでした。髪が短いから気付かなかった…。
演者は初見のヨーロッパ企画の皆さんやその他の俳優さんたちに加え、その本上まなみとベテラン近藤芳正が加わった感じでなかなかいいバランスでした。
延々と雑炊を食わされる2人がニセバナナマンっぽいなと思いましたが、それはさておきこの人にしましょう。

永野宗典(番頭役)

番頭さん。人が良さそう。
なんか好きでした。旅館で働いてそう感が強くて。
こういうおじさんいるよな〜って思ったら同学年でびっくり、みたいな。まあもう僕も立派なおじさんですからね…。

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