映画レビュー0790 『スーサイド・スクワッド』
今回もね。ネトフリ終了間際シリーズということでね。
もうほうぼうから「イマイチ」って聞いてたし自分でも絶対イマイチだろうと思ってたんですが、一応観ておくか…ということで観ました。スーパーヒーローモノはこの「一応観ておくか」パワーが強い気がするんですが僕だけですかね。
まあ、この後の「ワンダーウーマン」に「ジャスティス・リーグ」も観るのであれば一応観ておくべきなんだろうな、っていうのがあって。
スーサイド・スクワッド
やっぱりイマイチだよね。
- 同名のDCコミックを原作とした(アンチ)ヒーロー映画
- 「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」の次作
- ベンアフ版バットマンもチラッと登場
いやーもうね、「イマイチだよ」と聞いててそれでも観て「やっぱイマイチだったな」って時の残念感たるやね。予想通りではあったんですが。「グリーン・ランタン」とすごく近い微妙感。なんだかなーDC。マーベルとのこの差は何なんだろう…。今のマーベルじゃなく、この時点でのマーベルともかなりの差がある印象でした。ちなみに僕が観たのは123分の通常版です。
すでに前作(バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生)の記憶もかなり薄れているところに鑑賞となりましたが、まあ要は「たまたまスーパーマンは良いやつだったから良かったものの、悪いスーパーマンみたいなヤツが地球に攻め込んできたらどうするんだよ」という(この世界における)現実的な危機に対応するには、地球にいる悪いやつらを利用すれば良いんじゃないか…ということで極悪服役囚たちをメンバーにした「スーサイド・スクワッド」爆誕、と。まあ共倒れされても一向に痛くないし、というような打算もあってなんでしょう。この動機はわからないでもないです。
序盤は彼らの自己紹介的ムービーがそこそこ長めに続き、シリーズ物として今後も出てくるから丁寧に…的な雰囲気がありつつももう続きが無さそうな残念感はどうしたもんかと。まあ興収は良かったみたいだから続編もあるかもしれないけど。
で、「チーム作るぞ」は良いとしてもですよ。なぜかメンバーとして選ばれていない、でも一番強烈な力を持っていそうな魔女“エンチャントレス”をプレゼンに利用して(ここがまず意味不明)アメリカ政府からOKをもらいつつ、そのエンチャントレスが暴走して最大の敵になりましたというマッチポンプっぷりがまずひどい。わざわざ己が土俵に上げといてーの「女性は土俵に上げちゃダメだからお前ら倒しに行け!」みたいな。
まあでも良いですよ。とりあえずこの辺は。ただ観ていて一番気になったのは、「悪い連中によるアンチヒーローチーム」のくせに主人公兼リーダー格であるウィル・スミス演じるデッドショットが完全に善人なんですよね。これがねー。ほんっとどんどん普通の話になってっちゃって全然面白くない。
こういう話なんだからとことん悪い連中がハメを外す感じが観たいんだと思うんですよ。普通。「こいつらどこまでやるんだ、味方なのか裏切るのかわからなくてドキドキだぜ…!」的な感じがまったくなくてですね。ただの言いなり犯罪者寄せ集め集団っていうのがもう…。もちろん当然ながら裏切れないようにそれなりに足かせはハメてるんですが、かと言ってそれにのうのうと従ってても悪役集めた意味が無いじゃん、っていう。
ただまあ原作ありきの映画なので、「原作がこうなんだぜ」と言われれば原作含めて文句言うしかないわけですが。にしても最初のコンセプトを活かさないキャラと展開にはちょっと厳しい感想を言わざるを得ません。
あとはやっぱり単純に能力的な問題。これも原作準拠だと思うので映画に対して文句を言うのも筋違いかもしれませんが、だったら映画化すること自体に無理があるんじゃないのかという気もする。
主人公格のデッドショットは超優秀ながら普通の人間のスナイパーなので、言ってみればマーベルでホークアイをリーダーにした映画を作るようなもの。地味すぎる。いっくら狙撃の腕が百発百中だろうが所詮は弾丸頼みですからね。亀仙人すら倒せませんよ。
ヒロイン的存在のハーレイ・クインもサイコパス以外にウリは見つからず、ただバットで殴るだけ。
ひどいのはブーメラン野郎ですよ。何あいつ。「キャプテン・ブーメラン」って完全にキャップの対抗馬的な名前ですが、ただブーメランを武器に持ってるだけの泥棒ですよ!? どうやって活躍するんだよ! 「悪いスーパーマンが来たら…」って即殺されるだろ!!!
結局“それっぽい”のは炎を操るディアブロさんぐらいで、それ以外はまー地味。爬虫類っぽいキラー・クロックさんもなんか身体細くてエーみたいな。CGミスってんだろこいつ!!
んでもってこの映画で最もネームバリューのあるお方、そうジョーカーさんですよ。あの。
ただそのジョーカーさんも結局は客演というか客寄せパンダというか、一応それなりにトリックスター的な絡みは見せつつもメインではないだけに物足りず。演じるジャレッド・レトも悪くないんですが…やっぱりメインの悪役として強烈な印象を残したヒース版ジョーカーと比べちゃうと少し線が細いというか、インパクトに欠ける気がしました。ただこれは役者の問題と言うよりは物語の問題だとは思います。
で、客演と言いつつも一応この映画の二本柱的な物語がハーレイ・クインとジョーカーの物語なんですね。メインはスーサイド・スクワッドの戦い、その次の柱ぐらいで。ただこれもなんだか…ハーレイ・クインご紹介ムービーとしての意味合い以上のものはない気がするし、そりゃあマーゴット・ロビーはかわいいけどそれだけで推されてもねぇ、という感じで。
まとめると、
- マッチポンプで悪役作り
- 集まったのはほぼ普通の人間
- 悪に描ききらないので中途半端
- ジョーカーさんはあくまで脇役
- メンバーのご紹介以上のものはない
という残念ムービーという印象でした。
どうしても中心に位置するタイプの人たちではないことはわかりきっているので、ヴィランとして今後の脅威につながるような凄みを見せてくれたりだとかしてくれないと「予習」としてもあんまり観る必要を感じませんでした。っていうかこの人たちまた出て来ることあるの?
なんとなーく推しっぷりからハーレイ・クインはまだ出番がありそうな気がしますが、それも結局はジョーカーとのバーター的な匂いが強く漂っているだけに、単品としての力強さに欠ける人たちをまとめてご紹介するも次はないぜ、というような嫌な予感がします。
ということで結論としては、正直観なくて良いんじゃないかと…。バットマンもそんなに食い込んでこないし…。
このシーンがイイ!
渋々ですが、デッドショットの「ミスった」のところかなー。
一応「物語として面白くするためにもっと悪く描けよ」とは思いますが、ただデッドショットはさすがにウィル・スミスなだけあって人としては好きでした。逆に言えばテーマ的にその人を好きにさせるようなキャラ作りしちゃダメだと思うんだけど。
ココが○
なんだかんだ言いつつも基本はアクションなので、寝ちゃうほどひどくつまらないというようなことはないと思います。一応それなりに観られるっていうのはこの手の映画の良さなのかなと。
ココが×
デッドショットのキャラの話につながるんですが、まーエンディングがもうね。ドベタでね。こういういかにもアメリカンなドベタエンディングを悪役メインのアンチヒーロー映画で観させられるとは思っておらず、余計にガッカリ。
MVA
ジューン兼エンチャントレスを演じたカーラ・デルヴィーニュがちょっとエマ・ワトソンっぽくてなかなかだったんですが、うーん…でもやっぱりこの人になるのかなぁ。
マーゴット・ロビー(ハーレイ・クイン役)
なぜハーレイ・クインとしてジョーカーの恋人になったのかが描かれるんですが、その前日譚の部分は(かわいいけど)ちょっと無理矢理な気がしないでもない。もうちょっと知的な人のほうが似合ってるような気がする…けどハーレイ・クイン後の雰囲気はお見事だと思います。頑張ってたんじゃないでしょうか。