映画レビュー0919 『ある日どこかで』

最近ネトフリは大人しめなため、古い映画を観ていくぞーということで今回はこちらをチョイス。

いわゆる「名作」として名前があがる映画でもあり、鑑賞後に知ったんですが「午前十時の映画祭」でも上映したことがあるそうで。

さらに実は「エンドゲーム」でも一言だけ触れられてたりする映画だったりします。

ある日どこかで

Somewhere in Time
監督

ヤノット・シュワルツ

脚本

リチャード・マシスン

原作

『ある日どこかで “Bid Time Return”』
リチャード・マシスン

出演

クリストファー・リーヴ
ジェーン・シーモア
クリストファー・プラマー
スーザン・フレンチ
ビル・アーウィン
ゲオルク・ヴォスコヴェク

音楽
公開

1980年10月3日 アメリカ

上映時間

103分

製作国

アメリカ

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

ある日どこかで

予想できる展開でも見せ方でハッとさせてくれる良作。

8.5
一目惚れした「写真の女性」にタイムスリップして会いに行く恋愛SF
  • 一目惚れした写真の女性を調べるうちに過去への行き方も調べちゃった系男子
  • しかし彼女は女優だったためにお近付きになるのも大変
  • お互い運命的な“何か”を感じつつも…
  • 恋愛演出の良さとSF描写の安っぽさがたまらない

あらすじ

クリストファー・リーヴと言えばやっぱり「スーパーマン」なわけですが、ちゃんと見るのは初めてでした。その後のこの人の不運な人生を思うと、こうして名作と呼ばれる恋愛映画に姿を残していること自体にグッとくるものがありますね。

そんなクリストファー・リーヴ演じる主人公、リチャード・コリアーは劇作家志望の大学生。在学中に手がけた処女作の舞台が大盛況でメデテェぞ、ってことでワイワイパーティーをしてたんですが、そこに誰も知らない上品な老婆が一人やってきて、彼のもとに歩み寄って言うわけです。「帰ってきて」と。

リチャード含めた一堂ポカーンで老婆はご帰宅、それから8年後にプロ劇作家になっていた彼は絶賛大スランプ中で、締切から逃げるようにスポーツカーを飛ばし、現実逃避のために偶然やってきたのは8年前に老婆が“帰宅”したグランド・ホテルでした。

暇つぶしにホテルの歴史を紹介する展示物を眺めていたリチャード、そこに掲げられた一人の女性のポートレートに目を奪われます。

この美女は誰なんだ、名前は…? ホテルで働く老人アーサーにいろいろ尋ねた結果、70年近く前にホテルで上演した舞台の主演女優、エリーズ・マッケナですよと。

今度は急ぎ図書館へ行って彼女のことを調べた(仕事しろよ)ところ、「生前最後の写真」として写っていたのは“あのとき”の老婆だった…! キヤー!!(ホラーじゃないよ)

不思議な縁を感じた彼はさらに彼女の付き人だった女性に話を伺いに行く(仕事しろよ)と、そこに置いてあった彼自信がかつて教えを受けた教授の本から「過去へ遡る」ことを思いつき、今度は教授の元へ仕事しろ。

ってことで教授にタイムスリップのヒントをもらい、いざ1912年へ行って彼女に会うぞと策を講じるわけですが…あとはご覧ください。

珍しいタイプの恋愛映画

そんなわけで「一目惚れした女性に会いにタイムスリップする」青年のお話なんですが、タイムスリップ自体はその後描かれるいくつもの映画のように大掛かりなものではなく、割合サラッと触れられる程度のもの。

感覚的には「アバウト・タイム」に近い印象でしょうか。体一つでタイムスリップして、そこで普通に生活しつつ彼女と結ばれようと奮闘する、どちらかと言うと恋愛映画としての要素のほうが色濃い映画です。

かと言って(当然ですが)そのタイムスリップがあんまり意味がないのかと言うとそういうわけでもなく、いわゆる“オチ”の付け方に効いてくるのは皆さんご想像の通り。

この当時の恋愛映画事情は詳しくないですが、やっぱりこれはなかなか珍しいタイプの恋愛映画だったんじゃないかと思いますね。

当然ながら「どう効いてくるのか」はモロネタバレになってくるので言えませんが、それによって印象深い物語に仕上がっているのは間違いないと思います。

個々の要素は普通でも、通して観ると素晴らしい

1912年に展開するメインの恋愛映画部分は(舞台の古さも相まって)割と古典的で、言ってみればどうってことの無い内容です。

お互い惹かれ合いそうな雰囲気が漂いつつ、その二人の恋路を邪魔する人間も出てくるし、言っちゃなんですが本当に目新しさのない恋愛映画ですよ。

ただその前後にタイムスリップ要素が挟まってくるので、観終わった後の感慨が「普通の恋愛映画」とはまったく違うわけです。

これはやっぱり企画の勝利というか、そのタイムスリップ的SF要素も含めて個別に見ていくと取り立てて珍しい話でもないんですが、それが1本のストーリーになると胸に迫ってくるという…いや良い映画ですねこれは。某ランドみたいな薄っぺらい恋愛映画とはまったく違いますよ。

演出は恋愛◎、SF△

恋愛映画部分は古典的でベタとは言え、ところどころハッとするような演出の良さが光るのもポイント。

僕は演出やカメラ割に詳しくないので、その辺で「おっ?」と反応するのも珍しいんですが、そんな“演出音痴”でもグッと来るような見せ方のうまさには唸りましたね。「うわー、オシャレだこれ」ってシーンが何度も出てきました。そのおかげで古典的でベタな展開でもしっかり観られた面もあったと思います。

反面、悲しいかな基本的に古くなればなるほどアラが目立ってきちゃうSF描写の方が少し引っかかったのも確か。

特に終盤の大事なシーンでは安っぽさが爆発してしまい、ものすごく残念だなぁと思いましたね…。

この映画におけるSFは特に技術的にそこまで凝る必要がある要素でもないだけに、そこへのこだわりは控え目にしてもう少し丁寧な見せ方にしても良かったような気はします。すごく大事なシーンだっただけに。

ずっと忘れないだろう印象的な映画

まあ80年の映画って言うともうほぼ40年前の映画になるわけで、となると古さを感じさせるなって言う方が無理なのは事実だし、あんまりそこに注目しちゃうのはかわいそうなのも確かでしょう。

ただそこさえ綺麗に作ってくれればもっとグッと来たよな、とも思うので、その辺含めてリメイクの話とか上がってても良さそうな気もするんですが。今のところ無いようです。

クリストファー・リーヴ主演、っていうのもあるのかもしれませんね。この人の元気な頃の映画をリメイクするのはなんとなく気が引けるみたいな。そんなこと無いんだろうけどなんとなく。

終盤までは割と平坦で終盤ググッと盛り上がってくるタイプの映画だと思いますが、この手の映画は鑑賞後にいろいろと(良い意味で)考えちゃう感覚があって、そこがまた印象的な映画でした。

やっぱりこの頃の映画は愛に溢れてる気がする。好きだから感じるだけかもしれませんが。

観客としての最終的な感情を書いた時点でネタバレになるのであとはネタバレ項に譲りますが、「面白かった!」という映画ではないものの、きっとずっと忘れない、思い出深い映画になるような気がしますね。これは。良い映画でした。

ある日ネタバレ

単語を書いた時点でネタバレ感出ちゃうのでこっちに書くことにしたんですが、この映画の「80年公開」という時代からもわかる通り、この終わり方はやっぱりアメリカン・ニューシネマの残り火的な面があったんじゃないかなーとふと思いました。

多分今の時代だったら、もっと明確なハッピーエンドにしたような気がするんですよ。戻ってこないか、もしくは戻ってきてもまた過去に行ける希望を見せて終わる、みたいな。根拠は全く無いんですが。

この映画も一応はハッピーエンドだと思うんですが、早い話がリチャードは死んじゃうわけで、どうしても悲劇的な側面があるじゃないですか。っていうか「悲劇だけどハッピーエンド」だからこそのこの後味の感慨深さだと思うんですけどね。

その悲劇的な側面はやっぱりアメリカン・ニューシネマの影響なのかなぁと詳しくないのに思うわけです。というか「アメリカン・ニューシネマ的なもの」が好きだからこそ結びつけたくなるのかもしれません。

また最後まで観ると、オープニングのエリーズによる「帰ってきて」の切なさがものすごく高まるのも良いですね…。

話としては1980年→1912年→1980年で終了ではあるんですが、あのオープニングを見せることである種ループものになる側面もあって、それ故にまた余計にいろいろ考えちゃうし切なさが残る、っていうのが素晴らしい。

リチャードが老エリーズに懐中時計をもらい、それを持って若エリーズと結ばれる直前に姿を消すことになって若エリーズは懐中時計とともに心を閉ざし、やがて歳をとってリチャードに渡し、もらったリチャードは若エリーズに会いに…と繰り返す物語になると。

このループ的な切なさ=何度やっても二人は幸せの絶頂で別れることになる作りが切なくて切なくて最高です。

このシーンがイイ!

すごく良いシーンがいくつもあったと思いますが、一番「おおっ」となったのは、窓越しに初めて(若い)エリーズがフレームインするシーン。

あの写し方はオシャレすぎて素敵すぎてもう…。

ココが○

最後まで観ると“つながり”が見えて、「じゃあこういうこと!?」といろいろ考えたくなっちゃう懐の深さは、古典的恋愛映画だけならなかなか難しいものだろうし、その面でも「タイムスリップ」を絡ませたSFの使い方が巧み。

ココが×

やっぱり大事なところで安っぽさが出ちゃった部分でしょうか。

古い故に仕方がないとは言え、あそこは本当に惜しいなと思います。

MVA

クリストファー・リーヴはさすがのイケメンだし、ポートレート一発で惚れさせるジェーン・シーモアの美貌も納得感があって良かったんですが、一番インパクトが大きかったのはこの人ですね。

クリストファー・プラマー(ウィリアム・F・ロビンソン役)

エリーズのマネージャーで、いわゆる悪役的ポジションの恋愛邪魔おじさん、なんですが…。

ご存知の通り、クリストファー・プラマーと言えば今も現役の大俳優でお爺ちゃん感がすごいわけですが、このときの彼はアラフィフでもうダンがディを着て歩いてるみたいな。ダンディが過ぎるわけですよ。

もうめっちゃイケオジなの。もう。これはイケオジマニア必見と言って差し支えないと思います。個人的に「シャーロック・ホームズの冒険」のクリストファー・リー以来の衝撃ダンディ。

ってか基本的にクリストファーはイケてるってことか!?

とにかくかっこよかったです。こんな50代憧れる…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です