映画レビュー0976 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

この映画はキャスト発表の時点でものすごく期待しておりました。おまけにスター・ウォーズの経緯もあって勝手にライアン・ジョンソン応援団的気持ちでいたため、余計になんとしても観に行くぞと。

でも今の日本ではあまり注目されていないようで、上映館も少な目だし気合い入れて公開初日のレイトショーで観に行ったのに最小スクリーンという憂き目に遭いましたよ…。

ちなみに忙しいのと無気力状態なのとでレビューを書いたのは観てから結構経ってからになってしまいました…。この先数本はそんな状態が続きます。

っていうか観に行ったのも結構前だしもう公開終わってるよね…。

※ジャケットの位置がずれてますが原因不明なので気にしないでください

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

Knives Out
監督
脚本
出演

ダニエル・クレイグ
クリス・エヴァンス
アナ・デ・アルマス
ジェイミー・リー・カーティス
マイケル・シャノン
ドン・ジョンソン
トニ・コレット
ラキース・スタンフィールド
キャサリン・ラングフォード
ジェイデン・マーテル
クリストファー・プラマー

音楽
公開

2019年11月27日 アメリカ

上映時間

130分

製作国

アメリカ

視聴環境

劇場(小さめスクリーン)

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

軽快かつガッツリミステリーで今後も期待。

8.5
とある富豪の死に召喚された敏腕探偵、動機がありそうな身内だらけの中、彼の推理は…
  • ダニエル・クレイグがちょっと癖のある探偵に挑む本格ミステリー
  • 事件の真相については早めに明かされるが…
  • 笑いどころも散りばめつつ、グロさも無く観やすいシリーズとして定着しそうな予感
  • 豪華キャストによる演技も見どころ

あらすじ

実はもうすでに続編の制作が決定しているそうで、となると当然ながら主役(ダニエル・クレイグ)が死んじゃってバッドエンド! 的なことはありません。っていうか普通無いけど。

まあそれだけ現時点ですでに評価が高い映画、ということなんでしょうね。実際その評価通りにしっかり楽しめる、久々にじっくり頭を使いながら堪能できた映画だったなぁと思います。

ある日、世界的に有名な推理作家で大富豪のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)の遺体がお手伝いさんによって発見されます。

死因は首を切ったことによる失血死のようですが、本人の手にはナイフがあり、血しぶきはそのままの形(要は誰かの身体に付着した跡がない状態)で飛散、他者が介入した気配はないことから警察は自殺と断定。彼が亡くなった当日は彼自身の誕生日パーティだったことから、念のためその日集まっていた親族一同に事情聴取を行いますが…その場には担当刑事二人の他に、よくわからない男が一人同席。

彼こそが今作の主人公、優秀な探偵として知られるブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)その人。

彼は差出人不明の封書によってこの“事件”の捜査を依頼されたとのことで、警察とともに事件の捜査に乗り出します。

事情聴取すると動機を持った人物がチラホラいてどいつもこいつも怪しい。しかし現場はどう見ても自殺…。

はてさて彼はこの富豪の死について、どのような結末を導き出すのでしょうか。

真相が明らかになってからが本編

もはや重要なポジションの爺はクリストファー・プラマーにやらせときゃ間違いない感がすごいわけですが、その爺さんの死の真相については実は割と早い段階で明らかになります。というか最近は割とこういう傾向が強いような気もしますね。最初の目的地が最後の目的地じゃないんだよ的な。

当然ながらネタバレ回避のために詳細は書けないのでわかりづらい言い方にはなっちゃうんですが…そんな流れなので、当然ながらここから一捻り二捻りあるわけです。僕としては「え? これが真相ならこれ以上転がしようが無くない?」と思いながら観ていたので、その予想を裏切った展開には唸りました。

ただすこーし期待とは違う方向に行った面もあり、(あくまで個人的な感想ですが)もうちょっとスッキリしたかったなと言う思いもあります。それは死の真相に関わってくる部分でもあるんですけどね。

ざっくり言っちゃうと事件として少し弱いんじゃないかな、みたいな思いはありました。

とは言え進行中のワクワク感はまさにこの手のミステリーのそれだったし、特に序盤は本当に小説を読んでいるかのようなじっくり推理モノ感が出ていてすごく良かったですね。好き。っていうか好き。

いつもとは違う役どころのキャストも見どころ

またよく言われる「豪華キャスト」にしても、それぞれに癖のある人物像なだけに「ただウケの良いキャストを集めました」的な人選ではなく、皆さん味もあるし癖もある、「豪華珍味対決」的なキャスティングだったのがとてもいいですね。

さすがに主人公のダニエル・クレイグは「ドラゴン・タトゥーの女」でも(職種は記者だけど)探偵的なことやってたし(そう言えばあれもクリストファー・プラマーとの共演でしたね)、無難なチョイス…かと思いきやこれがまた結構キャラ作っててですね。いつものダニエル・クレイグに古畑任三郎を足して二で割ったようなキャラなんですよ。「優秀な探偵」と言いつつほんのり胡散臭いっていう。

そしてそれがまた楽しそうなんだわ。多分「いつもの二枚目」とは違った役だからノッちゃったんでしょうね。役作りなのか、若干ですが太っておっさんみを増していたのもむしろ好ポイント。

同じく「世界一高潔かつご清潔」なキャップことキャプテン・アメリカが代表作のクリス・エヴァンスもですね、それとは正反対に「クソクソのクソ」とか言っちゃうクソボンボンを生き生きと演じていてこれまた楽しそうで何より。演者が楽しそうなのはやっぱり見ててこっちも楽しいし良いですね。

ちなみにクリエヴァさんはワンコ好きだそうですが、劇中では犬に吠えられて鬱陶しそうに「あっちいけ」とか絡み合っててそれもまた楽しそうで何よりでした。

他にも「シェイプ・オブ・ウォーター」でのクソ野郎が記憶に新しいマイケル・シャノンがまた違った雰囲気で出ていたり、演技派トニ・コレットが胡散臭いインフルエンサーになっていたり、「ヴィンセントが教えてくれたこと」で衝撃のショタ垂涎デビューを果たしたジェイデン・リーバハー改めジェイデン・マーテルくんも成長した姿を見せてくれたりとなかなか役者的な見どころも多く、飽きさせません。

古くて新しい懐かしのミステリー感が嬉しい

最近この手の「ガッツリミステリー」ってあんまり見ないと思うんですが、まさかライアン・ジョンソンにこういう才能があったとは嬉しい誤算と言うか。

なかなか今どきはテクノロジーが発達しすぎちゃってこういう話を作りづらい面って絶対にあると思うんですが、そこに果敢に挑戦して“古くて新しい”懐かしのミステリー感漂う物語を笑いも混ぜつつきっちり作り上げたのはお見事だと思います。早くも続編が決定しているも頷けます。何よりダニエル・クレイグも楽しそうだし。実際彼も続編にノリノリだとか。

ただ今作は一回限りの価値観提示的な側面もあるので、当然キャラは引き継ぐんでしょうが…次作は“ただのミステリー”になるのか、はたまた今作同様ちょっとした皮肉を込めていくのかも気になるところではあります。

最も“ただのミステリー”だから良くないというわけでもなく、どっちにしてもまたこの世界観が観られるのは楽しみだしぜひ観たいとは思ってますが。「オリエント急行殺人事件」みたいなオチは勘弁だけど。

今作に関しては総じてグロさも無駄なびっくり演出もなく、極めて観やすい良質なミステリー映画だと思うので、ちょっと興味があるなという方はぜひ観てみてください。

このシーンがイイ!

やっぱりラストシーンかなぁ。

ちょっとわかりやすすぎるシーンではあるんですが、それでもやっぱり何が言いたいのかをきっちり伝える良いカットだったと思います。お金を持ちすぎてるのも考えものだね、とビンボー人は自分を慰めましたよ…。

ココが○

本格ミステリーでありつつも良い意味で軽く、適度に笑いを挟む作りがとてもいいですね。

重くしすぎていないおかげで誰でも観やすいし、この手の映画らしく観客が推理しながら観ても「やっぱりそれかー」みたいになりにくい物語なのも良いのではないでしょうか。

ココが×

ネタバレにつながるので詳しくは書けませんが…スタートとエンディングで事件の性質が変わっているのが少しだけモヤりました。ただこれは振り返ると鑑賞中の自分の頭の理解が追いついてなかったせいなのかなという気もします。

MVA

脇役陣で言うとジェイミー・リー・カーティス(ハーランの長女で旦那に浮気されてる女社長)が良かったなーと思うんですが、選ぶのは…この人にしましょう。

アナ・デ・アルマス(マルタ・カブレラ役)

献身的なハーラン専属看護師で、嘘を付くと必ず吐くという特異体質のお方。

ご存知「この未来が来るなら一人で生きていく勇気が湧きました」と独り身の男性陣に希望をもたらしたブレードランナー 2049のジョイさんでお馴染みですが、今作ではただかわいいだけじゃない、なかなかしっかりとした演技を披露していてこりゃーこの先も売れるに違いないという確信を与えてくれました。

なにせこの映画のキーマンでもあるのでかなり重要な役どころなんですが、それをきっちり受け止めて演じきった力量はお見事です。かわいいし。

結局そこかよっていう。

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