なんプロアワード 2010

あけましておめでとうございます。

早速風邪引いて参ってますが、何はともあれ今年も一つ、よしなに。

ということで、新年一発目は毎年恒例…と言いつつも去年はベスト5だったので今年初的なベスト10。噂では本人が楽しんでいるだけという話ですが、実際楽しみでした。(告白

でも途中からめんどくさくなってきました。(同)

以下、おなじみ(でもない)のルールだぜ!

[ルール]

  • 今年初めて観た中で勝手にベスト10を選定。
  • よって古い映画も入って来ちゃう謎のベスト10なんだぜ。
  • 「面白かった」のと「印象に残った」のは違うんだけど適当にブレンドしてお届け。

去年観た映画は66本、うち初見は52本。

「目指せシネフィル」を合い言葉にしている割には少ないですが、実は一年間に観た本数としては過去群抜きで一番なので、「やー、今年は観たなー」という感慨もありつつ、ベスト10発表でございます。

あらかじめ書いておきますが、長いよ!

あと本レビューよりもネタバレ風味なのであしからず。

なんプロアワードベスト10・2010年版

『明日に向って撃て!』『スティング』
スティング明日に向って撃て!

どちらも監督はジョージ・ロイ・ヒル、主演にポール・ニューマンロバート・レッドフォードを迎えた作品。銀行強盗その他で名を馳せた二人組の逃走劇(明日に向って撃て!)と、師匠の復讐のために“大仕事”を画策する二人組(スティング)のお話。

いきなり反則気味に2本選出。どちらも非常に古い映画ですが、なるほどさすがにいまだに名作と言われるだけのことはあるな、と。印象的に非常に近いので、同率10位としました。

とにかくどっちも、一つ一つのシーンに「映画への愛情」が溢れていて、押しつけがましいわけでもなく、鼻につくわけでもなく、ただただ「映画っていいよね?」と優しく同意を求めてくる作品と言うんでしょうか。

「映画っていいだろ?」でも、「映画ってこれだよな!」でもない、「映画っていいよね?」なんなら「映画って…いいよね…?」という、奥ゆかしいご機嫌伺いみたいな。わかりにくすぎ。

きっと、監督をはじめ、他のスタッフも、キャストにしても、みんなが「楽しい映画が作れればいいじゃない!」ってなノリで作った感じというか、とにかく温かい“映画の良さ”に溢れた感じなのが印象的で。

この2作品は、さすがに古いので「イマイチ面白くなかった」っていう人がいてもおかしくないと思いますが、「こういう映画嫌い」とか「ヤダ」とか言う人っていないと思うんですよ。映画が好きで観ている人なら、きっとどっかしら琴線に触れる部分があるんじゃないかなーと思います。

『明日に向って撃て!』はラストのストップモーション、『スティング』もこれまたラストの“してやったり”なみんなの笑顔。どっちもすごく心に残る、名場面中の名場面だと思います。

古き良き時代を感じる、「この頃の、大らかな時代っていいなぁ」と思わされるような雰囲気もすごく好きです。

泣かせる映画じゃないんだけど、なぜか泣いちゃうような、雰囲気がすごく良い映画でした。

『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ

ガイ・リッチー長編初監督作品。一儲けをたくらむ4人が周りを巻き込んで展開する群像劇。

はっきり言って「そんなのありえねーだろ」と思うような、ご都合主義的な展開がどうなのか、という気もしますが、でもやっぱりラストの〆方が非常に好きで。

スナッチ」があまりにも似すぎてたので、こっちの評価も落としそうになりましたが、やっぱりこれはこれで監督渾身の作品というのがわかるような作りというか、やりたかったこともよくわかるし、それがうまくまとまっているような映画というか。

はっきり言って、ガイ・リッチーの映画は“狙いすぎ”な部分が目についてあまり好きではないんですが、この作品に関しては長編一作目で意欲的なのもよくわかるし、その意欲が画面に出ていたような感じがして、その分勢いが違ったような印象があります。

やっぱり監督の長編一作目って特別なモノが見えると思うんですよね。後々有名になる監督であれば余計に。

そう言う意味で、この映画はきっとガイ・リッチーのやりたかった思いがストレートに詰まっていると思うので、その分「スナッチ」含めた後発映画よりも良くできてるような気がします。

『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

ケヴィン・スペイシー主演のサスペンス。死刑反対運動家が、同じ死刑反対運動家の殺人犯として逮捕され、記者に無実を訴えるのだが…。

ケヴィン・スペイシー主演である以上、ある程度ラストの部分は読めちゃうんですが、それでもやっぱりよくできてました。

今の日本で、まったく同じことをやったとしてもまったく同じ展開になるんじゃないか…というぐらい、リアリティのある展開に、サスペンスとしての味わいというか、デキのよさをしみじみ感じますね。

実はサスペンスでありつつも、真実の部分がすべてではなくて、そこに至るまでの容疑者と被害者、そしてカウボーイの心、思いの流れなんかも考えると、すごくよくできた「啓蒙活動」でもあったりするので、頭の良い人が一つのことを目指すとこういうことが起こり得るんだな、やっぱり法律も完璧ではないんだな、と思わされるような。

なんというか、こう…むき出しの知性を見せつけられたような、「フィクションだしね」で片付けられないような怖さを感じる映画でした。

『ラッキーナンバー7』
ラッキーナンバー7

豪華キャストで贈る復讐劇。オシャレさだけじゃない骨太のストーリーが魅力のサスペンス。DVD買っちゃったよ作品その1。

展開としては「そんなバカなマフィアいるかよ」とかいろいろツッコミどころはあった気がしますが、それより何より主演のジョシュ・ハートネットの変貌ぶりがすばらしく、あっさり騙されましたね。

そもそもサスペンスだと思って観てなかったのでそういう部分で裏切られた点もあるとは思いますが、それを抜きにしてもよくできてたと思います。

さすがに豪華キャストを充てただけあってキャラクターもしっかりしていたんですが、中でもレビューにも書いた通り、やはりヒロインのルーシー・リューの演技が特筆モノで。

あのルーシー・リューのかわいらしさと、ジョシュ・ハートネットのヘラヘラしたダメっぽい感じで変な“先読み”を封印する感じがウマイというか。

「なんだよ恋愛モノかよー」とか「こいつらダメそうだなー」と思わせといて…! っていうのが良かった。

『ディパーテッド』
ディパーテッド

マフィア・警察それぞれに潜入した二人のスパイのせめぎ合いを描いた、香港映画のリメイク作品。

リメイク元の香港映画「インファナル・アフェア」の方がイイ、とよく聞きますが、僕はこっちも大満足でした。(インファナル・アフェアは未見)

マフィアと警察それぞれに潜入した裏切り者がいる、というシチュエーション自体がもうすでに大好物。少々長めの映画でしたが、ダレることなく、スリリングに楽しませてくれました。

惜しむらくはラスト。楽な方に流れちゃったのが非常に残念。

『レオン』

殺し屋と少女の奇妙な同棲生活を描いた、アクション風味のドラマ。ブルーレイで買っちゃったよ作品その1。

少女が恋愛に絡んでくる、というのはさじ加減が非常に難しいと思うんですね。近すぎるとロリータ的な映画になっちゃうし、遠すぎると何も残らない感じになっちゃうし。

この映画はその辺のさじ加減が非常にうまくて、お付き合いする前の感情をうまく描いている感覚と言うか、レオンの奥手な感じ、惹かれてるのがわかりつつも惹かれようとしないようにしているような感じの表現がすごくよくて。「少女とオッサン」という構図の時点で、お互いがうまくいかないであろうことがわかってるような前提があって、その上で心の動きが見て取れるような作りが良かったですねぇ。

そして忘れちゃならないのが悪役のゲイリー・オールドマン。あのオープニングの、天を仰いで身震いするシーンがものすごく印象に残ってます。完全にイッちゃってる演技が衝撃的でした。

『列車に乗った男』
列車に乗った男

街にやってきたオッサンと、そのオッサンを泊める爺さんのやりとり。

自分の中では、5位までと、4位以上は結構開きがあります。

この作品は、レビューにも書きましたが「ここがいいぜ!」とか書けないんですよね。何が良いとか悪いとか言えないんだけど、良いっていう。

「何か面白い映画知らない?」って言われても、オススメする映画には入らない気がする。でもものすごくよかったし、ものすごく印象に残ってます。印象という意味では一番かも。

結局は、お互いに「自分に無いもの」を見出した二人が、そのことへの憧れも未練も語らないまま自分の人生を閉じていく話なんですが、完全ムッツリで墓場まで、という話でもなく、途中で室内履きを履いたり拳銃を撃ってみたりして、相手への憧れを感じさせる部分があるわけです。それを踏まえてのラストが…。

すごく切ない気もするし、でも幸せなんじゃないかと言う気もするし。この味わいは本当に不思議でした。いまだに不思議。

この映画は完全に大人向け、しかももっと言えば男性向けだと思います。

結局、自分の理想通りに生きてる人なんてわずかだし、理想通りに行ったとしても、隣の芝生が青く見えたりするわけで、そういった自分の人生への自信のなさをうまく突いてくるような、誰もが持つ傷を優しくなでてくれるような味があると言いますか。

なんてことないセリフになんてことない日常がかぶさるだけの映画なのに、やたらと心に残っちゃう映画でした。こういう映画が他にあるならぜひ観たいですね。

あとDVD欲しいけど高い、っていう。

『月に囚われた男』
月に囚われた男

ほぼ全編サム・ロックウェルの一人芝居で贈る、「月勤務」の男の物語。ブルーレイ買っちゃったよ&サントラも買っちゃったよ作品その1。

この映画はものっすごい好きです。多分しょっちゅう観ると思う。しょっちゅう観る映画なんてそんなに無いんですが、これは観ますね。

内容もそうですが、とにかく映像と音楽がすごく「一人の夜」に合っていて、しっぽり飲みたいとき、妙に寂しいときに打って付け。ある意味では独特の雰囲気を持った映画だと思います。

この映画はいわゆる低予算映画ですが、それは後で知ったことで、最初に観た時はまったくそんな感じがしなくて、むしろやたらと月面の映像が綺麗でよくできてるなぁと感心したぐらいでした。

確かに「低予算映画です」と言われれば、なるほどだから一人芝居なのか、とか月面なら大したセットもいらないし好都合だね、とか思うんですが、逆に言えば低予算をうまくシチュエーションにはめ込んで成功を収めた監督のセンスが伺える作品です。

途中の、サムが「家に帰りたい」苛立ちから背もたれにひじ鉄を食らわせるシーンと、奥さんとの出会いを語るシーンがとてつもなく切なくて、何回観ても泣いちゃいそうです。

そしてその寂しさを増長する音楽も秀逸。映像、ストーリー、音楽、どれをとってもすばらしい。

ラストに関しては否定的な意見が目立ちます。

僕も同じく、あのラストのセリフは無い方がよかったんじゃないかと思うんですが、同じブルーレイに入っていた特典映像の短編を観ると、「ラストはわかるでっしゃろ」的な、最後まで観せない展開なんですよね。

そういうやり方も引き出しにある監督が、この作品でああいうラストを持ってきたということは、きっと全部わかってやってるんでしょう。「あのセリフいらないでしょ」と思われるのも承知で。

ということは、きっとさらにその先を考えてね、という意思表示か、多少でもハッピーな方に結末を持っていきたかったのかのどっちかかな、と。

確かにちょっともったいないような気もするんですが、監督自身がわかってやってるのであれば、それはそれで一つの答えなので、逆に「監督は何を言いたかったのか」を考えるのもこの映画の一つの見方のような気がします。

いずれにしても、ラストどうこうで評価が覆るようなヤワな映画ではないです。

ダンカン・ジョーンズ監督には、この無情なまでの切なさを感じさせてくれるような映画をまた作って欲しいですね。

『インビクタス/負けざる者たち』
インビクタス/負けざる者たち

南アフリカで開催されるラグビーワールドカップと代表チームをシンボルに、人種差別を乗り越えて一つになっていく国の物語。ブルーレイで買っちゃったよ作品その2。

実話をベースに展開するスポーツモノ、という時点で既に相当な好物ですが、ここにクリント・イーストウッドがさすがの味付けをしてくれたおかげで、超爽やか、かつ後味スッキリな極上の発泡酒的な味わいに仕上がってました。

クリント・イーストウッドらしい嫌みのない、淡々とした展開でありながらもグッと惹き付けてくれる作りが本当にすばらしく、さらに主役の一人であるモーガン・フリーマンの雰囲気も相まって温かさ満点。

人種差別というテーマは、割と「泣けるやろ? ほれ泣けるやろ?」と「こうすりゃええんやろ?」のストリッパー塚地ばりに迫ってくるようなあざとさが目立つ映画が多いんですが、この映画はそういう部分がまったくなく、でもしっかりとさりげなく人種の対立要素を描きながら、段々と一つになっていく国を見事に描いていました。

唯一、飛行機で“煽った”シーンだけいらないと思いましたが、まあ一つだけなのでご愛敬ということで。

キャスティング的にも、マンデラ大統領役のモーガン・フリーマンと、ラグビー主将役のマット・デイモンはもちろん、その他の脇役陣も文句無し。音楽からエンドロールまで完璧でした。

『インセプション』
インセプション

自分の犯罪履歴を抹消できる人物から、抹消の条件としてターゲットへの潜在意識の“植え付け(インセプション)”を依頼されたコブは、二人の子供に会いたい一心で依頼を受ける。ブルーレイ買っちゃったよ&サントラも買っちゃったよ作品その2。

今年はもう、これしかなかったですね。

1回目の先行上映で戦慄、2回目で感心、3回目で号泣。同じ映画を観に3回劇場に行ったのも実は初めて。

今年一番というよりは、ここ10年で一番でした。人生で一番…の可能性すらありましたが、これはちょっといろんな観点が出て来ちゃうのでまた別の話。

よく「わからなかった」とか「難しかった」とかも聞くんですが、僕はこの映画はそう難しいとも思いません。多分、向き不向き。もっと言えば、映画の見方の個人差かなと思います。

考えて観るのが好きな人はきっと向いてると思うし、ほっといても入り込める映画が好きな人にはきっと向いてない。

「わからなかった」っていう人も決してバカってわけじゃないと思うんですよ。きっと「わからなかった」より「受け付けなかった」という感じで、物語に入り込むほど集中できなかったんじゃないかと思います。

もう一つ、「わからなかった」理由としては、この映画のベースのジャンルはサスペンスだよ、ってところでしょう。

事前情報からアクションとかSFを想像(期待)しちゃうのもわかるんですが、物語のベースにあるものは間違いなくサスペンスだし、さらに言えばそこに人間ドラマが被さってるわけです。僕はこのサスペンス+人間ドラマっていうのがとてつもなく大好物なのでバチッとハマりましたが、SFやらアクションやらを期待して観た人が「うーん」ってなっちゃうのもわからないことはないかなーと。その「SFアクション大作の化粧を施したサスペンスドラマ」っていうジャンルが、世の中の評価をややこしくさせてるんじゃないかと。

その他矛盾点なんかもいろいろ指摘されてますが、ここで声を大にして言いたい。

面白かったら矛盾なんてどうでもよくなるんだよ!

と。

逆に言えば、面白くない映画は矛盾点ばっかり気になるんです。そういうもんなんです。わかりやすいのは「24」。引っ張りとか煽りのための矛盾のオンパレードですが、でも「面白いからいいや」となるわけです。

そういう“矛盾が気にならない勢い”がこの映画にはあるし、逆にそう感じられなかった人は矛盾をつきたくなるんでしょう。この辺ももしかしたら「向き不向き」の部分かもしれません。

この映画はいろんな解釈ができる映画だけに、人様の感想を観るのが非常に楽しかった、というのも書いておきます。

「面白かった!」っていう人たちと集まって酒を飲みながらあーだこーだ意見を交わしたい、そんな映画です。

勝手に選出・AOY(Actor or Actress Of the Year)

さて、勝手に最優秀俳優or女優賞。

こちらも1位同様、この人しかいないなーと勝手に決めていました。

レオナルド・ディカプリオ
レオナルド・ディカプリオ
温暖化対策に熱心なところをアピールするディカプリオさん

もはや一番お気に入りの役者さんと言っても過言ではありません。演技超うまい。苦悩する役が似合いすぎます。

だからこそ、今度はもっと明るい役も観たいと思いますが。でもうまいからなー。

ディカプリオのやってる役って、もう今他に出来る人っていない気がするんですよ。オンリーワンのポジションを確立したと思います。

今年も期待大。お見事!

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