なんプロアワード 2017

去年「メッセージ」を観に行った時、上映前に「映画は人生を変える。私の5%は映画でできている」みたいなキャッチコピーのCMが流れまして、確かにそうだな良いCMだなと思ったんですが、仮にこのブログも映画という括りに入れるとすると、こと2017年に関しては20%ぐらい映画だったな、ということでもっとやることあるだろオマエ、と自分にツッコミを入れつつあけましておめでとうございます。

記念すべきブログ移転第一回目の記事は、新年おなじみなんプロアワードでございます。ただいま頂きもののゴディバのビスキュイという高いおやつを食べながら書いております。今食べ終わりました。(速報)

特段ここにアカウントは晒しませんが、去年は「映画情報を拾うため」と「スプラトゥーン仲間を増やすため」を理由にツイッターを再開しまして、さすがに映画好きの皆さんは新作映画もたくさん観ていて、去年の年末に「今年のトップ10」ということでたくさんの方々がこれがいいぞと言っていたのを横目で見つつ「俺そんな新作観ねーしトップ10はなんプロアワードでしか言わねーし」と斜に構えてアウトローを気取っておりました。

ちなみにツイッターの方でもこのブログは特に公表していないんですが、それはやっぱり「ファイト・クラブ」とか「トレインスポッティング」が好きな人が多くて(このブログを)ご紹介するにも忍びないということに加え、あろうことか他の人に「ディナーラッシュ」を勧めている人が2人ほどいたりしたので口が裂けても言えません。

やっぱりツイッターは相互関係のツールなので、あんまり自由に言えない部分はどうしても出てきてしまうということもあって。己のダメさを含めた本当にドス黒い部分まで好き勝手言うというのがブログの良いところなので、双方を結びつけるのはよくないよなといろいろ考えつつですね、だんまりを決め込み

観客「自分語りが長ぇぞポイポイポイ!!!」

アナウンサー「ものは投げないでください。危険です、ものは投げないでください」

気を取り直しましてなんプロアワード、今年で9回目となりました。

ご覧の通り、去年はこのブログの移転作業という自分の中での大事業がありまして、改めて過去の記事をチェックしつつ進めていたわけですが、まあ本数としては大したことはないものの、さすがに9年間も続けているのは我ながら少し褒めてあげていいなと思います。

ただ映画を観るだけなら全然できると思うんですよ。こう言っちゃなんですけど。普通にたくさんいる話だし。

+レビューだってまあマメな人ならできると思いますよ。ノート書いてる人だって多いみたいだし。

…と考えていった結果、やっぱりジャケ絵がね。よう描き続けたなというのがね。感慨深いですね。

超ヘタだし何せ描きたくないですからね。何度も言ってますが。開設当初から嫌々描いて今も嫌なのに続いている、っていうのがなんなの? と。ドMなの? と。

それなりに理由をつけて始めた結果、こんな人も来ないクソみたいなブログの中で唯一のオリジナル要素として続けなければいけないんじゃないか、と割と真面目に考えて結局今も

観客「またかよ自分語りポイポイポイ!!!」

アナウンサー「繰り返します。ものは投げないでください。危険です、ものは投げないでください」

長い茶番で引っ張っておりますが、いい加減本題に入りましょう。

「なんプロアワード」とは
前年に初めて鑑賞した映画の中から選んだベスト10と、主演男優 or 女優賞を発表する、少しも珍しくない誰の目にもお馴染みな企画でございます。

[ルール]

  • エントリー基準は「その年初めて観た映画」
  • その中から勝手にベスト10を選定
  • そのため古い映画も入って来るという謎み
  • さらに生死関係なく、その年に観た映画に出ていた最も良かったと感じた役者さんに主演男優 or 女優賞進呈

〈2017年雑感〉

そんなわけで昨年はこのブログ移転作業がですね。WordPressのお勉強とデザイン決定まで2か月程度、その後毎日5本ずつとか10本ずつとかの記事作成を5か月程度繰り返し、最後の2か月でそれらの修正とリンク貼り直し作業を進める、というスケジュール感で本当に4月以降は毎日ブログをいじっていたので、とにかく自由時間に関してはこれに対する時間の消費が一番多かったと思うんですが、その上ちょっと家での副業も開始したりそれに合わせて心機一転部屋の模様替えをしたり同時に整理整頓したり、さらには副業に合わせてPCもWindowsからMacに変えたりといろいろと(小さいながら自分としては)激変の一年でした。

おまけにスプラトゥーンも出ちゃったのでそれもやるし。そりゃあやるし。

ということで去年もやっぱり大して観られず…と来そうなところですがこれが意外と結構頑張りまして、最終的には鑑賞本数107本(うち再鑑賞1本)、劇場鑑賞本数は10本となりました。

劇場鑑賞本数はもうハナから捨てていたというか、そんなわけで忙しいからそんなに行けないだろうし厳選して本当に行きたい映画だけにしようとかなり早い段階から決めていたため、本数は物足りないんですがまあやむなしかな、と。

10本ですからね。「2017年公開映画トップ10」なんてやったらそのままそれがズボッと収まるという酷さですよ。レンタルでも去年公開の映画は観ていないはずだし。

とは言え全体の鑑賞本数はなんと2012年以来5年ぶりに100本を超えまして、忙しい中久々に3桁行ったのは素直に嬉しいところです。

  • 2009年 21本(途中から開始)
  • 2010年 66本
  • 2011年 111本
  • 2012年 141本
  • 2013年 72本
  • 2014年 79本
  • 2015年 56本
  • 2016年 81本
  • 2017年 107本

本数増については間違いなくツイッターの影響が強く出ていて、「みんな観てるし自分ももっと観なきゃ」みたいな焦りにつながる部分もあるし、自分の知らない面白そうな映画の情報が流れてきて観たくなるのもあるし、このブログよりかは多い人たちに向けて「こういう映画があるよ」とお知らせできるモチベーションが手伝ってくれた部分もあると思います。

それに加えて今の今まですっかり忘れていましたが、Netflix加入も去年の話なのでやっぱりこれも大きかったのかなと思います。配信終了が迫って来ている観たかった映画とかがあると多少は無理してでも時間空けますからね、やっぱり。

ただまあ何度か書いていますが、映画鑑賞というのは鑑賞本数を競う競技ではないので、あくまで割合的に「107分の10」という感覚で捉えてもらえればいいかなーと。

約1割というと選出する本数の割合としては結構多い気はするんですが、とは言えやっぱりそれなりに良い映画があって迷いつつの10本なので、今回もなかなかいいリストになっているのではないかと思います。ね。

[総評]

なにせ去年はそんなわけであまり劇場に行けなかったこともあって、どちらかと言うと古い映画に印象的な映画が多かった印象がある印象。インド象を漢字で書いても印象なんじゃないかと今思いました。無駄話多めなのがなんプロアワードの特徴です。

相も変わらず順番に関してはかなり悩みましたが、「10本」というくくりで言えば割とあっさりと決まったような気もします。もちろん惜しくも選から漏れた作品も何本かありますが、それでもいつもよりかは上位陣の印象が強かった印象がある印象でしょうか。オマエの印象だろうが知らねーよと。言われなくてもわかっております。

全体的には(おそらく)ジャンル的にも国籍的にも過去一番多彩なラインナップになった気がします。それだけ(Netflixのような手軽なツールがあったことも手伝って)いろんな映画に触れる機会が増えたということなんでしょうね。

これは自分としては地味ながらとても嬉しいことなので、これから更にもっと知らない良い映画がいろいろ観られるんじゃないか、とすごく期待しています。

さて、ご覧の通り前段でかなり無駄な文章を書き連ねてしまったので、そろそろちゃんと発表することにしましょうか…!

なんプロアワードベスト10・2016年版

イップ・マン 序章

実在の格闘家「葉問」を描くカンフーアクション映画。

何度か書いているんですが、完全に観ることができないグロ系映画を除けば、最近自分の中で最も興味がないジャンルはアクション映画のような気がしてるんですよ。

最近のアクション映画はそれなりに趣向を凝らしてはいると思うんですが、とは言えやっぱり「アクション」主体の映画なので、なーんかお決まりの展開で最後はイイ女抱いて終わるぜ、みたいなありきたりな展開がうんざりするような感じで。

ところがこの映画ですよ。

まさかそういう状況の中、この歳になってここまでアクション映画に惹かれることになるとはまったく思っておらず、そういう意味でものすごく嬉しかったんですよね。

ものすごく久しぶりにアクション映画に“感化される”感覚があって、それがもうたまらなくて。

映画としては完全に日本人が悪役で、それなりに政治的な面からモヤモヤする人も多いとは思うんですよ。ここまで悪く描くなよ、とか。その気持ちもわかります。

ただそのプロパガンダ的な価値観が主体の映画ではないのは明らかにわかることだし、言わばラスボス的な存在である三浦も(憎たらしいものの)それなりに正々堂々としたキャラクターとして描かれていたので、まあその辺許してあげてとりあえず観たってくださいよと。

もーね、本当にドニー・イェンがスゴイんですよ。見せ方のうまさももちろんあると思うので、監督その他スタッフの皆さんの功績もかなりのものだとは思いますが、それにしてもドニー・イェンがね…。かっこよすぎて。かっこよすぎワロタですよ。言わば。

やや細身の体型がより明確に「いなす」感覚を伝える役割にかなり大きな貢献をしているのも間違いなく、力に力で対抗するわけではないという達人っぽいアクションを魅せる意味でもこのドニー・イェンのビジュアルを含めたカンフーの描き方がめちゃくちゃかっこよかった。

もはや誰もがこの映画を観て以降は「ドニー師匠」としか呼べないでしょう。マジで詠春拳習いたいですからね。

「(ヒーローではない身近な人間として)憧れを抱かせる」という意味では文句なしにここ数年で一番だったと思います。

映画の内容自体も、アクション一辺倒ではない政治や人間ドラマが混ざりつつちょっとした笑いどころも差し込まれた試合巧者ぶりが際立つ一作でした。

今年中に続編2作も観たいところ。

オンリー・ユー

結婚式直前に「占いで出た運命の人」の電話を受け取った主人公が、彼を追ってイタリアまで行ってアレコレするラブコメ。ともにアラサーの頃のマリサ・トメイロバート・ダウニーJrが主演。

我ながらこの映画をチョイスする辺りがなんプロだなーと思いますねー。ほんと。

この映画、ネット上の評価を見ればわかる通り、多分ほとんどの人にとっては「ありがちな普通のラブコメ」なんだろうと思うんですよ。それこそ若い頃に付き合っていた今も現役の二人が主役を演じている、その部分以外は見どころがないんじゃないかという感じで。

でもねー、本レビューのネタバレにも書きましたが、これが細かい部分ですごくよくできている、きっちり筋を通したお話だと思ってそこがものすごくグッと来たんですよね。

キーワードとしてはやっぱり「運命の人」もしくは「運命」にでもなるんだろうと思いますが、この映画で描かれる運命とその運命に対する価値観を体現する内容には唸ったし、うまくフリを効かせてのエンディングには泣き笑いのような感じでとても感情を揺さぶられる映画でした。

「んー、やっぱりラブコメもバカにできないな…!」と感じさせる思わぬ大当たりにとても幸せな気分にさせて頂きましたね。MCU好きの人たちにもぜひ観てみて欲しい。

メッセージ

突如として地球に降り立った宇宙人たちとコンタクトを取る言語学者を描いたSF映画。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。

去年僕が劇場で観た数少ない映画の中で、最も完成度の高かった映画はこの映画だったと思います。序盤から終始漂う程よいサスペンス感・不安感から来る「これどういう話なんだろう」と惹きつけられる引力が素晴らしい映画でした。

攻撃的なエイリアンであればもう速攻開戦してドンパチやるだけなので結構既視感のある内容になりがちですが、この映画は「エイリアン来訪モノ」としてはなかなか珍しく、大前提としてそのエイリアンはどうやら友好的らしいぞ、というのがまず興味を抱かせるし、良い意味でエイリアンにも共感させる作りなのが面白いところ。

それに加えてエイリアンと徐々にコンタクトを取れるように努力していく過程を、友好的だとわからないが故に攻撃的になっていく世界の政治的な意志と主人公の言語学者個人が背負うバックボーンをうまく混ぜ込みながら見せていくというとても知的なSFになっていて、そこが僕としてはかなり大好物でしたね。

描かれる核の部分については理解しきれていない面もあるし、人によっても解釈は分かれそうな気がするんですが、それだけ懐が深い、いろいろ考える余地のある映画なんだろうと思います。

考える余地のある、議論できる話というのは好き嫌いも分かれそうではあるんですが、僕はそれだけやっぱり話がしっかりしていて複雑であるが故に考察する楽しみがあるお話だと思っているので、そういう映画は問答無用で好きなんですよね。「あれはこういうことか…? うーん、こういうことかもしれない…」みたいに考えながら過ごすその後の時間が好きでもあって。

上映時間以上に味わう時間をくれる映画という意味で、こういう映画って贅沢だなーと思うんです。だから好き。

賢い人とお酒でも飲みながら聞いたり考えたりしたい映画の一つではないでしょうか。

ナイスガイズ!

ライアン・ゴズリング演じるダメ探偵とその娘とバイオレンス野郎がちょっとした陰謀に巻き込まれるバディムービー。

映画としての完成度は「メッセージ」には到底敵わない…というかジャンルが違いすぎて比べるようなものでもない映画ですが、でもこれほどまでサービス精神旺盛で頭の中を空っぽにして楽しめる「ザ・娯楽」な映画って今は逆に珍しいぐらいだと思うので、ある意味貴重なコメディサスペンスにものすごく満足させてもらった一本です。

日本ではご存知の通りライアン・ゴズリング的にはこの後「ラ・ラ・ランド」が公開になりますが、僕は断然…というかもうそれこそ比にならないレベルでこっちの方が好きで、改めてライアン・ゴズリングの器用さを感じた映画でもありました。

とにかく細かく笑いを入れてくるし、それを演じるライアン・ゴズリングのダメっぽさがものすごくハマってます。そして楽しそう。そこが良い。

やや品がない部類の映画なので、それなりに人を選ぶ面はあるような気がしますが、そこが気にならない人であればおそらくほとんどの人が楽しめる意外と完成度の高い映画だと思います。もーね、単純に「めっちゃ面白い」。

相手役のラッセル・クロウがストロングスタイルにツッコミ役として機能しているのもポイント。この二人の相性がここまで良いとも思っていなかったので嬉しい誤算。

実は基本的にバディムービーってそんなに好きではないんですが、この二人のコンビネーションの良さに加え…やっぱり触れずにはいられません、ライアン・ゴズリング演じる主人公の娘役、ホリー・マーチを演じるアンガーリー・ライスですよ。彼女の存在がかなり評価を高めたのは間違いないでしょう。

バディムービーお決まりの美女一人くっついて来ます的なフォーマットを娘に差し替え、ダメな親父とは打って変わって賢く勇気ある娘が大活躍、ってもうその時点でベタでも最高じゃないですか。おまけに超かわいいし。

表情豊かでコメディっぽい映画にもすごくマッチしてたし、その割に自然でオーバーさのない演技も◎。ライアン・ゴズリングとの相性もとても良かったと思います。おまけにこの(二人の間に入る)立ち位置に娘という存在が入ったおかげで結果的に「無駄な色恋」が入ってこないというのもかなり大きなポイント。

ライアン・ゴズリングは「ダメ人間」という新しい味を、ラッセル・クロウは「バイオレンス」といういつもの味を、そしてアンガーリー・ライスというフレッシュな味で素晴らしいコメディアンサンブルを奏でました的な。うるせーよ的な。

ブルーレイ超欲しいんですがまだそれなりに高いので廉価版待ちです。あーまた観たい。

元気がない時に観ると良いタイプの映画でもあると思うので、そういう時に借りてみるのもオススメです。

ニッポン無責任時代

口先だけで取り入る男があれよあれよと出世し、トントン拍子で上り詰めていく植木等主演のコメディ映画。

平成の終わりが聞こえてきた今日この頃ですが、まさかの「ザ・昭和」な映画がランクインでございますよ奥さん。

「(上映時間が)短めだし面白いかわからないけど気楽に観とくか」ぐらいの感じで観たらとんでもない大当たりで衝撃を受けた一本でした。

昭和の大スター・植木等大先生の若かりし頃を初めて観たわけですが、これがもうね…とんでもない逸材だったんだなと。ものすごいバイタリティ。

多分今の俳優さんでここまで画面からエネルギーを出せる人っていないんじゃないかと思う。松岡修造ぐらいじゃないか

一言で言うと「快活」って言ったら良いでしょうか。とにかくエネルギッシュで前向きで力強い主人公が「そのうちなんとかなる」とゴリゴリ先に進んでいく痛快コメディ。「痛快」も今時あんまり言いませんが、まさにこんな感じでしたね。

舞台は古いしあり得ないような展開が続く映画ではあるんですが、そのあり得ない展開に「ワンチャンあるかも」と思わせる説得力を持つのが、偉大なる植木等大先生その人ですよ。

スーツはビシっと着こなし姿勢も良く、真っ当に見える外見から発せられる自信満々の言葉にどんな相手も呑まれてしまうという、その覇気みたいなものがこうも表現できるのかと…圧倒される思いでした。これはやっぱり大スターだからこそのオーラがなせる技なんでしょう。もしくはそんなオーラが出せるからこそ大スターになれたのかもしれません。

基本的には植木等大先生のワンマンショーであり、なんならジャパニーズミュージカルとして歌も踊りもすべて一人でこなす多芸っぷりがまた凄まじいわけですが、そこに脇を固める面々がまた昭和を象徴するオッサン歓喜メンバーというたまらなさ。

スゴイですね。本当に圧倒されました。

若い人たちが観たらどうなんだろうなぁ。ここまで圧倒されるようなものはないのかもしれませんが、ただ映画としては十分楽しめるような気もします。

主人公の良いサイコパスっぷりも相当なもので、細かいことは振り切って全力で観客を殴りに来る感じが気持ちよすぎる。

生きていく上で悩みは付き物ですが、この映画を観ると「なんとかなるかも」と流れに身を任せる良い意味での鈍感力みたいなものを支えてくれる気がしますね。

古い映画ですが、本当に元気がない時に最適な映画だと思います。そしてそういう時に観る最適解が邦画である、というのも日本人としてこの上なく嬉しい。

17歳のカルテ

精神病棟で暮らす女子たちの日常を描いた少し重めの青春映画。

どうでもいい話ですが、直後に配信終了が迫っていたためNetflix契約後最初に観た1本です。

これを見終わった後は「うわーもういきなり(2月下旬)アワード候補来ちゃったなーウワーッ!」と号泣しながら思いました。タイトルは知っていたんですが(予約しなかったけど確か数年前にBSでもやってました)、まさかこんな良い映画だったとは…。

なにせ精神病棟が舞台なので、見た目としてはかなり地味です。ほとんどは、あのよくある白い壁の味気ない建物の中で起こる人間関係その他いろいろのドラマを観るだけの映画。

ただ、多感な時期に精神病患者として隔離されている女子たちが、精神病という前提があるが故にむき出しの感情で観客に訴えていくという…彼女たちの一生懸命さがすごく刺さってくる映画だったと思います。

そういうベースがあるために、急に激して感情を表に出してくるのも無理がないというのもきっと大きかったんでしょう。ただその見えてくる感情の裏に抱えるものが何なのかを想像していくうちに、普通のドラマ以上に登場人物たちに感情移入していけるうまさがありました。

やや語弊のある言い方になるかもしれませんが、精神病患者がメインでありながら、そこまで重さを感じずに観られる、ある意味で普通の人たちと変わらない地続き感のようなものがよりシンパシーを感じさせる一助になったような気もするし、何よりウィノナ・ライダー演じる主人公が「精神病棟に入れられるほどなの?」と思えるぐらいに普通の人っぽかったのも、別世界感を感じさせなくてよかったのかもしれません。

もちろん、精神病患者の人たちを「別世界」と感じてしまうこと自体は良くないことなんですが、ただ「自分とは違う」と思わせないぐらいに近い存在に描かれた彼女たちだからこそ感情を動かされた部分も確実にあったと思うので、その辺りのキャラクター的なうまさというのはやっぱり観ている側にかなり大きな影響を与えたのではないかなと思います。

あとはもう登場人物たちにほのかに漂う儚さ、危うさみたいなものが年頃の女性という設定に見事にハマっていて、「精神病棟に暮らす女子」という環境を見事に利用した思春期の描写は唯一無二と言っていいのではないでしょうか。名作だと思います。

ザ・ウォーター・ウォー

ボリビアで撮影しようとやってきた映画クルーたちが、現地の水紛争に巻き込まれる社会派ドラマ映画。実際にあった「コチャバンバ水紛争」を元にした作品。

コロンブスによるスペイン植民地支配を批判的な目線で描く映画を撮ろうとやってくるクルーたちの姿からスタートするこの映画、その経緯からしてやや欧米諸国の政治に対する批判的なスタンスが見える気がしますが、映画自体はそんなに政治色も強くなく、至って真っ当な「国を超えた人間同士」のドラマとしてとても秀逸な映画だと思います。

コスト(とおそらくリアリティ)の問題から現地人をそれなりに重要な役柄に充てて映画を撮影していくも、その現地人俳優が紛争の中心人物だったがために映画クルーたちも現地の紛争に巻き込まれ、映画の完成とそして何より彼らが無事帰国できるのかというところまで差し迫ってくる危機感の描き方がとても良かったんですが、それ以上に物語の結末に描かれるドラマがものすごく胸熱で…たまらなかったですね。

もちろんそれは紛争の危機感があってこその物語でもあるので、その「舞台としての紛争」と「よそ者として居合わせた映画クルーと当事者である現地人俳優」の絡ませ方がとても上手い、リアリティのある映画という感じ。

なにせ紛争が元ネタにある映画なので、当然社会派的な部分は少なからずあるんですが、どちらかと言うとその社会派的な要素を人間ドラマのベースに利用している色合いが濃い映画だと思うので、退屈せずにしっかり観られる物語になっていると思います。

出演者としてはスペインの社会派イケメンとしておなじみのGGBを除けばまあ地味な面々ではあるんですが、それでもその中で描かれるドラマは濃厚でですね…。特に男性にはぜひ観てみて欲しい、かなり熱い人間ドラマです。

一人の人間を通して、価値観の変遷や人間としての挟持みたいなものを感じさせるお話なんですが、やっぱりその背景に「紛争」という生死に関わる大きな出来事が横たわっているので、とにかく緊張感もすごいしギリギリのところで判断を迫られるスピード感がこの映画の評価にとても貢献しているのは間違いありません。

ゆるい日常でこういう話になっても(ならないでしょうが)あまりグッと来ないと思うので、やっぱり生死に関わる状況というギリギリの緊張感の見せ方と使い方が抜群なんでしょうね。

スペイン(他)の映画なのでそこまでメジャーではないと思うんですが、これは本当に一見の価値がある映画だと思います。熱いですよ。

新しき世界

マフィアのトップ争いに巻き込まれる潜入捜査官と、これを機に組織を牛耳ろうと画策する警察上層部のお話。

9回目にして初の韓国映画ですね。っていうか韓国映画自体観たのは2本目なんですが、いきなり超名作でガツンと殴られて気持ちいいぜ、みたいな。

本レビューでも書いた通り、もう序盤はあらゆる面で「インファナル・アフェア(もしくはそのリメイク版のディパーテッド)」を想起させる設定やセリフのオンパレードで、ここまで近くて大丈夫なんかいな…と思っていたところそれを超える名作でした、という。

ただもちろんその前段ありきの名作だと思うので、なんなら去年観た「インファナル・アフェア」も一緒にここに入れてもいいぐらい(ちなみにインファナル・アフェアは10位に入れようかかなり悩みました)この映画に貢献しているとは思います。もちろん前作・続編という関係性ではないんだけど、でもうまく「インファナル・アフェア」のフリを活かしての作りなので、それこそ上に挙げた「17歳のカルテ」に対する「カッコーの巣の上で」のような、リスペクトした上での別の物語としてきっちり活用してきたなという気がしますね。

潜入捜査官の兄貴分が組織の有力後継者と目される中、当然その潜入捜査官その人も組織内で重要な役回りになってくるため、警察としてはどんどん利用価値が上がっていくわけですが…それに反比例するかのようにマフィアから足を洗いたくても洗えない苦しみからもがき続ける彼の姿をノワール感たっぷりに描きます。

結末としては予想できないものではないと思うんですよ。ただ、その理由付けの部分がとてつもなく素晴らしいんですよね。ただのビックリ展開じゃない、きっちり根を下ろした説得力のある物語を紡いでいるというのが素晴らしく、またそれ故に超シビレたぜ、と。

ノワール自体すごく好きなので、もう雰囲気からしてたまらないものがあったんですが、でもやっぱり一番この映画をこの映画足らしめているのはエンディングの1シーンだと思います。

ここにあのシーンを持ってくるのか、っていうのが…。なかなか他に無い、すごく珍しい終わり方だと思うんですが、それを観ると展開に合点がいくし胸熱度が高まるというとんでもなく素晴らしい終わらせ方でしょう。

韓国映画はすごいすごいと聞かされてはいたものの、僕が好きではないただ過激なだけの映画ばっかりなんじゃないか…と思っていた予想を軽く裏切る重厚で巧みな演出にも舌を巻きました。

ハリウッドでリメイクするようですが、正直この映画を超えてくるとは思えないレベルで超シビレましたよマジで。くどいようですが、「シビレる」が一番この映画にふさわしい表現のような気がします。みんなもシビレよう!

PK

地球に降り立った宇宙人が、盗まれた宇宙船のリモコンを探すうちに神様と宗教の矛盾に直面、純粋な気持ちで世の中に問いかけたところ大問題に発展する…というSFコメディ。「きっと、うまくいく」の監督(ラージクマール・ヒラーニ)と主演(アーミル・カーン)コンビが再びタッグを組んだインド映画。

もうあらすじの時点で結構意味がわからないというか、ぶっ飛んでる話なんですが。

これはねぇ…もう本当に「インドすげぇ」で終わっていいぐらいインドすげぇ案件なんですけどね。

そもそもインドと言えば日本とは比にならないレベルで宗教が根ざしている国じゃないですか。だからこそリモコンを無くした主人公に対して「神様にお願いしなさい」と言うのが珍しくない、そういう社会風土があるからこその話なわけですが。

そういう国で、今のよくある宗教に純粋なツッコミを入れる物語っていうのがまずスゴイんですよね。よくこれ上映できたな、っていう。最初に「特定の宗教をくさすつもりはない」みたいなお断りも出るんですが、とは言えこれが日本だったらやっぱり何らかの圧力もかかりそうなぐらいに切り込んだ話だし、それを許容する大らかさもまたインドすげぇなと思うわけです。

その宗教に対するツッコミも、至極真っ当で誰もが「言われてみればそうだよな!」と思えるようなことなんだけど改めて言われない限りは思考の俎上に載せないような絶妙なポイントだったりするのもまたインドすげぇんですよマジで。

それを社会派よろしくジャーナリスティックに突くわけではなく、コメディとして入りやすい内容にしながら最終的にはまったく別の角度から泣かしにかかるというとんでもなくミラクルな展開でインドすげぇです。ホント。

まさか泣かされるとは思っていなかったので、終盤の急展開から感情高ぶる最大の見せ場という勢いにもやられっぱなしでした。やっぱりこの監督はすごい。

ただ「きっと、うまくいく」同様に前半の前フリ感がかなり強いのも事実なので、そこだけは我慢して観ていただきたいと思います。やっぱりそのフリも必要なことではあるし。

ちなみにこの映画の(確か)最初に出てくる歌と踊りのシーンが最高すぎてしょっちゅうYouTubeで観てます。多分そろそろ曲も買いそう。っていうかインド映画の寄せ集めサントラとか超欲しい。

ブルーレイも鼻血が出るほど欲しいんですけどね…。やっぱりまだ若干高めなので我慢しているところです。

「きっと、うまくいく」が良かった人にはぜひ観てみて欲しいし、両方まだという人にはセットで観てみて欲しい、インド映画のすごさが嫌というほどわかる傑作中の傑作と言っていいでしょう。

男性の好きなスポーツ

実はド素人の「釣りカリスマ」が会社のためにやむなく教育係の女子と一緒に釣りの競技会へ出場するスクリューボール・コメディ。

我ながらこのチョイスはどうなんだと思いつつ、昨年まさかの1位は日本でソフト化すらされていないこちら。たまたまBSプレミアムで放送していたのを観た結果、心を鷲掴みにされてもうニッコニコで鑑賞を終えたという映画です。

スクリューボール・コメディ、いわゆるラブコメと考えていただいて良いと思いますが、ただラブコメよりもコメディの比重が大きい映画と言っていいでしょう。二人がくっつくのはあくまでご愛嬌というか物語を綺麗に畳むための要素に過ぎず、基本はもうとにかくサービス精神旺盛なコメディをひたすら眺める映画という感じでした。

笑いの種類で言うと…多分ドリフ辺りに近いんですよね。僕はドリフは通ってきていない道なのでそんなに好きなタイプの笑いでもないはずなんですが…でもなぁ。最高だったんだよなぁ。

水に落ちたりヅラがバレバレだったりとベタな笑いも多々登場しますが、妙にシュールなシーンも混ざってきたりといろいろ油断なりません。あとは「そこで笑いいる?」みたいな場面でもきっちり笑いを差し込み、最後まで楽しませようとする良い意味での悪ノリ感みたいなものもたまらなかったですね。最高です。

間違いなくこの映画よりも完成度が高かったり深かったりしっかり作っていたりする映画はたくさんある…というか2位以下全部そうだと思うんですが、ただもうこういう楽しませる勢いで最後まで突っ走ってお腹いっぱいになる映画ってもう文句言えないんですよね。ひたすら笑って「いやもう最高だなこの映画」ってずっとニヤニヤして大満足で終了するという。

去年、唯一満点をつけた映画がこれだったんですが、もう細かい部分はどうでもいいんですよね。好きすぎるわこの映画、っていう完全なる好みで満点、そして1位となりました。

やっぱり好みって大きいと思うんですよ。好きだぜ! っていう。「面白い」は否定されるとちょっと嫌な気持ちになる部分もあるんですが、「好き」は否定されてもうるせーよで終わるっていうその「他人は関係ない」みたいなぶっとい幹に支えられた棚に収められちゃうのが強いなぁと改めて思いました。

主演のロック・ハドソンとポーラ・プレンティスのコンビも「コメディらしからぬ男前とちょっとゆるそうなキュートガール」という感じで映画にバッチリハマってたし、まあやっぱり細かいことは言わないけど好きだぞということで。

50年以上前の映画なのでもう望みも薄いんですが、なんとしてもブルーレイ、最悪DVDでもいいから販売して欲しいと切に願います。

またそんな映画を流しちゃうBSプレミアムの油断ならなさも映画ファンとしてはチェックしておくべきでしょう。本当に観てよかったと思います。

基本的に「自分の人生や価値観に何らかのお持ち帰りがある映画」を選出するようにしていたはずなんですが、今回はまったくお持ち帰り部分がない「ただ笑うだけ」の映画になってしまいました。それでも選んだということはそれだけ面白かったんだなと思って頂ければ。

なにせ観てくれと言ってもなかなか観るのが難しい映画なだけにツライところですが、このあと再度BSプレミアムで放送もしていたので、逐一チェックしていればいつか放送してくれるかもしれません。その時はぜひ観て頂ければと思います。

サービス精神旺盛で誰も傷つかない平和な世界と、謎のシュールエンディングに衝撃を受ける…かもしれません。

勝手に選出・AOY(Actor or Actress Of the Year)

こうして振り返ると去年はコメディで良い映画(を観ること)が多かったような気がしますね。我ながらまさかの順位に驚きましたが。

ということで最後はこれまた恒例のAOY、去年最も気になった・目を引いた役者さんを選出します。

正直この人! という決め手もあんまりなかったんですが、とは言え振り返るとやっぱりこの人が目立った一年だったかなと思ったのでこちらの方に。

ライアン・ゴズリング

ここで選ぶ人としては珍しく(?)去年公開された映画でしか観ていないんですが、それでも3本ですからね。日本公開という特殊事情もあるとは言え、同じ年に3本の映画で主役を張るというのもかなり珍しい売れっぷりではないかと思います。

この人は割と「あんまり喋らなくて何を考えているかわからない」役が多く、上に挙げた中では「ブレードランナー 2049」の役がそのイメージに一番近い気がしますが、一方で「ナイスガイズ!」のようなとんでもなくダメな人間もきっちりキュートに演じる幅広さはやっぱりすごいですよね。

いい男だけどイケメン枠とは少し違う、やや狂気を孕んだ雰囲気も持っているし、いろいろ面白い役回りができるという意味では現代トップクラスの俳優さんの一人では無いでしょうか。

ライアン・ゴズリング
謎の受賞の一報を受け、クスクス笑うライアン・ゴズリングさん。

ということで移転もしまして心機一転、今年もそこそこの数映画を観てはご紹介できればと思っております。

数少ないなんプロ来訪者の皆様、今年もよろしくお願い致します。

なんプロアワード 2017” に対して1件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    いつも密かに拝見させて頂いています
    今年のライアン・ゴズリング、良かったですね。個人的にはアダム・ドライバーがAOYです。
    デザインの細かなこだわりに笑いました。今年も楽しみにしています。

    1. しゅういち より:

      密かにコメントありがとうございます。第一号ですね!

      アダム・ドライバーも良かったですねぇ…。
      やっぱり「最後のジェダイ」が決め手でしたが、その前の「ローガン・ラッキー」も良かったですね〜。
      なんかほっとけない感じが良いですね、あの人は…。
      悪くなりきれない感じがw

  2. yukitamar より:

    サイトリニューアルもおめでとうございます!

    …ご無沙汰しております照

    スクロールすると出てくる…!すごい…!と感動しました。

    映画を見てもなかなか感想を書くまでに至らなくなってしまったので
    継続しているの本当にすごいし、尊敬しております。
    これからも参考にさせていただきます!

    1. しゅういち より:

      お待ちしておりましたよ!
      去年はこの作業をシコシコ続けておりました。
      途中からはもう前のブログはもうめんどくさいし見るに堪えないしで
      さっさとこっちに移行したかったぐらいなんですが、
      なんとかギリギリ目標の年明け公開に間に合って良かったです。

      記事を書くかどうかは重要じゃないと思います。
      僕は自分で確認したいので書いてますが、
      ただ観るのが楽しいのであればそれだけで十分だと思いますよ!

      ぜひまた遊びに来てくださいね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA