【500回記念特別寄稿】私を通り過ぎていった映画たち
先日のレビューに書いた通り、500本は自分の中でも明確に目標としていた本数なので、こりゃーちょっと特別寄稿でもしちゃおうかな、と己のブログで己の特別寄稿、という謎の企画をお届けしようと思います。
題して「私を通り過ぎていった映画たち」。
イメージとしては抱かれて去って行かれた感じです。(何)
[概要]
500本も観ているとですね、さすがに初見のイメージと変わってきていたりとか、「いやー、今思うとアレすごかったなー」とか、評価以上に記憶に残る、思い出深い映画っていうのがやっぱり出てくるんですよね。
そんなわけで、そういった映画を「なんプロアワード」同様に10本ほどチョイスしてみました。ホントはもっとあるんですが、一応キリのいい数字として10本。「なんプロアワードと何がちゃうねん」と言われそうですが、特に違いは無いです。ただ個別映画への思いの丈をぶちまけたいだけです。
そして例によって駄文です。なのでこれまた暇な時にでもどうぞ。(各作品の詳細は個別レビューをご覧くださいましよ)
『月に囚われた男』

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この映画、観た年の「なんプロアワード」では3位にしていまして、2位は「インビクタス/負けざる者たち」、1位は「インセプション」だったんですね。いやはやもう懐かしいんですが。
でも今となってはこの3本の中ではダントツに一番観てるし、人にも一番オススメしています。それぐらい、ものすごく好きな映画で。夜暗い中、一人でしみじみお酒を飲みながら観るのにこれほど雰囲気がある映画ってなかなか無いな、と思います。
あ、そうそう、「一人」っていうのがミソね。夫婦とかカップルとかは知りません。セックスでもツイスターでも好きなことしてください。
独り身が身に沁みるロンリーピーポーが孤独に涙しながら酒をあおるのに最適なんですよ。何回観てもしみじみしちゃうんですよねぇ…。
サム・ロックウェルの演技はもちろんのこと、クリント・マンセルの劇伴もやっぱりすごくいいし、あと何がいい、ってあのミニチュア月面の映像ですよ。コロコロ動く月面車のかわいらしさと孤独感、それと宇宙空間の綺麗さがすごく印象的で、それを観ながら一人に酔って、その自分の悲しさにまた涙する、みたいな。
独り身の現状にどうしようもなく落ち込んでる時に観て、さらにトコトン落ち込むのに向いています。この雰囲気、好きなんだよな~。
『キンキーブーツ』

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今でこそもう「イギリスの労働者階級を描いた映画に外れなし」と勝手に決めつけているわけですが、そのきっかけとなった映画のような気がします。
いわゆるヒューマンコメディの一種だと思いますが、その軽さと「一般人」が主人公の共感しやすさに加えて、やっぱり何よりローラですよね。あのキャラとステージパフォーマンスが最高で、今でも音楽は完璧に覚えてます。映画における歌モノの強さ、みたいなものも意識するようになった作品。
あと何気に大きいのが、「誰にでも薦められる」強さ。他にもっと好きな映画はたくさんありますが、やっぱり個人の趣向が入ってきちゃうだけに勧めるのも難しかったりするんですよね。マニアックだったりとかして。その点、万人が好きになれるキャッチーさがありつつも爽やかな感動もあるこの映画は、そういう心配がないので出しやすいわけです。
加えてメジャー過ぎないので、ライトな映画ファンなら大体観たことがないだろう、ということで余計にオススメしやすいという。「人にオススメする映画の優等生」と言えるでしょう。最近は「何でもいいからオススメ映画」って聞かれると最初に出す映画になりました。観たことがなければ普通に楽しめるだろうし、観たことがあればその感想でどういうタイプの人かも探れる、フラットですごく会話に使いやすい映画なんですよね。
こういう「定番オススメ映画」を持っていると、コミュニケーションとしての映画話が捗るので本当に助かります。
『(500)日のサマー』

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このブログを始めるまでは恋愛映画は毛嫌いしていたんですが、「ああ、恋愛映画も面白いんだな」と思わされた、降伏宣言をさせられた映画です。
きっと僕のように恋愛映画を毛嫌いしている人っていっぱいいると思うんですよ。特に男性は。「うるせーよ美男美女の恋愛なんて関係ねーよ」って。実際そうなんですが、でも面白いものは面白いからいいじゃない、と。
結局ジャンルを毛嫌いしたところで、恋愛が絡んでくる映画なんてアクションだろうがサスペンスだろうが山ほどあるだけに、ジャンルで選ぶのも損だな、ということに気付いた面もあります。(ただグロいのは本当に苦手なのでホラーだけは観られませんが)
あとこの映画の特筆すべきこととしては、やっぱり基本的に恋愛映画って女子向けが多いと思うんですが、この映画は絶対男子向けなんですよね。すごく。もう男として泣ける、わかるところばっかりで。だからこそ、僕のように恋愛映画を避けてきた男性に観て欲しいな、と。
あの二画面の無情さ、あるある感で「くぅ~」と締め付けられて欲しい。
※ただしイケメンを除く
『列車に乗った男』

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「なんで面白いんだろ?」と思いつつもグイグイと引き込まれた、不思議な経験をした映画。いまだにこの映画の感覚は他で味わった記憶がありません。
さすがに観たのは結構前なので、どんな感じだったのか忘れている部分も多いだけに、もう一回観て同じ感覚を覚えるのか確認のためにもまた観たい。パン屋に買いに来るチョイ役のお姉ちゃんがかわいかったのは明確に覚えているんですが。
基本、おっさん二人しか出てこないんですけどね。なんなんでしょうね。この映画の魅力って。他の人のいろんなレビューを観たくなる映画です。
これを観て、パトリス・ルコントの名前を覚えました。すごい監督だなぁ、って。もっと数撮ってくれないかな…。
『ニュー・シネマ・パラダイス』

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紛れも無く、500本の中で最も泣いた映画。タオル持って観た映画もこれだけだった気がします。
ただレビューにも書きましたが、僕が一番号泣したのは「劇場公開版」ではカットされている昔の恋人と話している部分なので、この映画を語るにはちょっと邪道な部分だとは思います。
とは言え、そこを除いたとしても、ですよ。あのエンディングなんて映画ファンの9割は「これはズルい」と言うに違いないぐらい、攻めどころを心得ているシーンなので、あのためにだけでも観て欲しい、映画ファンを自認するなら避けて通れない名作と言っていいでしょう。
『スティング』

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「いやぁ~、映画っていいな~!!」と笑顔になりつつ泣く、的な爽やかに感動しちゃう古典的名作。
内容は感動作じゃないんですけどね。でも「映画って娯楽、すげーな!」っていう意味で感動しちゃうんですよ。やっぱり映画そのものに勢いがあった時代の作品なだけに、全体的に「たまんねー」雰囲気がほとばしっているのもポイント。
とある他の方のレビューに「まだスティングを観ていない人が羨ましい」=これから新鮮な気持ちでスティングを観られるのが羨ましい、ってことですが、なるほどそれも納得出来るぐらい、雰囲気の良い映画ですね。(ちなみに僕は同じことを「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に思います)
それと副産物的なものとしては、「映画が好き」というのは割と年代関係なく会話のツールになり得ますが、特にこの映画は自分の親世代ぐらいにバッチリハマっているので、それぐらいの世代の人と映画について話をするときにも重宝するという、「結婚のご挨拶のお供映画」としての価値もあると言えるでしょう。
ただ、そのご挨拶の相手がいない、というのは別の問題であり、別の号泣要素になるのでここでは割愛させて頂きます。
『ガタカ』

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やっぱり「短くても良い映画」というのは偉大だなぁと思うわけですが、その筆頭格がこれかな、と。
近未来SFで設定とかも結構説明が必要そうなのに短くまとめられていて、でも恋愛ありサスペンスあり友情ありで内容も特濃、という文句なしの名作だと思います。いまだにコアなファンが多いというのも頷けます。
SFだけに、映像も印象的なんですよねぇ。20年近く前の映画でありつつも、いまだに近未来感が色あせていないのも素晴らしい。
そして当時20代半ばのジュード・ロウが素晴らしい。マイケル・ナイマンの劇伴もまた素晴らしい。ただこんな名作を作ったアンドリュー・ニコルがその後パッとしないのが悲しいところです。
『ファンダンゴ』

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これもまた短めの映画ですが、男性にはとんでもなく共感できる、宝物になり得る名作だと思います。
序盤のくだらなくてゲラゲラ笑えるパートも最高だし、それが段々と収束していって寂しさを覚える「祭りのあと」感がまたたまりません。
かねてより書いているように、僕は「80年代の映画最強説」を唱えているわけですが、「ミッドナイト・ラン(これも書こうか悩んだ)」と並んで、その「80年代の雰囲気」ど真ん中を行く最高の青春映画だと思います。人生歴代トップ5に入るぐらい好きな映画。
もうなんでこんな超名作がマニアックなのか、しょっぱい音声と映像の古いDVDしかないのか、本当に解せないんですよね。最近ケビン・コスナーも復活してきただけに、今一度リマスターしてちゃんとしたソフトで出し直して欲しいです。
この映画、観たら好きになる人いっぱいいると思うんですが、まあほんとに置いてるのを見ないんですよね…。もったいなさすぎる。オススメしても観てもらえない、悲しい映画でもあります。ホント、たくさんの人に観て欲しいなぁ。特に男性に。
『ブレードランナー』

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今まで挙げてきた中で唯一、「なんプロアワード」で取り上げていない映画なんですが、まあこの映画ほど後々思い出すことの多い映画はなかった気がしますね。
やっぱり世の中でも伝説的な名作とされているだけに、映画に限らず様々な作品でその影響が見て取れるわけで、例えばレビューにも書いた「FF7」だったり、他のジャンルの娯楽にまで浸透している表現のすごさはいまだに一級品だな、と。あの未来像をこの当時作ったリドリー・スコットその他スタッフは本当にすごい。
鑑賞直後はレビューにも書いた通り「うーん、すごいけど内容はそんなでもないかなー」と思っていたんですが、今になって振り返るとその割に妙に記憶に残っているシーンも多いし、やっぱりあれはすごい作品だったんだな、と思い出すたびに感じます。これももう一度、しっかり集中して見直すべき作品ですね。そういう意味では、当時の自分の映画を観る目の無さを痛感した映画でもあります。
やっぱり映画は経験値に左右される面も多いので、この映画を評価できなかった自分はアマちゃんだったぜ、と反省しきりです。
続編からリドリー・スコットが降りた、というニュースを見ましたが、果たして続編はどうなることやら…。もはや「伝説」なだけに、作らない方がいいと思うんですけどね~。
それと余談ですが、自分で思う「最もヒドイジャケ絵」がコレです。お詫び申し上げます。
『ディナーラッシュ』

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さあ出ましたよぉー。最後は逆の意味で心に残った映画です。
もーね、思い出すたびに頭に来るんですよこの映画。クソすぎて。世間的にもクソなら別にいいんですが、結構評判が良かったりして、なんなら「この映画知ってると通」みたいな雰囲気すらありますからね。本当に頭に来ます。某TS●TAYAでは発掘良品に選ばれてたりしますから。こんなのが発掘されたら遺跡ごと爆破ですよ。自分なら。バカじゃねーの、と。
ペラッペラで“それっぽく”味付けしたサスペンスで、本当に映画が好きな人であればそのお粗末さはすぐにわかると思うんですが、なんでかそれなりに好きな人が多いという…。こればっかりは好みだし、自分が間違っている可能性も当然あるとは思いますが、世界中の誰もが「最高の映画だ!」と言ったとしても自説は曲げません。クソ中のクソ映画です。
他のクソ映画を観た時に「まあでもディナーラッシュよりはマシだな」と慰めに使えるという意味でだけ、観た価値があった映画と言えるでしょう。慰めの報酬ですよ。まさに。
いや違うけど。
ということで最後はこき下ろしましたが。500本の中でも特に思い出深い10本、ご紹介致しました。
「ディナーラッシュ」を除く9本でまだ観たことがない映画がある方は、ぜひ観てみて頂きたいと思います。ディナーラッシュは観なくていいです。
ちなみに500本目以降になったので除外しましたが、最近観たとある映画がこの中に入れたくなるほど衝撃的だったことも書いておきます。
やっぱり映画はまだ観ぬ名作がまだまだありますね…。
以上!