なんプロアワード2020

あけましておめでとうございます。

今年もネット世界の片隅にひっそりと漂う当ブログをよろしくお願い致します。

早速こんなことを書くのも何なんですが、なんだか最近年々無気力になってきている気がして、このままじゃイカンなぁと漠然と思いつつもオフの時間は常にダラダラしている体たらくで、毎年自分でも楽しみにしているこの企画もまったく筆が進まない中、休みも終わるので無理矢理にでも…と今こうして特にネタもなくディスプレイの前でダラダラタイピングしております。

まあ雑感をあーだこーだ書く前にですね、いつもの流れでお決まりのところを書いていくことにしましょうか。

まずは恒例の当企画のご説明から。

「なんプロアワード」とは
前年に初めて鑑賞した映画の中から選んだベスト10と、主演男優 or 女優賞を発表する、少しも珍しくない誰の目にもお馴染みな企画
[ルール]
  • エントリー基準は「その年初めて観た映画」
  • その中から勝手にベスト10を選定
  • そのため古い映画も入って来るという謎み
  • さらに生死関係なく、その年に観た映画に出ていた最も良かったと感じた役者さんに主演男優 or 女優賞進呈
〈2020年雑感〉

昨年はついに当ブログ1000本目を記録しまして、一昨年の10周年とともに一つの区切りを迎えたような形です。

1000本達成記念に500本のときと同じく何らかの企画記事でも書こうかな、と若干思ったんですが、本当に若干思っただけでやめました。

ぶっちゃけブログ自体のモチベーションも下がり気味ではあるんですが、冒頭に書いたようにこれはもうブログに限らず映画鑑賞自体もそうだしゲームにしてもそうだし、あらゆる面でモチベーションが下がってきているのが現状です。

その最大の理由は…いきなりこういう話もなんですが、やっぱり愛犬ビビとのお別れが大きすぎたんですよね。

お別れしてから早一年が過ぎようとしていますが、想像以上に自分へのダメージが大きくて、あらゆるスイッチが錆びついてしまったような感覚です。

それ故去年は映画を観るのも義務感が先行していた気がするし、秋以降は「なんとかペース上げて100本は観ないと」と気が乗らなくても無理に観ていたような状況でした。

とは言えそんな状況でもやっぱり観始めればその世界に入り込んでしまうのが映画の良さであり、喜怒哀楽の「喜」と「楽」の上限に蓋をされたような悲しみをずっと抱いていた中でも、良い映画は当然良くて、ある意味では「映画を観る」ことの価値を改めて感じさせられた一年でもあったと思います。

映画を観て悲しみが無くなるわけではないものの、ある一時は意識を外に向ける時間が作れるし、それを繰り返すことで少しずつ悲しみから遠ざかっていけるようになる…というのはどんなつらい出来事に遭遇した人であっても大事な“リハビリ作業”の一つになるでしょう。

自分にとってそのリハビリとして最も適していたものの一つが映画であり、やはり改めて自分は映画が好きなんだな、この程度の数でも映画趣味と言っていいんだなと再認識したような一年になりました。

少々湿っぽくなりましたがそういうのはこの辺にして、まずは去年の実績から。

去年の鑑賞本数は102本(うち再鑑賞8本)、劇場鑑賞は3本でした。

ご存知の通り、去年に限らず今年に入っても新型コロナが猛威を振るっている状況のため、劇場鑑賞本数はブログ開始以降で過去最低だったと思います。

観に行くのをためらうというよりは、そもそも集客が見込めない状況故に大半の映画の公開が延期していくような状況にあったので、「行きたくても観たい映画がやっていない」という問題のほうが大きく、それ故もう去年は早々に劇場本数を増やす考えは無くなりました。

もちろん例年であったら観に行っていたであろう映画もいくつか公開していたんですが、それもやっぱりコロナの影響で腰が重くなった面は否めず、また根っからのめんどくさがり&引きこもり体質の人間としては特にそれに不満も感じず、「まあ節約になるしいいか」とネトフリに走るような一年でしたね。

一応「映画好き」を自称する人間ですらこうなので、映画産業の厳しさたるや想像に難くありません。

今年は(主にアメリカで)いくつかのシネコンが廃業を余儀なくされるんじゃないか、とかライオンでおなじみのMGMの身売りの話とかが(去年の段階から)いろいろと噂されているので、本当の苦境はこれからやってくるのかもしれませんね。

そうなると今後はネトフリ他配信系がより強くなってくるんでしょうか…その辺りの趨勢も気になるところではあります。

余談ですが、僕も以前から気に入った映画はソフト(主にブルーレイ)で買うようにしていたわけですが、今後4K8Kとどんどん画質が上がっていったとき、それに合う保存媒体も再生装置もあるにはあるんでしょうがどんどんマニアックなアイテムになっていくはずなので、となると商売として採算が合うのか難しくなってくるラインが早晩絶対にやってくると思うんですよね。

現状、4KについてはUHDBD等あるんですが、世間的な感覚から言ってDVD>Blu-ray>UHDBD、ってどんどんユーザーが狭まっていっているのは否定しようのない事実だと思うんですよ。

となると例えば今から10年後、果たして「コレクター」のための映画記録媒体はどういう形になるのか、というのが今すごく気になっている問題なんですよね。

当然のようにネトフリやらアマプラやらは配信元の契約によってあっさり観られなくなってしまうので、配信系がコレクションの代替になっていく可能性はまずあり得ないだろうし、かと言って今までのように「物体」として持つには限界がありそうな気もするしで、果たしてどうなるのかなと。

個人で持つサーバーに記録するとか?

でもそうなるとコピー問題も発生しそうで間違いなく制作側や配給元が嫌がるだろうし、となると個別に配給元と一本一本契約を結んで、動画へのアクセス権を持つようになる(某DMMみたいに専用プレイヤー経由での鑑賞のみ許可するような形でコピープロテクトしていく)、とか…?

この辺りの問題がどうなるのか、ここ数年でいろいろ動きそうな気がしてとても気になっています。

なぜ某DMMの方式について詳しいのかは黙秘権を行使したいと思いますが、Oculus Quest2最高です。余談です。

僕の予想では今後「手元に持つ」ことが技術的・金銭的に困難になっていくような気がしていて、それに対する答えというのがどうなっていくのか、テクノロジー的な面で強く興味を持っているような状況です。

とは言えなんだかんだ言っても「手元に置いておきたい」需要は間違いなくあるはずなので、一旦UHDBD辺りで「これ以上の画質は制作しません(のでUHDで我慢してください)」となるのかもしれないし、もしかしたら一般庶民はUHDレベルまでで高所得者層はIMAXプライベートシアター的なもので環境を構築する“コレクション”になる、というような二分化が進むのかもしれません。

やっぱり好きな映画は持っておいて「これいいよ」ってオススメしたい=物体として持っておきたいというのが今ソフトを買う人たちの普通の感覚だと思うんですが、それが高じると「うちのIMAXで観られるからおいでよ」と誘ってホームパーティ的なセレブ世界が基本になる、みたいな。

はーヤダヤダ。ここでも分断、ですよ。

だいぶ話が逸れました。戻します。

  • 2009年 21本(途中から開始)
  • 2010年 66本
  • 2011年 111本
  • 2012年 141本
  • 2013年 72本
  • 2014年 79本
  • 2015年 56本
  • 2016年 81本
  • 2017年 107本
  • 2018年 128本
  • 2019年 107本
  • 2020年 102本

そんなわけで去年はあまり気が向かず前半戦にだいぶサボっていたので、8月ぐらいに「このままのペースだと100行かないから土日必ず観るようにしないと」と無理矢理にでも観るようにした結果、ギリギリ100本を超えた一年でした。

いつか200本行ってみたいなとずっと思ってはいるんですが、普通に働いてたら無理ですね。僕の性格上。

実は去年は職場環境が少し変わって残業を減らす方向になったので、意欲があれば毎日観るぐらいの時間は取れなくもないんですが…そうすると週末にごっそりレビューを書いてジャケ絵も描いて、ってもう全部の余暇が映画鑑賞とブログに捧げることになるので、さすがにそれは無理だなと。

何度か書いている気がしますが、「観るだけ」なら200本も難しくはないんですけどね。そこにこのブログの更新がかかってくると時間の取られ方がまったく違うので。

残業時間が減った分、日中もちゃんと仕事しないと追いつかない場面が多くなってきて、そのおかげで仕事中に書くようにしていたレビューを書く時間が去年は取れないようなことも多く、中身も薄まっちゃってよろしくないよねと我ながら思います。

まあね、でももうそんなもんですよ。所詮。

大したことも書けないし、センスも知識も無いから本当に自分で確認する以上のものは書けない人間なんだなと再認識させられた側面もあって、なおさらブログ頑張るぞという意識を持ちづらくなってきた部分もあります。

きっと無職になったとしてもそんなにガリガリ映画観てレビュー書いて、ってやらない気がする。さすがに10年以上(ほぼ)虚空に向かって書き続けるのは疲れるんだなと妙に納得。

かと言ってじゃあブログやめて映画観ますか、と言われればそれはそれで「記録しないのがもったいない」と思っちゃうし、まあウダウダとめんどくさいやつですよ。

…とグチグチ言っておりますが、なんだかんだこのブログはライフワークでもあるし、自分の中で最も長く続いている「形に残るなにか」なので、やっぱりよほどのことがない限りは続けると思います。死ぬとか、目が見えなくなるとかでもない限りは。

誰も言ってくれないから自分で言っちゃうけど、どんな稚拙な内容だろうと10年1000本も続けてる時点で偉いんだよ! バカヤロウ!! ダンカンッ!!

[総評]

相変わらず長い前フリですが、ここから本編ですよ!

そんなわけで去年はちゃんと数えたわけではないですが、おそらく8割以上は配信系(ネトフリと一時期限定加入していたアマプラ)からの鑑賞だったと思います。

中身は普通の映画なので配信で観たからどうこう、というのは無いにせよ、鑑賞状況的にダラダラ観てたり眠くなったり注意力散漫だったりというのはあったはずなので、もしかしたらもっと評価されるべき・きちんと観るべきだった映画がランキングからこぼれてしまっていた可能性はあります。

まあでもそんなの毎年だからね!? 自分で言っといてなんだけど。

だからまあ、例年通りですよ。例年通りに選んで良いの悪いの、って話ですよ。

今回の選出については、10本選ぶまではそんなに難しくはなかった(2本ぐらい悩んで落としたのはあった)んですが、順位付けがものすごく悩ましくてですね…。

9位10位とトップ3は迷わずだったんですが、その他の4〜8位に関してはもうどれがどこに来てもおかしくないし、気分によっても日によっても順位が変わりそうなぐらい団子状態でした。ライク・ダンゴ。

それは別にどうでもいいという話でもなく、それだけどれも素晴らしかった、と思っていただければ。

そこまで強い意欲で観たわけでもなく、さながらルーチンワークのように観ていった去年の映画たちですが、それでもやはり選んでみたらなかなか素晴らしい10本になったと思います。

例年通り、どれもしっかりオススメできる作品です。

では始めましょうか。

なんプロアワードベスト10・2020年版

『深夜の告白』
深夜の告白

保険外交員が手を染めた保険金詐欺事件の独白から振り返る、その犯行の内実。本レビューはこちら

古い映画、モノクロ映画を推してこそのなんプロだぜ、と小さな虚栄心を満たしつつもしかし紛うことなき傑作ということで10位選出。

監督及び脚本にビリー・ワイルダー、そしてもう一人の脚本に小説家のレイモンド・チャンドラーという贅沢シフト。

僕の中ではやはりワイルダーはコメディ系の素晴らしい映画が多い印象だったんですが、その印象とはまったく違ったシリアスで見応えのある作風のこの映画には僕のたまらんゲージも納得のMAX。

今となっては珍しくない倒叙型ミステリーかつファム・ファタールものの映画なんですが、その(おそらく)最初期でありながらほぼ完成形と言っていいんじゃねーのと思わされる完成度の高さ、そして道中の引きの強さに大満足。

犯罪に興じた理由も犯行そのものも至って普通で陳腐なものでありながら、心情と人間関係描写の巧みさによってグイグイ惹き込まれ、まったく飽きることのない見応えたっぷりな作りはさすがワイルダー、期待を裏切りません。

また主演がフレッド・マクマレイで共演にエドワード・G・ロビンソンというのも古い映画好きにはたまらないキャスティング。そしてヒロインを演じたバーバラ・スタンウィックのすごさ際立つ演技も文句なし。

「古いモノクロ映画を観たことがない人に見せたい映画」の一つとして記憶されることになりました。

『アイリッシュマン』
アイリッシュマン

実在するジミー・ホッファのボディーガードを描いたマフィア映画。本レビューはこちら

ご存知、アル・パチーノロバート・デ・ニーロジョー・ペシマーティン・スコセッシというマフィア映画そのものの集大成と言える超豪華決定版。超豪華オリジナル元祖決定版。(言い直し)

年末にツイッターでトップ10を挙げている人たちを見てもあんまりこの映画が挙がってなかった気がして結構意外でした。やっぱり劇場公開じゃなかったのが大きかったのかなぁ…。(そもそも一昨年の年末に観たからカウントしてない人も多そうですが)

さすがにゴッドファーザーには及ばないものの、そのゴッドファーザーやカジノ等彼らが出てきたマフィア映画の“思い出”をうまく感傷的に利用しながら、本編の作り以上の感動をもたらしてくれた映画だと思います。

最近の若い人はそうでもないのかもしれませんが、やはり僕ぐらいの年代以上の人であれば「アル・パチーノとロバート・デ・ニーロの共演」、しかもマフィア映画という時点で鼻血がでるほど盛り上がる中、そこにさらに追いジョー・ペシ(この人がまたものすごく良かった)でノックアウトですよ。

おまけにその重厚な布陣をしっかり見せきるスコセッシの演出も冴え渡っていたと思います。この人たち全員が「集大成に」と気合いを入れて作り切った熱が画面から伝わってきましたよ。いやわかんないけど。流してやってたのかもしれないけど。

でもそう感じさせるぐらいにやっぱり“たまらない”としか言いようがない世界があったんですよね。この映画には。

きっとこれだけいきなり観てもそういう感慨が無くて「ふーん」だと思うので、事前にいろんな彼らのマフィア映画を観てから観てほしい。そういう意味では少しハードルが高い映画かもしれません。

多分、僕が今「スカーフェイス」を観たら、このレビューを書いた当時とはまったく違う感想になると思うんですよ。

それと同様に時間によって熟成される“何か”が味わいを大きく左右する映画だとも思うので、各人の映画にある程度触れてからぜひ観てください。

ネトフリオリジナルだしそうそう消えないでしょうからね。

『ハッピー・デス・デイ 2U』
ハッピー・デス・デイ 2U

脱したと思ったループに再び巻き込まれた女子、アタシが謎解明すりゃいいんでしょお!? と勉強ループ。本レビューはこちら

“死のループ”に囚われるシリーズ2作目。

1作目も面白かったんですが2作目はそれを超える面白さで大満足。去年観た中で最も頭を使わずに単純に楽しめた映画かもしれません。

1作目はホラーとして作られたためか、面白いもののある意味ではコメディとホラーどっちも中途半端な感はありました。面白いものの。

僕のように「ガチホラーはちょっとイヤ」みたいな人には観やすくていいものの、その分ホラーとしてはどうしても弱くなったんじゃないかという気がするわけですよ。

ところがこの2作目はきっぱりホラー路線とはお別れし、前作の設定を活かしつつ“きちんと”SFコメディとして仕切り直したのが大成功。前作の謎(ループの設定)をきっちり回収しながら、この世界ならではの悩みを味付けにホロっと来る家族愛も見せてくれてお腹いっぱいです。

主人公のギャル・ツリーも前作以上に割り切って(?)強い女子像を見事に体現、女性主人公映画としても格別の一作だと思います。強くてかっこよくて面白い。最高。

ラストもテンポよくスッキリ終わるし、非常に満足度の高い映画でした。

『レインメーカー』
レインメーカー

大企業相手に訴訟を起こす新米弁護士と半人前弁護士。本レビューはこちら

若かりし頃のマット・デイモン主演。そして今やただのワイン親父と化したコッポラの監督作です。

この映画は話としては…良いんですがそこまで珍しい展開でもなく、無駄も多いような気もするんですよ。ぶっちゃけクレア・デインズなんていなくても良いんじゃないかって気もするし。

ただもう…相変わらず漠然としていて申し訳ないんですが、最近の映画には無い「失われてしまった過去の空気感」を感じさせる映画の、最終盤に近いギリギリの時代に作られた映画のような気がしてもうたまらなかったんですよね。

これはきっとコッポラが監督したことも大きいんだろうとは思うんですが。

「損得よりも美学」、矜持のようなものに(強がってでも)従うのが人として正しい、かっこいいみたいな価値観が見えるギリギリの時代の映画だと思うんです。

ある意味では強がりかもしれないし、自己満足かもしれない。でもその心に従うことこそが自分の心を豊かにしてくれるはずだし、その生き様の先にあるのが「素晴らしき哉、人生!」なんだろうと思うんですよ。僕は。

本当に堀江●文とか竹●平蔵みたいなクソ野郎が跋扈する今の世の中にはない、最後の良心を見せてくれる映画としてものすごく好きだしものすごく価値があると思います。

金銭的な損得に左右されず、志高く生きていく人間でありたいと改めて感じさせられたし、そのかっこよさを爽やかに感じさせてくれるこの映画、本当に大好きになりました。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
マンチェスター・バイ・ザ・シー

兄の急逝によって地元に戻った男の過去と現在。本レビューはこちら

まあとにかく地味で暗い映画なので、人に勧めるには相手を選ぶ映画ではあるんですが…でもねー、これは本当に…染みましたね。染みたレベルでは去年で一番染みたと思う。もっと上にしても良かったんですが泣く泣くこの位置です。

少々ネタバレに近い内容になりますが…この映画は本レビューにも書いた通り、「変われない男」の話なんですよね。

創作では山ほど観てきている、そして「成功者の話」としてよく見聞きする、「ターニングポイントで生まれ変わった自分」という前向きキラキラ話のアンチテーゼなんですよ。

そりゃあよく聞く「成功譚」は「変わった」から成長したんだろうし、それ故に人は(僕も含めて)変わることを願い、考えるわけですが、しかし人間そうそう変われるものでもないし変えればいいってもんでもないでしょ? と今まで見向きもされなかった“成し得なかった人間”を語る物語なんですよ。

これがもうね…もうね…! たまりませんでしたよ本当に…。

僕も変えたくても変えられないタイプなので、この話にはひどく同化してしまいました。

「わかるよ、わかる」「そうだよなぁ…」

って心の中で常に言っていたぐらいに同化しました。

僕はこの映画の主人公ほど壮絶な過去を持っているわけではないですが、ただ安易に「こうすりゃいいじゃん」「こうしたほうがいいよ」と言われても、「そんな簡単に変われれば苦労はしねえよ」と思っちゃうタイプなので、そういう…「変わらないことを肯定したい潜在意識の自分」にひどく刺さるんですよこの話。

変わらないことが良いとも思わないし、変わるべきことがあるのも重々承知しつつ、それでもやっぱり変われない…もしかしたら「変わりたくない」と思っているかもしれない心の中を引きずり出して見せつけられたような気がして、そこにこの映画の凄さを感じました。

きっとネガティブな人ほど共鳴する物語だと思います。人によっては危険なぐらい感情移入するんじゃないかな。それが良かったし、切なかった。

『フォードvsフェラーリ』
フォードvsフェラーリ

フォードがレースでフェラーリに勝つために選ばれた男たちの物語。本レビューはこちら

去年劇場で観た数少ない映画の中の一つ。でもこれは本当に劇場で観てよかったし劇場で観るべき映画でした。

実話ベース、友情関係、身内との戦い、そして敵との戦い…すべてが熱く、たまらない。

男の本能みたいなものを刺激する部分もあった気がします。おそらく。間違いなく女性が観ても面白い映画だと思いますが、共感度、感情移入という意味ではきっと男性の方が上でしょう。

自分の人生を考えたときにどういう選択を取るのか、という生き様の部分も描かれているし、かと言って実力だけではどうしようもない世界があるのもきっちり見せてくれる。

どうやって生きていくことに折り合いをつけるのかも背景にしながら、単純にわかりやすく面白いドラマとしても良くできた脚本でとてもバランスの良い映画だと思います。

殴り合いの喧嘩をして仲良くなるような古臭い男二人が主人公なのもとても良くて、何かと気を遣って衝突を回避しがちな現代ではやっぱり見られないような、人と人との関係性が胸アツ。それだけ全力で生きているんだな、と羨ましくもなりました。

おそらく誰が観ても面白いであろう問答無用の名作なので、とりあえず観る映画に迷ったら手に取って欲しいぐらいにオススメです。

『デトロイト』
デトロイト

デトロイトで実際に起きた「アルジェ・モーテル事件」の映画化。本レビューはこちら

この映画を観る少し前に観た「13th」も今回のアワードに入れようか悩んだぐらいの良作だったんですが、それを経てのこの映画があわせ技で強烈な印象を残してくれたので、4位に。

やっぱり忘れられないぐらい強烈な印象を残されるとどうしても上の方に持ってきたくなるのは年間ベストのサガってやつでしょうか。

実際に起きた事件の映画化ではありますが、何分いまだ全容が未解明の事件であるため、どこまでが事実でどこが事実と反するのかはわからないし、本レビューのネタバレ項にも書いたように少し疑問に感じる部分が無いわけではないです。

が、そういうのを差し置いても…圧倒的な生々しさがひどく心に響きました。

とにかく地獄だし、こんな事件が現実に起こっていて、実際に被害に遭った人がいたことを思うとつらくてつらくてしょうがない。

今以上に差別の色濃かった時代に、警察という公権力に理不尽な尋問を受けさせられ続ける地獄は想像を絶するものがあります。

これも本レビューに書きましたが、本来であれば警察は「正義」であり、助けてくれる存在であるはずなんですが、その警察によって身動きが取れない状況にされ、助けに来てくれる存在がいないであろう状況というのは、おそらく尋問を受ける側からすれば文字通り絶望する以外にないわけで、そこで終わりの見えない時間を強いられるキツさというのは…やっぱり「地獄」としか形容しようがないなと思います。

その「地獄」を、観ているこっちも疲れるぐらいの圧倒的な緊張感で描ききるこの映画、かなりしんどかったですが間違いなく傑作でした。

去年は全米で「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」運動が盛んに行われました。

そのきっかけとなった「ジョージ・フロイドの死」、さらにはBLM自体が生まれるきっかけとなった2013年の「トレイボン・マーティン射殺事件」、そのどちらも黒人に対する白人警官の暴力という構図です。

この映画で描かれているものもまさにそれであり、つまり「アルジェ・モーテル事件」の先にそれらの事件があるわけで、現在にもつながっているという意味でも“生々しい”映画と言えます。

アメリカの長い歴史の中で繰り返される差別の実際を知るという意味でも非常に価値の高い映画なので、映画好きのみならず現代を生きる人間として、ぜひいろんな人に観て欲しいですね。本当に強烈な体験でした。

『TENET テネット』
TENET テネット

世界滅亡を企む勢力と戦うスパイのお話。本レビューはこちら

去年の今頃は「間違いなく今年はTENETが1位でウッボー」と思っていたんですが、なかなかどうして…やはり思い通りに行かないのが人生、ってもんですよ。ちなみに「ウッボー」は「ウッドボール」の略で「決まり(木毬)」という意味です。(ファミ通世代)

ご存知クリストファー・ノーラン最新作、しかもオリジナルということで…「インセプション」「インターステラー」の夢よもう一度…! とこの上なく高いハードルのもと観に行き、がっつりそのハードルの高さを超えてくる作りはさすがノーランはんやで、いまだに超がつく変態で安心しましたわと鼻血を流しながら笑みを浮かべていたわけですが、しかし今になって思い出してみると…少しそのハードルにつまづいてなかった? みたいな。自分の期待があまりにも上がりすぎていたようで、逆になんだか申し訳ないような気持ちに。

内容について説明するのが非常に難しい映画なのでその辺りは完全にスルーしておきますが、面白かったのは間違いないです。もう一度観に行くつもりでしたが、ちょうど公開中に中途半端な風邪(普通の風邪)を引いてしまい、このご時世に咳をしながら観るわけにもいかないので我慢した結果、一回しか観ることができず。もう少し理解が進んでいれば評価も変わっていたかもしれません。

それでも初見の衝撃はやはりあの「インセプション」には及ばず、「めちゃくちゃすごいんだけど頭殴られるほど頭突っ込めてなかった」みたいな消化不良感が若干ですがあったのが「約束された1位」から落ちてしまった理由なのかな、と思います。完全に僕のせいです。ノーラン先生は悪くありません。

まあでもこの映画よりも良かったと思える映画が2本もあった時点で去年の映画鑑賞は満点ですよ。まだ観ぬ傑作がたくさんあることの証左でもありますからね。

この映画に関しては繰り返し鑑賞を推奨するような変態映画であるのは間違いないので、ぜひネトフリで配信してもらってまた何度も観たいなと思います。

もしかしたらその時「TENETやっぱり1位だったな」と思うのかもしれません。それだけのポテンシャルを持ったとんでもない映画なのは確かです。

それとこんなご時世でもきっちり劇場公開に踏み切った英断にも感謝したい、というのも書いておきたいですね。

『オンリー・ザ・ブレイブ』
オンリー・ザ・ブレイブ

森林火災に立ち向かう男たちの物語。実話。本レビューはこちら

これも実話系ということで、去年は実話系でグッと来た映画が多かったということなんでしょう。

その中でもこの映画は特に人間ドラマの濃厚さ、立ち向かう任務の崇高さ、そして結果の重さとすべてが高次元で素晴らしく、圧倒されました。映像面でも素晴らしかったです。

さすがに今の時代に自己犠牲精神を良しとするのは違うだろうと思うんですが、この映画で描いているのはきっとそこではなく、その「自己犠牲精神に立ち向かう姿」を描いているのが偉大なんだろうと思います。

わかりづらいですが、「自己犠牲精神が偉大」と「自己犠牲精神に立ち向かう姿が偉大」は別です。

結果がどうであれ、その時その時で最善を尽くそうとする彼らの姿が胸を打つのであって、その“答え”が感動させたわけではないと思うんですよ。(ネタバレしすぎないように少し遠回しな言い方になってしまい申し訳ないですが)

僕はやっぱり、本レビューに挙げた「いいシーン」の場面(ジェフブの歌じゃないよ)が強く心に残っていて、あのセリフを言った彼の思いとその結果を思い出すと、今でも涙が出るぐらいに様々な思いを抱きます。

あのとき彼が望んだこと、その望んだ意味。

望んだ彼のその後と、望まれた彼のその後。

そして、その二人がそれぞれの結末に対してどう感じることになったのか。それとも“何も感じなかった”のか。(うまく言えない)

それらを考えると、言葉にならないぐらいの壮絶な現実を考えさせられ、その重みで何も言えなくなってしまう。

これが現実にあったことの衝撃、そしてそれを(脚色込みであったとしても)映画としてこうして目にする機会を与えられたことが、今を生きる人間としてとても大切なことであったような気がしています。

大げさなようですが、それだけの重みのある話でした。

よく知らなかった「森林火災に対応する消防団」の存在や活動について知ることができたのも大きかったですね。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

卒業前日に「勉強だけだった高校生活を取り戻したい!」とパーティーへ出るべく奔走する二人の女子の青春コメディ。本レビューはこちら

1位は打って変わってゲラゲラ笑っちゃうコメディです。一昨年1位の「スパイナル・タップ」と良い、なんだかんだ笑える映画が好きなんだな、きっと…。

とは言えこの映画はコメディ一辺倒というわけでもなく、ハイスピードに展開する中でもきちんと青春時代特有の寂しさや成長も描いていて、スッキリ爽やか、そしてニッコリ終わる傑作中の傑作でした。

結果的に去年観た中で満点をつけたのはこの映画のみです。

正直、上位陣の他の映画も満点にしても良かったんですが、どうしてもつらかったり難しかったり暗かったりすると“もう一歩”の部分で迷っちゃうんですよね。そこを突き抜けるほどの勢いを自分の中で持てないというか。

やっぱり思いっきり「面白かった!」「好き!」と思える映画って、粗があっても「いやもう満点で良いでしょこれ!」って勢いで満点つけたくなっちゃうんですよ。

それはきっと自分の好みでもあるし、メンタル的に望んでいるものなのかもしれません。

この映画は一番最近(去年の最後)に観たから印象が強いというのもありますが、でもきっともっと前に観ていても1位にしていた気がします。

とにかく作りが上手くて勢いがあるし、きちんと笑わせに来るネタ(人)の使い方も素晴らしい。そして何より“現代的”なジェンダーの問題をこの軽いコメディに織り込んでいる点がすこぶる巧み。

この手の話を持ってくると重くなったり世に問うたりしがちな印象があるんですが、この映画では至って自然にその設定を持ってきて、「それが普通であること」そのものを価値として描いていると思います。それが素晴らしいし、また同時に“今っぽい”なと。

いわゆるLGBT当事者にとって、「LGBTの人たちのことも尊重しましょう」と会議で発表する…みたいな“構え”は望んでいない、と言うのはよく言われている話で、「LGBTもヘテロセクシュアルと同じように普通にあるものとして特別視してほしくない」ものなんだろうと思うんですよ。

文字通り空気のように“当たり前”として受け止めるべき問題で、いちいち「うわ酸素あるじゃんウメェ」とか言わないだろよ、みたいな。

そういう観点からするとこの話は今までの“構え”のあったLGBT話よりももっと自然で、大きく訴えかけるようなことはしてこない、そのバランス感覚がすごく良かったんですよね。

当然のように親友は親友でそこから恋愛に変化するようなことはないし、色物的に扱わずに「普通」を通しているのが逆に印象的で、それ故この映画を観た人たちは今後同じく「普通」になっていくだろうと思うんですよ。

単純に面白くて最高に笑えるし感動もする青春映画の中に「普通」のLGBTを織り込んだ、その功績ってすごく大きいんじゃないかと。

別にそんなのどうでもいい、面白ければいいという人にとっても面白い映画だろうし、そこが核ではないんだけど描くことに価値がある、という作りの上手さはすごいなと本当に感心しました。

僕はヘテロセクシュアルだしLGBT当事者ではないので、ぶっちゃけ彼女(主人公の一人であるエイミー)も普通に男の子が好きでその彼を追いかける映画だったとしてもどっちでも特に気にせず面白かったと思うんですよね。

でもその「どっちでもいい」ぐらいに自然、っていうのがすごいんですよ。どっちでも成立するであろうぐらいに他の部分での面白さが負けない強さを持っているのが。

またそういう主人公を配しているからか、学校では男女別のないトイレ(カリフォルニアの進学校では割と普通だとか)が出てきたりして、ここも結構驚きだしそれを自然に見せてくれる辺りもすごく良いなって思うんですよね。単純に勉強になるし、「進んでいる世界」がどういうものかを端的に知ることができるから、きっと自分がLGBTの当事者に関わったときにもう一段「普通」に振る舞えるようになるような。

そういう諸々の観点から「男女関係の描写がもう一段上のステージに来た」と思ったんですが、それでいて超笑えて面白いんですよ。

その笑いは当然ジェンダー絡みの差別的なものではないわけで、いまだ古臭いデリカシーのない話題で笑いを取る日本の芸人の遅れっぷりをありありと感じたりして。

そういう表面上から受け取るもの以上の様々な価値観を感じ取りつつ、「めっちゃ楽しめる青春コメディ」ってとんでもないですよ。この映画。すごすぎる。

とにかく一度観てみて欲しいですね。多分深く考えなくても面白いし、深く観ていくとさらに面白いです。

結構な人数の主要メンバー全員を好きになっちゃう“活かし方”も上手すぎて本当にとんでもない化け物映画だと思います。すぐにもう一回観たいぐらい。

勝手に選出・AOY(Actor or Actress Of the Year)

ということで、最後にこれも恒例のAOY。

去年はこの人! と決定的な人がなかなか思いつかなかったんですが、今後への期待も込めてこの方にしたいと思います。

マイルズ・テラー

去年観た中ではこの2本に出ていました。彼の出演作で一番有名なのは「セッション」でしょうね。

その「セッション」にしてもそうですが、もう単純にこの人は演技が強烈というか、いわゆる憑依型的な雰囲気をプンプン感じてどの映画でも爪痕を残しそうな印象。

上記2作品でも文句なしに素晴らしかったです。

イケメンというよりどちらかと言うと抜け顔系なだけに、人気よりも実力で認められている感じがするのもポイントで、今後ますます活躍が楽しみであることは間違いありません。

割と暗かったり重かったりする役が多いので、個人的にはコメディ系でどうなのかが気になるところです。

マイルズ・テラー
お前誰やねん的なまったく似ていないイラスト

以上、今年のなんプロアワードでした。途中中断しつつ8時間かかりました。笑う。

今年も目標は100本ですが、去年以上に素晴らしい映画に出会えることをお祈りしつつ、また更新頑張っていきたいと思います。

まずは映画産業のためにも新型コロナが落ち着いてくれれば、ですね…。

なんプロアワード2020” に対して2件のコメントがあります。

  1. そる より:

    あけましておめでとうございます。
    またまたお久しぶりです。
    年始に現れてはコメントを残しちゃう感じですね。

    実はちょこちょこ映画を見た後に「なんプロではなんて書いてあるかな?」と思って訪れて検索してします。
    知らない情報があったり、自分とは違う見方をされていたり、とても勉強になります。
    同じようにブログを楽しみにしている人、多いと思うんです。

    今回の保存媒体の話も興味深かったです。
    一生懸命ビデオ録画していた時も、LD購入していた時も、使わなくなる日がこんなに早く来るとは思いませんでしたもんね。
    ちなみに今もLDたくさん持ってます。プレイヤーないのに(笑)

    先日、娘と「ミトン」のDVDを買いまして。
    完全に「チェブラーシカ」好きの母チョイスです、ええ(笑)
    お正月から癒されましたー。
    犬好きさんにはぜひ見ていただきたい作品です。
    短いですし、YouTubeでも見られちゃいますのでよろしければ。

    1. しゅういち より:

      ウワーッ!
      そるさんあけましておめでとうございます!
      ある意味師匠にちょこちょこ来てもらえてるだけで感涙ですよ感涙(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
      年一でもお互い生存確認が確認できるだけでも大変ありがたいです。本当に。
      ありがとうございます。

      そう仰っていただけると続けてる甲斐がありますよ(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
      なにせリアクションのないブログなのでなかなか意欲が湧きづらい面があるんですが、
      そるさんのコメントで救済されました。(合掌)
      まあリアクションがない=平和でもあるし、面倒事が無いだけ気楽なんですけどね。

      LDうちにもありましたよ!デカいのが!ww
      後半裏返したりしてね…懐かしい😂
      あれも画質はSDだから今観るとなかなか厳しそうですね…。

      「ミトン」は初めて聞きました!
      ついでに「チェブラーシカ」も初めて聞きました。不勉強が過ぎます。
      犬好きっぷりには自信があるだけに…そう言われると観たい!
      今度観てみます!ありがとうございます(ง ˙⍢˙)

      またぜひ来てくださいね!

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